2人で見た景色9
意気込んでプリクラに入った僕たちだが……。
「ヤツカさん大変です! 次はどこのボタンを押したらいいんですか!?」
「落ち着いて。なんか音声で説明してくれてるっぽいから!」
「き、聞き逃してしまいました! これでは、初プリクラが撮れません!?」
「かえで、大丈夫……だと思う! まだ時間はあるから、ゆっくり」
二人とも始めてのプリクラで勝手がわからず、わちゃわちゃしてしまった。
四苦八苦しながら、なんとか操作を進めていき、かなりの時間をかけて撮影を終えた。
「やりました! ちゃんと印刷されてますよ!」
完成したプリントシールを取り出すと、かえでは飛び跳ねそうな勢いで喜んでいた。
「帰ったら半分こにしましょう! 人生初のプリクラ、大事にしますね!」
「喜んでもらえてよかったよ」
「はい! 一生ものの宝になります!」
「さすがにそれは大げさだと思う……」
口にしてすぐに気付いた。
おそらく大げさではないのだ、と。
体質のせいで、まともに遊んだこともない彼女だ。
高校生になっても遊園地どころか、ゲームセンターにも入ったことがない。
そんな生活を送っていたのであれば、こんな小さなことでも一大事なのだろう。
今日はせっかくの機会だ。
遊園地のことは残念だったが、なるべく彼女には楽しんでもらいたい。
「よし、かえで! 他にはどんなゲームを――」
次に行こうと促そうとした時だった。
ふと、不穏な気配を感じ取る。
「――!?」
気配がしたほうに視線を向けると、小さな影が見えた。
ゲーム機に隠れるようにして、何かがこちらの様子をうかがっている。
「出たか……?」
人が多い場所や賑やかな場所には、悪いモノが集まりやすい。
だからこそ、かえではこれまで遊園地に来ることができなかった。
依り代として最適な肉体を持っている彼女が、襲われる可能性は充分にある。結果、悪霊に体を乗っ取られたら、取り返しのつかない事態になるだろう。
けれども今回は問題ない。
そうならないように僕が同行しているのだから。
「かえで、そこから動かないように」
僕の言葉から真剣な気配を感じ取ったのか、かえでが身を固くした。
「は、はい……! ここで、じっとしてます!」
かえでを安全圏に置いて、僕は即座に動いた。
一歩で距離を詰める。
こんなところで武器を出すわけにはいかないので、ひとまずは素手のままで挑んだ。
素早く腕を伸ばし、物陰に隠れる何者かを捕まえにかかる。
「ひゃんっ!」
確かな手ごたえとともに、予想外の可愛らしい声が上がった。
自分の手が捕らえたモノを確認して、僕は面食らってしまう。
「……女の子?」
そこにいたのは十歳くらいの女の子だった。
無地のTシャツにオーバーオールと、ちょっと男の子っぽい格好をしているが、その可愛らしい顔立ちとセミロングの黒髪から女の子であることがわかる。
その女の子は、首根っこを僕につかまれて、怯えるように震えていた。
「いや、でも人間ではないよな?」
少し観察して、すぐに気付いた。彼女の頭には、猫のような三角形の耳がついている。
ピコピコと動くそれは、飾りとは思えない。
さらにお尻のほうにも人間ではない証があった。
尻尾だ。
しかも二本もある。
オーバーオールの隙間から飛び出している二本の黒い尻尾がバタバタと動く。
その動きは、やはり作り物には思えない。
「えっと、君は……猫又かな?」
二本の尻尾があることから予測していると、女の子が涙目でこちらを見上げてくる。
「た、食べないで……」
「なんでそうなった!?」
「ひゃっ! ど、怒鳴った……怖い人だ。やっぱり食べられちゃう……」
「……」
とっさのことに大きな声を出してしまったが、失敗だったらしい。
余計に怯えさせてしまった。




