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2人で見た景色10


 とりあえずまずは誤解を解かなくては。


「いや、食べたりしないから」


「……ほんとに? わたしのこと、食べない……?」


「あぁ、食べないよ」


「そうやって油断させておいて、頭からがぶりってしない?」


「しないよ! なんで、初対面からそんな信用ないの!?」


 僕って、そんなに凶暴に見えるのだろうか? だとしたらショックだ……。


 地味に落ち込んでいると、猫又の女の子のほうも恐怖に身を震わせていた。


「だって……だって、こんなに力が強い人だから……わたしたちのこと退治に来たんだって、みんなが言ってて……」


「みんな?」


 その言葉も気になったが、まずは誤解を解くことだ。


「僕はただ遊びに来ただけの神様だよ。確かに力は強いけど、君に危害を加える気はない」


「ほ、ほんと……?」


「本当だよ」


 口で言うだけでは説得力がないので、彼女の首根っこをつかんだままだった手を放す。


「わわっ!」


 解放された女の子は、逃げるように僕から離れていく。


 そしてゲーム機の影に隠れて、こちらの様子をうかがってくる。


「ほんとに悪い神様じゃないの……?」


 まだ警戒を緩めない猫又に返事をしたのは、僕ではなかった。


「ヤツカさんは良い神様ですよ」


 かえでが、優しく話しかける。女の子に視線を合わせるように、しゃがみ込んで。


 危険がないと判断して、こちらにやってきていたようだ。


 そんな彼女に、猫又の少女は――


「わ、わっ! 人間のお客様……! い、いらっしゃいませー」


 姿勢を正して、深々と頭を下げた。


「……え?」

「ん?」


 これには、かえでも僕も首を傾げた。


「いらっしゃいませ……って?」


 僕のこの問いかけに、女の子はさっきまでの怯えた様子も忘れて、誇らしげに胸を張った。


「だってわたし、ここの職員だから……!」


「職員?」


 こんな小さい女の子が?

 しかもこの子は人間でもない。

 そんな子が、ここで働いている?


 想定外の情報に混乱している間にも、彼女は説明を続ける。


「あのね、あのね……本当はお化け屋敷の担当なんだよ。でもね、今日はすんごく力が強い人が来たから、みんな隠れろーって言われたの」


「……えっと」


 その「力が強い人」というのが、僕のことだろう。


「だけどね、ほんとに危ない人かどうか誰かが見てこないといけなくてね……わたしね、あんまりじゃんけん強くないんだ」


「なるほど」


 じゃんけんに負けて、彼女がここにいるということは理解できた。


 だが、大事なのはそこではない。

 もっと気になる情報があった。


「いま、お化け屋敷の担当って言った?」


 僕の疑問に、猫又はおずおずと頷く。


「う、うん……やっぱりお化け屋敷は本物の私たちがやったほうがいいだろうって……」


 さきほどからの発言から、もしかしてと思っていたが……。


「ここって、君みたいな人以外のモノも働いてるの?」


 どうかお願いだから否定してくれ。


 そんな思いで問いかけたのだが、女の子はゆっくりと頷きを返した。


「うん、いっぱい働いてるよ。でも、今日はあなたが来たから、みんな隠れてるかも」


「やっぱり」


 彼女の言うことが真実なら、いろいろとわかってくることがある。


 ここ浅草花やしきには、人以外のモノも従業員として働いている。


 その従業員たちは、僕の力を恐れて隠れてしまっている、と。


 そして、僕とかえでは、さっきからアトラクションにひとつも乗れていない。僕たちが到着する直前に、従業員がいなくなってしまうから。


 さっきまでは原因がわからなくて困惑していたが、わかってしまえば単純なことだった。


「つまり、僕が原因か……」


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