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かえでからの相談5


「……えぇと」


 どうにか挽回するために、言い訳を考えようとした時、葉菜が諦めるように脱力した。


「でもまぁ、他に当てもないし、仕方ないよね」


 僕への疑いは晴れていないようだが、葉菜はかえでに優しい目を向けていた。


「それに夜里さんが変な人を紹介するとも思えないし」


「も、もちろんです! ヤツカさんは自信をもって紹介できる人ですよ!」


「うん、夜里さんがそう言うなら、信じてみる」


 話は丸く収まったっぽい。

 かえでの人望のおかげで。


「…………」

 正直、僕は微妙な気持ちだった。


 とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。ここから挽回すればいいのだ。


「じゃあ本題に入るけど、なにか困ってることがあるのかな?」


 そう、彼女からの相談を解決してみせれば、僕への評価も変わるだろう。


 意気込んで尋ねた僕に、彼女はすこし言いよどむ。


「その……ちょっと言いにくいんですけど……」


 そこまで言って、口を閉ざしてしまった。


 わずかに頬を染めて、うつむきがちになり、恥じらうように唇をかむ。


 しかしいつまでも黙ってはいられないと思ったのか、勢いに任せるようにして続けた。


「し、下着がなくなるの!」


「…………は?」

 僕はいったい何の相談をされているのだろう?



 その後すぐに喫茶店を後にして、葉菜の家に向かうことになった。


「とりあえず見てもらった方が早いと思うんだよね」


 という葉菜の発言を受けてのことだ。


 葉菜の家は、上野から徒歩圏内にあった。


「ここよ」


 と、案内されたのは、さきほどの喫茶店から歩いて二十分ほどの所だ。


 そこそこ大きな一軒家だった。


 四階建てで、各階に四部屋くらいはありそうな家……都内でこれほどの家に住めるなんて、かなりのお金持ちだろう。


「うらやましい……」

「え?」

「あぁ、いや! なんでもない」

 つい、心の声が漏れてしまった。


 賽銭がなくなり、社もボロボロになってしまい、今は元物置の部屋に寝泊まりさせてもらっている僕としては、こんな家に住むことは夢のまた夢だ。


 とはいえ、今は関係ない。僕の残念な状況は考えないようにしよう。


 なんとか耐えている僕を連れて、葉菜は家の中に上がっていく。そして最上階の四階へと案内された。


「ここが私の部屋だよ」


 開かれた扉の先は、僕がこれまで見たことがない空間だった。


 可愛らしい柄のカーテンに、ベッドシーツ。いくつかのぬいぐるみと、クッション。勉強机には可愛らしい小物が並び、壁には数枚の写真が飾られている。


 なんというか……

「女の子の部屋って感じだね」

 自然と感想が漏れていた。


 これに、部屋の主である葉菜が顔を赤くする。


「あ、あんまりじろじろ見ないでよ」


「ごめんっ!」


 とっさに謝って視線をそらすが、すでに部屋に入っているから、あまり意味はなかった。


「パパ以外の男の人を入れるなんて初めてだから、なんか変な感じ……」


 そわそわと落ち着かない様子の葉菜を見ていると、こっちまで赤くなってしまいそうで困る。


「ヤツカさん、どうですか? 私には変なモノは見えませんけど……」


 しかし、かえでの真面目な発言で、現実に引き戻された。


 そう、いまは葉菜からの相談に集中だ。


「えっと……」


 じろじろ見るなと注意されたばかりだが、あくまでも仕事として部屋を見回す。


 壁や天井はもちろん、葉菜が普段寝ているであろうベッドや、洋服が入っていると思われるタンスにも視線を向ける。


 だが、もちろんやましい気持ちははない。これっぽっちも。


「…………」


 自分でも一瞬自信がなくなったが、本当にやましい気持ちはない!


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