表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/93

かえでからの相談9


「一気に行くよ」


 葉菜の部屋は四階。そこまで一度の跳躍でたどり着くために、両足に力を込める。


 その瞬間だった。

「痛っっ!」

 激痛が走り抜ける。


「そうだ、忘れてた……!」


 今日の僕は、朝から激痛に襲われているのだ。


 時間がたって、すっかり痛みが抜けていたから忘れていた。


 まだ激しい動きや、全力を出すことは難しそうだ。


 それだけ、かえでの力を使った反動が大きいということだろう。


 彼女の体に触れただけで力が跳ね上がるから、ずいぶんとリスクが少ないと思っていたが、まさかこんな大きな後払いがあるとは。


「……ん!?」


 ふと、気づく。背中から伝わってくる体温に。


 そうだ。僕は今、かえでを背負っている。

 体を密着させている。

 触れるだけで僕の力を強化してしまう少女と。


「…………?」


 けれど、体に変化はなかった。

 力がみなぎってくる感覚も、神気が増していく気配もない。


 背後の少女に視線を送る。

 だが、かえでにも特に変わった様子はない。


 昨日聞いた話では、これまで僕以外の神様が触れても力が増すことはなかったらしい。ということは、もしかして何か条件があるのか?


 疑問符が頭を満たしていくなかで、僕と目が合ったかえでが小首を傾げた。


「あの、どうかしましたか? 早く葉菜さんのところに行かないと!」


「そうだった! 急ごう」


 かえでの力についても気になるが、今はそれどころではない。


 考えたって答えが出るわけでもないし、ひとまずこの謎は保留だ。


 まずは葉菜を助けにいく。


「壁を登っていくから、落ちないようにしっかりつかまってて」


 わずかなでっぱりを頼りに、家の外壁を登っていく。


 指先しかかけられないような場所もあるが、このくらいなら問題なく登っていけるだろう。


「……っ」


 問題があるとしたら、すこし登るたびに激痛が手足を襲うことくらいだ。


 この程度の動きでも痛みが走るのか。


 葉菜の部屋までたどり着いた後、もし戦闘になったらマズイかもしれない。


 こんな状態では、充分に力を発揮できないだろう。


「それでも、やるしかないか」


「何か言いましたか?」


「いや、なんでもない」


 ちょっと覚悟を決めていただけだ。

 女の子が危険な状態で、体が痛いとか言っていられない。


 全身の痛みに耐えて、一気に外壁を登っていく。


「うわぁ、早いです! やっぱりヤツカさんはすごいですね」


 楽しそうに言ってくれるけど、実はけっこう無理をしている。全身の激痛と戦いながら登っているのだから。


 とはいえ、それを教えるのはカッコ悪いので黙っているけど。


 黙々と登り、十秒もかからず四階にたどり着いた。


 そうして葉菜の部屋の窓に手をかける。


「よかった、ちゃんと鍵が開いてる」


 窓を開き、部屋の中に飛び込む。


「――っ!?」


 真っ暗な部屋のなかは、想像とは全然違う状況になっていた。


「あ、夜里さんにヤツカさん……」


 出迎えてくれた葉菜は、ベッドの上にいた。ピンク色のパジャマ姿で、毛布にくるまっている。


 特にケガをしている様子もないし、霊に襲われてもいない。


 危機的状況でもなんでもなかった。


 けれども、葉菜は怯えた様子で、ある方向を指さす。


「その……あ、あれ……!」


 促されて目を向けると、それがいた。


 タンスの前をうろちょろする白い影。


 僕たちが来たことに気づいていないのか、子犬くらいの大きさの影は、タンスの一段目を開けようとしているみたいだった。


 下着泥棒は、この影で間違いないだろう。


 しかし、部屋が暗くて、相手の正体がはっきりと確認できない。


「とりあえず」


 即座に動く。

 まずは白い影の方ではなく、部屋の入口へ。

 スイッチを入れて、部屋の明かりをつける。


 ――■■■ッ!


 直後、影が僕に気づいて、飛びかかってきた。


 とっさのことで反応が遅れて、顔面にもろに体当たりを食らってしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ