表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/93

初仕事16


「――仕方ないか」


 僕はとっさに動いていた。

 左腰に両手を構える。

 まるで、刀を持っているように。


「待って!」


 しかし、夏希に止められた。


「これは、私ひとりで解決する事件だから」


 強い決意を感じる言葉。


「姉さんなら、一人で倒せる。私だって、姉さんみたいに強くならないといけないの。早く一人前って認めてもらわないといけないんだから……」


 自分に言い聞かせるように、言葉を重ねる。


「こんな所で、立ち止まっていられない!」


「……」


 なるほど。

 彼女が一人でやると言い続けていた理由が、なんとなく見えてきた気がした。


 細かい事情まではわからないし、そこまで踏み込む気もない。


 それでも、単に僕のことが嫌いだからとか、意地を張ってるだけとか、そういう理由ではないことは理解できた。


 夏希の瞳からは強い覚悟が感じられる。


 できることなら、彼女の意気込みを買ってあげたい。


「――」


 けれどもしかし、気持ちだけでどうにかなるものではなかった。


「しまっ……!?」


 夏希の対応が遅れる。

 一本の腕が彼女に迫り、みぞおちに重い一撃が放たれる。


「……ッ!」


 モロに攻撃を喰らい、彼女は数メートル後ろにふっ飛ばされた。


「夏希! 大丈夫か!?」


 吹き飛ばされて地面に倒れた夏希に目を向ける。


「つぅ……なんとか」


 普通に返事があった。

 ぱっと見た限り、大きなケガもしていないようだ。


 ただし、今の衝撃で残っていた服が、さらにボロボロになっていた。


 しかも倒れてしまったことで、体を隠していた腕も無防備に開かれている。


 つまりまぁ、心配してそっちを見た僕の目に、色々なものが飛び込んでくるわけで……。


 まずい、と思っていたら夏希と目が合った。


 彼女は自分の状態を確認すると、とっさに両手で大事な部分を覆う。


「っ! だ、だから見るなぁ!」


「ごめん! わざとじゃないんだって!」


 慌てて視線をそらす。


 それから、僕は集中するためにひとつ大きく呼吸して、付け足した。


「あと、もう一個ごめん」


 謝罪しながら、僕は夏希と悪霊の間に進み出る


「あなた……何して?」


 夏希が怪訝そうな声を上げている。


 けれどその疑問には答えず、僕は改めて左腰に両手を構えた。


 この動きに、夏希が声を荒げる。


「待ちなさい! 私ひとりでやるって言ってるでしょ!」


「うん」


「あなたも納得したはず」


「そうだね」


 手を出さない、と確かに約束した。


「破ったら、百回ぶん殴るって言った」


「あれ、本気だったんだ……」


 苦笑いがもれる。


 半分冗談だと思っていたのだが、どうやら夏希の中では決定事項のようだ。


 約束を破ったら、夏希のパンチ百発。


「……」


 それは普通に生き残れる気がしない。


 一発一発がとてつもない威力を持っているのだから。


 僕も命は惜しい。

 なるべくなら、約束を破りたくはない。


 でも――


「それでも、女の子が困っているのに助けないなんて、僕の存在意義に関わるんだよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ