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初仕事6


「……」


 ん? ちょっと待ってくれ。

 退治しないといけない悪霊は、デート中の女性を狙う。

 そして夏希がオトリになる。


 つまり彼女はデートをしないといけない。


 そして、隣には僕がいる。


「…………っ!?」


 つまり、それって……?


 まさかと思って、疑問が口から飛び出しそうになった。


 けれど、そんな僕に先回りするようして、夏希が低い声を上げる。


「なんか言ったら、殺す」


 普通に殺人予告だった。


 これには僕も、即座に口を閉ざす。彼女の本気度が伝わってきたから。


 さすがにまだ命は惜しい。


「……」


 命が惜しいから無言を貫く僕。

 そして夏希も、なんとも言えない表情で黙ってしまった。

 二人して無言のまま、歩き続ける。


 そうしてちょっと進んだだけで、上野公園の入口に到着してしまった。


 上野公園には、入ってすぐのところに大階段がある。

 それをゆっくりと登っていく。


 中腹まで来た辺りだろうか。

 前を歩いていた夏希が不意に足を止めて、こちらを振り返る。

 威嚇するような眼光が、僕を射抜いた


「なんか言いなさいよ」


「しゃべるなって言ったのは、そっちでは!?」


「……そんなの知らない。いいから、何か話して」


 理不尽にもほどがある。


 とはいえ、夏希のほうも居心地が悪いのだろう。


 何も言えなくなってしまった気持ちも、こっちに何か話してほしい気持ちもわからないでもない。


 とはいえ、何を話したらいいんだ?

 僕も突然のことに困惑している。

 情報が少なくて、わからないことも多い。


 けれども、ようやく理解できたこともある。


「だから、かえでの服を借りたのか」


 悪霊にデートをしていると思われる必要があったから。


 夏希自身がオトリとなって悪霊をおびき寄せるなら、デートと認識される状況を作っておかなくてはいけない。


「私が持ってる服だと、なんというか……そういう服がなくて」


 さっき事務所で見た彼女の服装は、ボーイッシュなものだった。


 おそらく、そういう服しか持っていないということだ。


 それがダメとは言わないが、パッと見た瞬間にデートだと思わせることが目的なら、最適ではなかったのだろう。


 それでわざわざ、かえでの服を着てきた、と。


「確かにそれっぽい服ではあるけど」


 改めて、彼女の格好を見直してみる。


 ノースリーブの白いブラウスに、桜色のスカート。

 セミロングの髪をまとめているヘアクリップには、大きめのリボンがついていて。

 なんというか、すごく女の子っぽい。


 よく見ると、うっすらと化粧もしていた。

 デートだからちょっと気合を入れておしゃれをしてきた、という感じの仕上がりだ。


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