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かえでからの相談8


 いったん葉菜の部屋を後にした僕とかえでは、時間になって再び家の前までやってきていた。


「ふぁ……眠いです」


 すでに深夜一時を過ぎた。あくびが出るのも仕方ないだろう。


「かえでは帰っててもいいんだよ」


 僕の言葉に、かえでは慌てて眠気を飛ばすように頭を振った。


「い、いえ! 葉菜さんが心配ですから!」


「気持ちはわかるけど……」


 何時までかかるかわからないのが、問題だ。

 葉菜からは、深夜としか聞いていない。


 いつ、その白い霊がやって来るかはわからない。それどころか、今日は現れない可能性だってある。


「無理そうだったら言ってくれていいから」


「いえいえ、大丈夫です! 葉菜さんのために、私にもできることを頑張りたいので」


 やる気満々に見える彼女だが……。


「ふあぁ……あ! す、すみませんっ、ほんと大丈夫ですから!」


 やはり眠気は抑えきれない様子だ。


「目が閉じかかってるけど?」


 という指摘に、彼女は照れるように頭をかいた。


「えへへ……ごめんなさい。私、普段は十一時には寝ちゃうので」


「早すぎない!? 今時の高校生が十一時って」


「へ、変ですか?」


「いや、変ってことはないけど」


 夜ふかしをしないというのは、珍しい気がする。


 いつもそんなに早く寝ているのなら、この時間はさぞ眠いだろう。


「早く来てくれるといいけど……」


 祈る気持ちで、四階の葉菜の部屋を見上げる。


「――ん!?」


 すると、ちょうどあるモノが見えた。


 白い影が空を漂い、葉菜の家に近づこうとしている。


 そして、葉菜の部屋があるあたりの壁にたどり着き、その壁をスーッと通り抜けて中へと侵入していく。


「来たっ!」


「今のが、葉菜さんの下着を盗んでる幽霊さんですか?」


「たぶんね。ひとまず葉菜の部屋に行ってくる」


 窓の鍵を開けておくように頼んでおいたから、彼女が忘れていなければあそこから入れるはずだ。


 すぐに飛び出そうとする僕を、しかしかえでが服の裾をつかんで止めた。


「待ってください! 私も連れていってください」


「いや、でも……」


 相手は悪霊かもしれない。

 そんなヤツのところに、かえでを同行させるのは避けたい。


「ここで待ってるだけなら、来た意味がありません! お願いします!」


「……」

 彼女は折れそうになかった。


 ここで問答をしていても、無駄に時間を使うだけだ。

 それより、一刻も早く葉菜を助けに行ったほうがいい。


「わかった。つかまって」


「はい! ありがとうございます!」


 輝く笑顔のかえでに、僕は背中を差し出す。

 彼女は僕の肩に腕を回し、僕の背中に負ぶさる。


「――っ!」


 駆けつける準備ができたところで気付いた。


 これはマズイ!

 かえでの体が、背中に密着している!?


 彼女の体温とか、息づかいまで伝わってくる。


 この体勢は色々とマズイ気がするのだが……。


「ヤツカさん、どうしました? 急いで葉菜さんを助けに行きましょう!」


「……」


 向こうはまったく気にしていなかった。


 葉菜を助ける使命感で燃えていて、それどころではないようだ。


 どうやら、僕は集中が足りていないらしい。


 そう、これは人助けだ。人間を助ける神様として、ここは本気を出さないといけない。


 早く葉菜を助けなければ。


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