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かえでからの相談3


「あの、お願いしたいことがあるんです!」


 かなり距離が近い。もう少しで肌が触れてしまいそうだ。


「え、えっと……何かあったの?」


「クラスの人から、霊のことで相談したいって言われたんです。でも、私では解決することができないので……ヤツカさんに手伝ってもらいたくて」


 あぁ、なるほど。友だちを助けたいということか。

 彼女らしいと言えば彼女らしい。


 そして、せっかく頼ってくれたのだから、断ることなんてできない。


「わかった。僕でよければ、協力するよ」


「わぁ! ありがとうございます! ヤツカさんならそう言ってくれると思ってました」


 飛び跳ねそうな勢いで喜んで、かえでは来た道に向き直った。


「さっそく来てもらってもいいですか? その人との、喫茶店で待ち合わせをしてるんです」



 そうしてかえでに連れていかれたのは、レトロな雰囲気の喫茶店だった。


 大通り沿いのビルの2階だが、喧騒は遠く静かな店内だった。


 店員に一番奥の席まで案内されると、そこには一人の少女が。


 かえでと同じ制服姿で、まったく気崩していないことから真面目な学生だということがわかる。


 セミロングの髪を小さなポニーテールにしていて、明るい印象がした。


 化粧っ気はなく、ポニーテールをまとめるシュシュと、音符の形をしたヘアピンが唯一のオシャレと言う感じだ。


 派手すぎず地味すぎず、いわゆる普通の一般的な女子高生だった。


 そんな少女が、僕たちに気づくと席から立ちあがった。


「夜里さん……その人は?」


「ん? 夜里?」

 僕の疑問の声で、かえでがすぐに答えてくれた。


「そういえば、まだ教えてませんでしたね。私の苗字です」


「へぇ、夜里かえで……か」


 やっとフルネームがわかった少女が、先に来ていた女子高生に向き直る。


「この人はヤツカさんです。えっと……霊関係のプロの方です!」


「プロ……で、いいのかな?」


「ど、どうなんでしょう? 間違ってはいないと思うんですけど……」


 かえでも僕の紹介に迷っているようだが、説明が難しいのはわかる。


 特にこちら側の知識がない人には、なんと紹介したらいいか判断に迷うだろう。


 わちゃわちゃしている僕たちを見て、かえでのクラスメイトが不安そうな顔をしていた。


「その人で本当に大丈夫なの?」


「だ、大丈夫です、私が保証します! ひとまず座ってお話しましょう!」


 かえでが促す形で、三人で席につく。


 適当にコーヒーを注文してから、かえでが正面の少女を手で示した。


「こちら、私のクラスメイトの佐々木葉菜さんです!」


 紹介を受けて少女が頭を下げたので、僕も合わせて頭を下げる。


「よろしく。えっと……佐々木さん」


「葉菜で大丈夫。みんな、そう呼ぶから」


「じゃあ遠慮なく、名前で呼ばせてもらうよ」


 葉菜に返してから、かえでに視線を投げる。


「いや、なんていうか、かえでにもこういう普通の友だちがいるんだね」


 事務所の濃い面々ばかり見てきたから、一般人というものが珍しく感じられた。


 無駄に感動していた僕に、


「……いえ、その……」

「あ、あはは……」


 葉菜は言い淀んで、微妙な表情になっていた。

 かえでも困ったように笑う。


「ヤツカさん、その……私たち、友だちではないですよ」


「え? そうなの!?」


 驚く僕に、葉菜は申し訳なさそうに視線をそらした。


「うん……話したのも今日が初めて……」


 確かにかえでも彼女を紹介するときに「クラスメイト」とは言ったが、「友だち」とは言わなかった。


 しかし、これまで一度も話したことがない? クラスメイトなのに?


 もちろん、クラスが同じでも話さない相手はいるだろう。


 しかし、この明るい印象がある二人が、同じクラスにいるのに話さないというのは違和感があった。


「ごめん……君たちが会話をしていない教室がイメージできなんだけど?」


「ヤツカさん、大げさですよ」


 僕が冗談を言ったと思ったのか、楽しそうに笑いながらかえでが補足を入れる。


「ほら、さっきも言いましたよね。私、たまにしか学校に行けないので、あまり友だちを作る余裕がなくて」


 なるほど、そもそも学校に通えないなら、話す機会も減るだろう。


「うーん……でも、それだけで話さないってことになるのかな?」


 どうも納得できない。あとから思い返すと、これはよくなかっただろう。


 かえでの触れるべきではない話題に触れてしまったのだから。


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