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かえでからの相談12


 頭を悩ませていると、かえでがベッドから下りてこちらに近づいてきた。


「あの、ヤツカさん、そのまま耐えててくれますか?」


「ん? いいけど……どうするの?」


「ちょっとお話してみます」


「……は?」

 何を言っているのだろう。


 言葉を理解していない低級霊が相手では、向こうの言葉は理解できないしこちらの言葉を伝えることもできない。


 なのに、かえでは少しかがんで、僕の手に捕まったウサギと向かい合った。


「落ち着いてください。私たちは敵じゃありませんよ」


 優しく語りかける。しかし、意味があるとは思えない。


「かえで、そんなことしても……」


 ――キュウ

 ウサギが大人しくなった。


「なんで!?」


 意思疎通はできないはずなのに。


 混乱する僕に、彼女はちょっと誇らしそうに微笑む。


「ヤツカさんにはまだ言ってませんでしたよね。私、低級霊さんともお話できるんです!」


「へぇ……」


 言葉を理解していない低級霊が相手でも、会話を成立させられる、と?


「それも、体質のおかげ?」


「多分そうだと思います! とっても便利なんですよ」


 自慢げに語ってから、彼女は再びウサギの霊に向き直った。


「どうして葉菜さんのお洋服を盗るんですか? ちゃんと事情を話してくれれば、解放してあげますよ」


 この問いかけに、動物霊がキュウキュウと鳴き声で応じる。


「ふむふむ……なるほど、そうなんですね。うんうん……」


 かえでは何度もあいづちを打っていた。

 本当に、何を言っているのか理解できるらしい。


 しばらく会話を続けたかえでは、納得した様子でひとつ頷いた。


「わかりました! この子は悪い子じゃありません!」


 自信満々に宣言された。


 とはいえ、僕と葉菜は会話が聞こえていなかったから、結論だけ言われても困る。


「つまり、どういうこと?」


「はい、この子は葉菜さんに恩返しがしたかっただけみたいです!」


 かえでの説明に、当事者の葉菜が疑問符を浮かべる。


「恩返し……? えっと……なんのことかよくわからないんだけど」


「この子の話では、山の中でケガをしていたところを葉菜さんに助けてもらったとか」


「山の中? ますますわからないよ」


「何年も前、子どもの頃の葉菜さんに助けられたらしいです」


 このかえでの補足に、葉菜はやっと思い至るものがあったらしい。


「おじいちゃんの家が田舎だったから、山で遊んでたことはあるけど……」


 しばらく記憶を呼び起こそうと頭を悩ませていた葉菜だが、諦めるように肩を落とす。


「やっぱりウサギを助けたことは思い出せないよ」


「そうですか……葉菜さんは覚えてないみたいです」


 かえでからの通訳を受けて、ウサギの霊がちょっと悲しそうに脱力した。


 その様子に、葉菜も申し訳なさそうに手を合わせる。


「ご、ごめんね、忘れちゃって」


 軽く頭を下げて、そこでふと小首を傾げた。


「でも恩返しなら、どうして私の服を盗ったの?」


「あ、それはもう聞いてますよ! 葉菜さんのお洋服の代わりに置いてあったものがありましたよね?」


 かえでが僕に視線を向ける。


「あぁ、これだよね」


 葉菜から預かっていたものを、ポケットから出す。

 計七つの、小さな布袋。


「それは、この子が作った魔除けだそうです。葉菜さんの身を守ってくれるようにって」


「何かしらの力が込められてるとは思ったけど、魔除けだったのか」


 低級とはいえ、動物霊が作ったものならそれなりの効果があるだろう。


「危険なものじゃなかったみたいだね。むしろ、肌身離さず持っておいたほうがいいかも」


「う、うん、それはわかったけど……じゃあなんで私の下着が消えてるの?」


 そうだ。葉菜の意見は大いにわかる。


 恩返しのために魔除けを贈りたかったのはわかる。しかしそれなら葉菜の下着を盗む必要はない。


「えっと、それはその……」


 僕たちの疑問に、かえではちょっとためらいを見せていた。


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