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初仕事10


「あれで、デートと言われても……」


 率直な感想を口にする。


 夏希も自覚はあったのか、苦い顔で視線をそらした。

 けれども、すぐに気を取り直すと、鋭い視線を投げてくる。


「デートなんてしたことないんだから、仕方ないでしょ!」


「え、一度も……?」


「悪い? 物心ついた頃から修行づめの毎日だったから、遊んでるヒマもなかったし」


 そんな幼い時から修行していたという事実に驚く。

 なかなか珍しい環境で育ったようだ。


 しかし同時に、夏希の強さにも納得できた。


 拳を振り抜くだけでケガレを退治できるとか、現代では規格外の実力だ。


 それほどの力を身につけようと思ったら、一般的な生活は望めないだろう。


 友だちと遊ぶのはもちろん、恋愛やデートをする余裕なんてあるはずもない。


「だとしても、デートっぽくないことくらいは気づいてほしかった……」


「偉そうに言わないでくれる? どうせあなただって、デートしたことないクセに」


 痛いところを突いてきた。


「そりゃ、僕だって――」


 経験はないけど、と返事をしようとして、ふと口を閉ざす。


 先日の遊園地のことを思い出したから。

 かえでと二人で遊園地に行って、秋穂さんはそれを「デート」と言ってきた。


 結局あれは、デートだったのだろうか?


 だとしたら、僕は経験があることになる。


 とはいえ、あれも内容がグダグダだったから、誇れるようなものではなかったけれど。


「……」


 などと悩んでいたら、夏希の顔に驚きが浮かんだ。


「まさか、あるの!?」


 僕の無言を、そういう意味で捉えたらしい。


「いや、その……あると言えばあるような、ないような……」


 断言できないので濁した言い方になったが、それだけでも夏希には効果が絶大だったようだ。


 信じられない、といった様子で頭を抱える。


「こんな奴に負けるなんて……」


 こんな、とか言わないでほしい。

 僕のことをなんだと思っているんだ。


 文句を言ってやりたい気持ちもあったが、夏希があまりにも落ち込んでいるので止めておいた。


「だって、仕方ないでしょ! 本当に毎日毎日、修行ばっかりだったんだから! 小学生のころから悪霊退治もしてたし!」


 言い訳するように言ってから、彼女ははっとしたように言葉を重ねた。


「いや、そもそも負けてないから! 別に、デートとか興味ないし! 変な勘違いしないでっ!」


 イラ立った様子で睨まれた。

 僕は何も言ってないのに……。


「私が恋愛とか、デートとかに興味を持つはずないでしょ! かえでみたいに可愛くないし、すぐに手が出るし……全然女っぽくないし……。それに、私には姉さんみたいに強くなるって目標があるんだから、恋愛とか無縁でいいから!」


 夏希はなぜだか早口でまくし立ててくる。


 放っておけば、このまま延々言い訳を続けそうな勢いだ。


「わ、わかった! わかったから、とりあえず落ち着いて!」


「――っ!」


 とっさになだめると、夏希も正気に戻ったようで、深く大きく呼吸をする。


「……ごめん、取り乱した」


 夏希は、ばつが悪そうな様子で、咳ばらいをひとつ。


「私がデートしたことがあるかどうかは、どうでもいい。ひとまず話を戻すとして」


 強引に方向修正をしてきた。

 まぁ、気持ちはわからないでもない。


 僕としても、話を本題に戻してくれるのであれば異論はない。このまま夏希のイラ立ちが蓄積していったら、身の危険を感じるし。


 だから、黙って続きを促す。


 夏希は気を取り直すように短く息をついてから、口を開いた。


「悪霊をおびき出すためには、とにかくもっとデートっぽくすればいいってことでしょ?」


「まぁ、たぶん」


 確証はないが、試してみる価値はあるだろう。


「デートっぽく……って、どうすればいいわけ?」


「え? それを僕に聞くの?」


「だって、経験あるんでしょ? だったら、アドバイスくらいしてよ」


「……えぇ」


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