かえでからの相談13
「えっと、それはその……」
彼女は僕の手に乗っている布袋に視線を向けて、それから葉菜の顔色をうかがいながら続けた。
「ざ、材料が必要だったみたいです」
「ん?」
材料とは、つまり魔除けの材料ということだろうか?
なるほど確かに、力の弱い動物霊では無から有は作り出せない。となると、魔除けを作るために材料が必要になってくる。
「ということは、つまりこの布袋は……」
言いながら、自然と自分の手に乗っているものに目が向いた。
色とりどりの鮮やかな布袋。
それぞれ色が違うのも納得だ。
なぜなら――
「いやぁああああっ!!」
葉菜の悲鳴が聞こえるのと同時に、右ほほを衝撃が襲った。
何が起きたのかは、しっかり理解できていた。
顔を真っ赤にした葉菜が、すごい勢いで迫ってきて、ビンタを放ってきたのだ。
「ぐあっ!」
そうして、僕は見事に吹っ飛んだ。
普段なら簡単にかわすことができただろう。
けれど、今の僕は満身創痍だ。全身を痛みに襲われていて、とっさの反応がどうしても遅れてしまう。
結果、葉菜のビンタをモロに喰らってしまった。
その勢いのまま倒れたことで、僕の手から布袋がこぼれ落ちる。葉菜の下着で作られた魔除けが。
葉菜はそれらを急いで集めると、誰にも渡さないという意思の表れなのか、胸に抱きかかえる。
「こ、これ、私のし……したっ、下……っ!?」
だいぶ取り乱しているようだが、まぁ気持ちはわかる。
葉菜の下着で作られたものが、ずっと僕のポケットに入っていて、ついさっきまで手の上に乗っていたのだ。
それを考えると、ビンタされたのも仕方ないと思う。
取り乱す葉菜を見て、まだ僕の手に捕らえられているウサギが、不安そうな鳴き声を上げる。
それを受けて、かえでが心配そうな顔を葉菜に向けた。
「あの……この子が、迷惑だったかなって言ってます……」
「え!? う、ううん! そんなことないよ。私のために作ってくれたんだもんね。それは嬉しいよ」
慌てて弁解した彼女だが、手元にある布袋と僕を交互に見比べる。
「そ、それはそれとして……私の下着が……」
葉菜が何を言いたいのかはわかる。
彼女の下着を元に作られた魔除けを僕は触っていたわけで……まぁつまり、彼女の下着に触っていたということだ。
「なんか、その……ごめん」
とりあえず謝っておいた。
「う、ううん。わざとじゃないんだし。……というか、私の方こそごめん。いきなり叩いちゃって」
「いや、仕方ないと思うよ」
自然と、さっきまで魔除けが乗っていた手を見つめる。
「……うぅ、私の……」
葉菜も僕の視線を追って、わずかに頬を赤らめた。
そういう表情をされるとこっちまで照れてしまう。
「…………」
なんとも言えない微妙な空気が流れる。
とりあえず話題を変えるべきだ!
いつまでも葉菜の下着の感触を思い出しているわけにはいかない。
「なんにせよ、解決してよかったよ」
「そ、そうだね! 怖いものじゃないってわかってよかった」
葉菜も早くなかったことにしたいのか、僕に話を合わせてきた。
それから、僕の手に収まるウサギに顔を寄せる。
「えっとね、わざわざ恩返しに来てくれて、ありがとう」
この言葉に、
――キュウ
ウサギは短く鳴いて、煙のように消えてしまった。
「え? あれ!? どうして……?」
「成仏したんだよ」




