2人で見た景色7
「とりあえず、どれかアトラクションに行こう! かえで、行きたいところとかある?」
「え……あ、はい! えっと、そうですね……?」
しばし悩んでいたかえでは、思い出したように手を鳴らした。
「そうです、気になっているところがあるんでした!」
「じゃあ、とりあえずそこに行こうか」
「いいんですか? ヤツカさんにも行きたいところがあるのでは?」
「今日はかえでのために来たからね。かえでの行きたいところが、僕の行きたいところだよ」
「ふふ、ヤツカさんは優しいですね」
嬉しそうに微笑んでから、彼女は意気込むように拳を突き上げた。
「では、さっそく向かいましょう! ずっと前から行ってみたかった場所なので楽しみです!」
かえでをこんなにワクワクさせるアトラクションとはなんだろう?
遊園地の定番ジェットコースターとか、観覧車か。あるいは女の子らしくメリーゴーランドあたりだろうか?
そんな予想をしながら、かえでの案内でたどり着いたのは……。
「お化け屋敷?」
「はい! 一度でいいから入ってみたかったんです!」
「……」
なんとリアクションしたらいいか、わからない。
とりあえず意外だった。
かえでは幽霊とか神様の存在を知っているし、見えている人だ。こんな作り物で楽しめるとは思えないが。
「なんで、お化け屋敷?」
だから率直に理由を聞いてみた。
「普通の人にとって、幽霊ってどういうイメージなのか体験してみたかったんです!」
「えっと……」
つまり、どういうことだろう?
「私、物心ついたときから、いろいろなモノが見えていたので……幽霊が怖い、っていう感覚がわからないんですよ」
まぁ、ずっと見えていたのなら怖くないのも当然だろう。
「でも、普通の人は幽霊を見たらビックリするんですよね? その『普通』という感覚を味わってみたかったんです!」
「…………」
けっこう重い話のような気がするが、それを話しているかえでは明るく、笑顔だ。
悲観して言っているのではなく、ただの好奇心から出ているのだろう。
「まぁ、そういうことなら、ひとまずお化け屋敷に入ろうか」
「はいっ!」
うわー、ほんと嬉しそう。
お化け屋敷って、そんなに楽しみにするものだったっけ?
かえでが喜んでくれるなら、僕としては満足だけど。
だから、僕も喜々としてお化け屋敷に挑もう。
正直、怖いのはあまり得意ではない。
けれど、ここで水を差すわけにはいかない。
かえでのためにも、僕も覚悟を決めよう。
「よしっ」
どんな仕掛けにも驚かない、そう気を引き締めてお化け屋敷へと入った。
しかし――
「……なにもなかったですね」
お化け屋敷の出口を抜けて、かえでが最初に言った感想がこれだった。
「確かに」
僕も否定できない。
お化け屋敷では、なにも起きなかった。
仕掛けはひとつもないし、恐怖心をあおるような置き物などもなかった。
ただ、暗い部屋を歩かされただけだ。
怖いものが苦手な僕でも、欠片もビックリしなかったくらい。
「お化けに驚かされるの……楽しみにしてたんですけど……」
かえでの空気が重い。
彼女が落ち込んでいるところを見るのは珍しい。
「き、きっとタイミングが悪かったんだよ。機械トラブルとかじゃないかな?」
「なるほど! それなら仕方ないですね。お化け屋敷は次の機会にします!」
立ち直るの早いな。
でも、よかった。落ち込んだままでは遊園地を楽しめない。
「とりあえず、他もいろいろと見て回ろうか」
「そうですね。せっかく来たんですから、全制覇を目指しましょう!」
「いや、それはさすがに……」
無理がある。
そう返そうと思ったのだが……ある意味でそれは簡単に達成できそうだった。




