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かえでからの相談14


「成仏したんだよ」


 慌てる葉菜に、僕は静かに告げる。


「君に恩返しするために現世に留まってたんだろうね」


「それだけの理由で?」


「あの子の中では、それくらい大事なことだったんだよ。君に助けられたことが」


 葉菜は、嬉しいような困ったような微妙な表情を浮かべていた。


「なんか変な感じ。私はまったく覚えてないのに……」


 記憶にないことで感謝される。

 確かに、それは違和感があるかもしれない。

 けれど、


「そんなもんだよ」


 僕は助ける側になることが多いから知っている。


「助けた人よりも、助けられた人のほうが、強く印象に残すものなんだよね」


「そっか……」


 僕の言葉を咀嚼するように、葉菜は少しの間うつむいて、それから大きく頷いた。


「うん、そうかも」


 笑顔を返してくれる葉菜。


 彼女はケガひとつなく無事で、動物霊も成仏した。

 万事解決と見ていいだろう。



 翌朝。


「ぐ、おぉぉぉ……!」


 案の定、全身痛に襲われていた。


 無理に全力を出したせいで、体がボロボロになっている。


 そんな状態にも関わらず、僕はほうきとチリトリを手に事務所の階段を下りていた。


「っっっ!!」

 一段下りるごとに、とんでもない激痛が走る。


 かなりの時間をかけて、ようやく一階まで下りると、後ろから声をかけられた。


「ヤツカさん、大丈夫ですか?」


 振り返ると、制服姿のかえでが階段を下りてくるところだった。


「まぁ、なんとか……昨日の反動がなかなか抜けなくて」


「休んでおいたほうがいいのでは?」


 心配そうに見つめる彼女の目が、僕の両手に向いて、


「えっと、ほうきとチリトリ? お掃除ですか?」


「うん、まぁなんというか……勝手に依頼を受けた罰として、秋穂さんに表の掃除を頼まれて……」


 考えが足りていなかった。


 雇われの身である僕が、霊退治を勝手に引き受けていいはずもない。


「ご、ごめんなさい! 私が頼んじゃったせいで……」


「いや、かえでは悪くないよ。秋穂さんに一言相談しておかなかった僕のせいだから」


 この体の状態で罰掃除はなかなかに辛いが、そんなものはどうでもよかった。


「葉菜を助けられたから、僕は満足だよ」


「はい! 私もクラスメイトのお役に立ててよかったです!」


「……」


 そう、かえでと葉菜は同じクラスだ。


 今回の件をきっかけに仲良くなる可能性もあっただろう。しかし、


「葉菜は、昨日の記憶を消されたんだよね?」


「……はい」


 かえではゆっくりと頷いた。


「霊に関わった記憶があると、また巻き込まれる危険性があるので……秋穂さんが記憶を消す術をかけてくれました」


 霊の存在を知っている者のところには、自然と霊が集まる。


 秋穂さんの対応は当然と言えるだろう。


「……」


 とはいえ、もったいないな、とも思ってしまう。


 葉菜はもう僕のこともかえでのことも覚えていない。


「せっかく知り合えたのに……」


「仕方ないですよ」


 そう言いながらも、かえではどこか寂しそうだ。


「何が仕方ないの?」


 そこにふと、女の子の声が割り込む。聞き覚えのある声が。

 目を向けると、そこには明るい印象の女の子がいた。


 セミロングの髪をシュシュでポニーテールにまとめ、音符の形をしたヘアピンをしている。


 派手すぎず地味すぎず、いわゆる普通の一般的な女子高生。


 見間違えるはずもない。

 そこにいたのは、昨日の記憶を消されたはずの葉菜だった。


「おはよう、夜里さん、ヤツカさん」


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