かえでからの相談4
彼女は恥じるように視線をそらして、ゆっくりと口を開いた。
「それは多分あれです。私について、とあるウワサが流れているからではないかと」
「ウワサ……?」
「葉菜さん、そうですよね?」
かえでに話を振られて、葉菜の肩がビクンと跳ねる。
彼女は言いにくそうにしながらも、僕とかえでの視線を受けて、諦めるようにため息をついた。
「夜里かえでは呪われている」
「……あぁ」
そういうことか。
「夜里さんの周りで、変なことがよく起きるってウワサしてる子がいて……」
伏し目がちに告げた葉菜は、慌てて両手を振った。
「い、一部の子たちだけだよ! 私はそんな話、信じてないし……夜里さんとは、本当にたまたま話す機会がなかっただけで……」
むしろ、と彼女は付け加えた。
「そのウワサのおかげで、こうして相談に乗ってもらえてるから、よかったかなって」
「本当ですか!? お役に立てたならうれしいです!」
かえでは悲観する様子もなく笑顔を返し、すぐにすこし申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「でも、私自身はなんの力もなくて……なので、ヤツカさんに協力してもらうことにしました!」
「そのヤツカさんは、なんの人なの? さっきの説明だといまいちわからなくて……」
まぁ、それはそうだろう。僕たちだって説明が難しい。
「えっとですね……ヤツカさんは、なんと言ったらいいか……私が下宿している霊能事務所に住み込みで働いてくれてまして……と言っても、働き始めたのは昨日からなんですけど」
しどろもどろになっているかえでの説明に、葉菜はいくつかの情報をピックアップして眉をひそめた。
「下宿先に、住み込み……? ということは、二人は同居してるってこと?」
「なっ!?」
「い、いえ……っ! 同居とか、そういうのではなくてっ! ……あれ、でも同じ家に住んでるんですから、同居になるんですか?」
いや、僕に聞かれても困る。
「とにかく! 違いますから! 私とヤツカさんは、そういう関係ではなくてですね……むしろ、なんでもありませんから!」
「……」
事実だけど、そこまではっきり言われると悲しいものがある。
「私、そこまでは言ってないけど……」
あまりに強い否定に、葉菜のほうも戸惑っているようだった。
「結局、ヤツカさんは何者なの?」
しかも伝わっていないし。
「えっと、ですから……その……」
このままかえでに無理な説明をさせ続けるのは、なんだか申し訳ない。
困っている彼女は見ていたくないし。
「僕は神様だよ」
だから正直に話すことにした。
けれど、いきなりすぎたせいか、葉菜は目を丸くしている。
「え? 何かの冗談……?」
そう思うのが普通だろう。
「いや、本当の話だよ。僕は正真正銘、本物の神様」
「ヤツカさん!? そんなはっきり言っちゃっていいんですか?」
かえでが心配そうにしているが、問題ない。
「教えること自体は悪い事じゃないよ。それで罰が下ることもないし」
「あ、いえ、そっちではなくて……頭がおかしい人とか思われちゃいますよ?」
「そっちか……」
とはいえ、そこも抜かりはない。
「まぁ、かえでの悪いウワサを聞いた後でも話しかけてくれる子だから、大丈夫かなって」
という僕の予想に反して、葉菜はめっちゃ引いていた。
「自分のことを神様って……夜里さん、この人で大丈夫なの?」
「だ、大丈夫です、大丈夫です! ヤツカさんは頼りになる人ですから!」
「ほんとかなぁ……」
真偽を探るように、疑いのまなざしが向けられる。
やっぱり正直に話すべきではなかったかもしれない……。




