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2人で見た景色6


「この話題は忘れよう!」


「……はい?」


 予想はできていたが、かえでは困惑していた。

 だから、すぐに補足する。


「僕たちは友だちとして遊びに来たんだよ」


「えっと……そうなんですか?」


「そういうことにするってこと。ややこしいことを考えるのは止めよう」


 どうせ考えたって答えは出ないのだから。


「僕たちは友だち。今日は友だちと遊びに来た。オッケー?」


「は、はい! オッケーです」


 かえでは何度も強く頷いた。

 僕の意図が伝わったのかもしれない。


 難しいことは考えず、ただ遊園地を楽しもう。その方が絶対に楽だから。


 彼女も同意してくれたことだし、さっそく遊び倒そう。


「まずはどこに行く? かえでは行きたいところあるかな?」


「そうですね……友だちっぽいところがいいです!」


「……ん?」

 謎の注文だった。


「私、友だちと遊んだこともあまりないので……せっかくなら友だちっぽいことをしたいです!」


 今日は私とヤツカさんは友だちなんですよね――彼女は強調するように付け加えた。


 かえでの体質を考えるなら、友だちを作るのもなかなか大変だろう。


 となると、友だちと遊んだことも少ないはずだ。


 だとしたら、この頼みを断ることなどできるはずもない。


「わかった! 僕が友だちっぽい遊びを――」


 と勢いよく返事をしようとしたところで、ふと言葉に詰まってしまった。


「ヤツカさん? どうかしましたか?」


「いや、なんていうか……」


 あまり言いたくはないことだが、こればっかりは隠しようもない。


「友だちっぽい遊びってなに!?」


「えぇ!? 私に聞かれても……。ヤツカさん、経験は?」


「申し訳ないけど、僕も友だちと遊んだことがない」


 というか、そもそも友だちがいない。


「そ、そうだったんですか……?」


「僕の地元はそこそこ田舎だったから、神社の数も少なくて」


 隣の神社まで車で一時間とかだったから、神友なんて一人もいなかった。


 基本的に僕は、自分のお社から出なかったし。


 地元の人たちは僕を崇めるばかりで、対等に接してくれることはなかったし。


 だから僕も友だちと遊ぶという経験は、これまで生きてきて一度もない。


「ごめん……全然、役に立てなくて」


「わわっ!? ヤツカさん落ち込まないでくださいぃ!」


 昔のことを思い出して自然と暗くなっていると、かえでが慌てて僕の手をにぎってきた。


「大丈夫です! 誰にでも、初めてはあります。初めて同士、一緒に楽しみましょう!」


「そっか……まぁ、そうだよね」


 参考になることを何も言えなかったのは、本当に申し訳ない。


 とはいえ、いつまでも落ち込んではいられない。


 せっかく遊園地に来たのだから、その中でできる限り楽しむべきだ。

 でないと、かえでも楽しくないだろう。

 今日は、彼女のために遊園地に来たのだから。


「よしっ! とりあえず、今日は友だちが少ない者同士、初めてを楽しもう!」


「はい!」


 謎の結束が心を結び、僕らはにぎったままの手を高々と振り上げていた。


 なんだかよくわからないけど、一周回って元気になった感覚だ。


 空回るようにテンションを上げていると、少し離れたところにいる老夫婦が微笑ましそうにこちらを見ていることに気づいた。


「仲のいいカップルねー」

「わしらの若いころを思い出すなぁ」

 老夫婦の視線は、僕とかえでの手にそそがれていた。


 高々と振り上げたままの両手は、固くにぎられている。まるで恋人のように。


「ごめん! にぎったままだった!」


 慌てて手を放す。


「私のほうこそごめんなさい! つい勢いで……」


 かえでは申し訳なさそうにうつむく。その頬はわずかに赤みが増していた。


「――」


 って、これでは同じことの繰り返しだ!

 周りの目は気にするな。


 とにかく僕たちのペースを作って、勢いで楽しんでしまうしかない。


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