2人で見た景色5
「とはいえ、なんというか……僕も服のセンスはないから、あんまり当てにならないだろうけど」
「いえいえ、そんなことないです! ヤツカさんが大丈夫というのなら、安心できます!」
「そっか。なら、いいんだけど」
「はい……」
「……」
なんだろう、二人の間に微妙な空気に流れる。
嫌ではないけれど、なんとなくくすぐったいような空気が。
これが一体なんなのかわからないし、そもそもどうしてこんな空気になったのかも理解できない。
とりあえず、目の前には頬を染めたかえでがいて。
僕もなんとなく顔が熱くなっていて……。
この状態が続くのはまずい、と感じた。
「とにかく入ろうか?」
遊園地のチケットを取り出しながら提案する。
「そ、そうですね!」
かえでもこの空気に耐えられなかったのか、飛びつくような勢いで同意した。
そうして二人でチケット売り場へ向かう。
まずは秋穂さんからもらった優待券を、入場券に変えないと。
窓口にいたお姉さんに優待券を渡して、二人分のチケットをもらう。
「いってらっしゃいませ」
窓口の女性はマニュアル通りの言葉で見送りつつ、
「デート、楽しんできてくださいね~」
最後にそう付け足してきた。
「えっと」
これには僕もかえでもまともに返事ができず……。
結局、微妙な愛想笑いだけを返してチケット売り場を後にする。
そのまま園内に入り、開けた空間に出た。
ふと、そこでかえでが足を止める。
「……デート」
ぼつりとしたつぶやきに、心臓が小さく跳ねる。
「あの、ヤツカさん。これって、やっぱりデートなんでしょうか?」
「それは……」
また、返事に困る質問を……。
肯定しても否定してもダメな気がする。
だから、僕は――
「かえではどう思う?」
答えを丸投げした。
男らしくないと思われるかもしれないが、関係ない。
僕にはここで断言するような度胸なんてないのだから。
「私がどう思うか……ですか?」
かえでは真剣な様子で両手を組んで、考え込む。
しばらくうんうん唸ってから、脱力するように肩を落とした。
「私、デートって、したことないので……いまいちわからないですね」
それは僕も同じだ。
かえでも僕も、よくわからない。
秋穂さんと受付の女性は、どちらもデートと言った。
つまり票数の上では……。
「――」
いいや、その考えはよくない。なんでもかんでも多数決で決めるなんて、良くない文化だ。
しかしこのまま答えが出せないまま、もやもやするのも辛いものがある。
僕はさっきから困惑しっぱなしだし、かえでも戸惑っている。
これは良くない流れだ。
こんな空気のままでは、せっかくの遊園地を楽しめそうにない。かえでにとっては初めての遊園地なのに。
だから、僕は覚悟を決めるように声を張り上げる。
「かえで!」
「は、はいっ!?」
いきなりの大声に驚いた様子で、彼女は言葉の続きを待っている。
それに対して、僕は勢いに任せて宣言した。
「この話題は忘れよう!」




