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初仕事3


「え、僕!?」

 予想外のご指名に驚いた。


 対して、夏希のほうは怪訝そうに眉をひそめている。


「なんで、こいつなんかと?」


 問いかけながら、彼女の鋭い視線が僕を突き刺す。

 ついてくるな、とでも言いたげに。


 ひどい態度ではあるが、ここで口を挟むのは止めておこう。

 それよりも気になることがある。


 なんで秋穂さんは僕を同行させようというのか?


「だって、夏希ちゃんは確かに強くなったけど、人との連携はまだまだでしょ~?」


「……う」


 的確な指摘だったのか、夏希は反論できない様子だ。


「そろそろ誰かと一緒に戦うことも覚えないとダメよ~」


 秋穂さんはいつもの笑顔のままだったが、その声はとても真剣なものだった。


 思いつきや勢いで言っているわけではないということが、僕にも伝わってくる。


 そんな意図を直接投げかけられた夏希は、しばらく悩んでから、


「でも……」


 何か言おうとしたものの、それを秋穂さんが遮る。


「これも修行よ」


「――」


 その言葉だけで、夏希が口を閉ざした。

 何かを耐えるように唇を噛んで、僕に視線を投げる。


 だが、すぐに秋穂さんに向き直って、仕方なさそうに頷いた。


「わかった、こいつと一緒に行ってくる」


「よかったわ~。じゃあヤツカちゃん、よろしくね~」


 ここまで、僕の意思がずっと無視されているのは気のせいだろうか?


 けれどもしかし、


「ちょっとイレギュラーだけど、ヤツカちゃんにとっては初仕事になるわね~」


 満面の笑みでそんなことを言われたら、断れるはずもなかった。



 そうして僕は、上野駅の前にある広場のような場所に来ていた。

 広小路口という名前らしい駅の入り口があって、そこをまっすぐ進めばJRの改札が見えてくる位置だ。


 ここで、ひとり夏希の到着を待っている。


 彼女は準備が必要ということだったので、現地集合することになっていた。


 僕としては、その準備というのが終わるまで事務所で待っていてもよかったのだが……。


 どういうわけなのか夏希は「いいから先に行って」と、すごい勢いでにらんできたのだ。


 結果、僕は言われるがまま駅に来ていた。


「でも、もうちょっと言い方ってものがあるよなぁ……」


 なぜ、ああも当たりが強いのか?


 単純に僕のことが嫌いというのもあるんだろうけど、それにしても言葉の端々がトゲトゲしい。


 攻撃的で、張り詰めた糸のような印象を受ける。


 もう少し年相応の女の子らしく振舞ってもいいと思う。


「…………」


 とはいえ、それを本人に言ったら、また睨まれるか最悪の場合は殴られるだろう。


 初見で一発もらってから、何度殴られことか。

 できればあの強烈なパンチは、もう受けたくない。


 夏希がもうちょっとお淑やかな女性だったら、毎日こんなに怯えなくていいのだが……。


「――」


 いや、別に怯えてないけれど!


 驚異的な攻撃力を持っていても、相手は人間の女の子だ。


 僕はこれでも一応神様なのだから、そんなことで恐怖するはずがない。

 ……いや、ほんとに。嘘ではない。


「……って、誰に言い訳してるんだ?」


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