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地下倉庫の悪霊14


 すべての怨念が、直刀の光を受けて消滅した。


 倉庫全体が僕の神気に満ちているから、追加が現れる気配もない。


 これで、道が開けた。


「危ないから、かえではここにいて」


 僕はひとり倉庫の奥へ駆け出す。


 いつまた怨念が溢れてくるかわからない。手早く済ませないと。


 数歩駆けたところで、後ろからかえでの声がした。


「あ、ヤツカさん、きっとそれですよ! 秋穂さんが言ってた、黒い金庫です!」


 今回の目的である契約書が入った金庫。確かに、それらしいものが確認できた。


 けれども、しかし、

「それは後回し」


 僕は金庫を無視して、さらに奥へと進んでいった。


「ヤツカさん!? どこ行くんですか!?」


 かえでの疑問も無視して、歩を進める。


 目的のものを見つけるのは、そう難しくはない。


 あれほどの力を持った存在なのだ。気配を探れば、すぐに居場所が特定できる。


「そこかっ!」


 一番奥にあるオフィス机。気配はその下からしていた。


 間近まで接近し、机の下をのぞき込む。


「ヒッ……! こ、来ないで……っ!」


「……女の子?」

 そこにいたのは、ひとりの少女だった。


 小柄で、十代中頃の女の子は、ショートカットでボロボロのワンピースを着ていた。


 その肌は影をまとっているように黒く、服や髪も闇のように暗い。


 瞳には、強い憎悪が宿っていた。


「出ていってよ……もう誰も、ボクに近づかないでっ!」


 少女は今にも噛みついてきそうな勢いで唸り声を上げる。


「憎い……憎いの、憎いよ、憎い憎い憎憎憎憎憎ッッ!!」


 この発言から、やはりあの怨念を操っていた悪霊本体であることがわかる。


 なら、僕のやることはひとつだ。


「お前、いい加減にしろよ」


 少女に手を伸ばし、机の下から引っ張り出す。


「やだっ! なにするの……!? あなたも、ボクをイジメるの?」


「イジメないよ。これはただの荒療治だ」


 少女を小脇に抱えて、来た道を戻っていく。


「いやっ、止めて! やだやだ……っ! 乱暴しないで」


 だから乱暴はしない。

 ただし、嫌なことはするだろうけど。


 嫌がる女の子には構わず、僕は自分の思うままに動く。


 そのまま進んでいくと、かえでと夏希が待っている場所まで戻ってきた。


「ヤ、ヤツカさん……?」

「あなた、何する気?」


「ちょっとね」


 疑問符を浮かべる二人のことも通り過ぎて、さらに進んでいく。


 そうしてたどり着いたのは、倉庫の出口だ。


「やぁ、出たくない……! お願いだから、出さないでぇ!」


 じだばたと抵抗する悪霊だが、腕力そのものは大したことがなかった。これなら、僕の腕から逃れることはできないだろう。


 だから、僕も余裕をもって声をかけられた。


「あのさ、君の過去に何があったかは知らない。悪霊になるくらい憎い相手がいるっていうなら、まぁそれは仕方ないと思う」


 人生いろいろだ。

 誰かを恨むことだってあるだろう。


「でもさ、無関係な人間に恨みをぶつけるなよ」


「だ、だって、それくらいしかやることないし」


 そんな理由で襲われるこっちの身になってほしい。


「とりあえず、こっから出ろ。こんな暗いところにずっといるから、恨みが晴れないんだよ」


 悪霊を抱えたまま出口を出る。

 そこでやっと彼女を下ろした。


 すると、少女は床に座り込んでさめざめと泣き始める。


「うぅ……ひどい。出たくなかったのに……もうお嫁にいけない」


「いや、なんでだよ!? そもそも死んでるんだから、お嫁にはいけないだろ?」


「生きてた時の夢が、お嫁さんになることだったから……」


「知らないよ」


 だとしても、倉庫から出ることとは関係ないし。


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