2人で見た景色2
さすがに疑問を口に出さずにはいられなかった。
「寄り道くらいなら、普通にすればいいんじゃないかな?」
これが良くなかった。
自分が言ってはいけないことを口にしたのだと、すぐに理解する。
だった、かえでがすごく申し訳なさそうな顔をしていたから。
「えっと……それは、できないんです」
さっきまで嬉しそうに笑っていたのに、彼女はいたずらが見つかった子どものようにうつむいてしまった。
「今日の寄り道も、本当は断ったほうがよくて……」
「そうね~。かえでちゃん、気をつけないとダメよ」
秋穂さんはいつもの笑顔に、少しだけ真剣な雰囲気をまとっていた。
「ごめんなさい……」
子どもを叱るような態度の秋穂さんと、謝罪するかえで。
しかし、僕にはまったく話が見えてこない。
「寄り道できないって、どういうこと?」
「私の体質の問題なんです」
かえでの体質というと、超依り代体質のことだろう。
彼女の体に憑りつけば、低級霊でも神霊クラスの力を得られる。それくらい依り代として適した体を持っている。
「でも、それと寄り道にどういう関係が?」
余計に疑問を深める僕に、秋穂さんが補足してくれた。
「学校が終わってから寄り道していると、日が暮れちゃうかもしれないでしょ? 楓ちゃんの場合、暗くなる前に帰らないと危険なのよ~」
「夜が危ないってことですか?」
「ううん、そうじゃなくて~、夕方が危ないのよ~」
「あぁ、なるほど」
なんとなく言いたいことがわかってきた。
夕方といえば――
「夕暮れ、黄昏時、逢魔が時――いろいろな言い方があるけど~、その時間はあの世とこの世の境目があいまいになるって言われてるわね~」
「かえでの体質に引き寄せられて、悪いモノが出てきてもおかしくないですね」
「それもあるけど、単純に夕方から明け方までは霊がざわつくから、かえでちゃんは事務所にいたほうが安全なのよ~」
寄り道自体がダメなのではなく、帰りが遅くなるのがよくないわけか。
「でも、それならちょっとの寄り道くらいはいいのでは?」
と短絡的に考えてしまった僕だが、かえでがすぐに首を横に振った。
「にぎやかなところとか、人が多いところも悪い霊を引き寄せやすいので、あまりお店にも入れないんですよ」
「コンビニでも?」
「はい、コンビニでもです!」
かえでの体質のことは大変だと思っていたが、大変どころではなさそうだ。
外出できる時間が限られるし、コンビニとかのお店に入ることもできない。
「……かえで、休日とか何してるの?」
「ずっと、自分の部屋か事務所にいますよ」
あたり前のように答える。
まったく悲しむ様子もなく。
「えっと……遊んだりは?」
「夏希さんやミヤビさんと、よくゲームをします! 私、トランプとかボードゲーム、すっごい得意なんですよ! ヤツカさんも今度一緒にやりますか?」
笑顔で語るかえでは誇らしげだ。
「ボードゲームもいいけど……外で遊びたい、とか思わないの?」
「え……?」
彼女は、予想外の質問に戸惑うように一瞬だけ固まった。
「外ですか? う~ん……?」
それからしばらく考え込み、言葉を探すようにゆっくりと口を開く。
「外で遊ぶことにあこがれる気持ちはありますけど……夏希さんたちとゲームするだけでも楽しいですし……」
最終的に彼女は、困ったように笑む。
「それに、遊びに行きたいと思っても、どうせ行けないので……仕方ないですよ」
その言葉には諦めの気配が混じっていた。
かえでの本心が見えた気がした。
だから、なんとかできるなら力になりたい。
とはいえ、僕に何ができるわけでもなくて……。
嫌な無力感を抱いていると、ふと秋穂さんが声を上げた。
「じゃあ、行ってきたらいいんじゃないかしら~?」




