地下倉庫の悪霊6
大量のケガレを一言だけで倒してしまった秋穂さんは、何事もなかったかのような笑顔を向ける。
「とんだハプニングだったけど、ヤツカちゃんには私たちのいい紹介になったかしら~」
「……そうですね。ケガレくらいは簡単に倒せるってことはわかりました」
なかなかに規格外な人たちだ。
一人は貧乏神だったし。
「あれ? でも、もう一人は……?」
あの無口な女の子も戦えるのだろうか? そんな印象はないけれど。
「小鈴ちゃんなら、ちょうど戻ってくるところよ~」
秋穂さんが事務所の入り口に視線を向けると、ほぼ同時に扉が開かれた。
どうしてわかったのだろう、という疑問はあったものの、それよりも気になることがあった。
扉を開けて入ってきたのは秋穂さんの言う通り、赤い着物の無口な女の子だ。しかし、その周囲におかしなものが確認できる。
「皿が……浮いてる?」
小鈴を取り囲むように、コップや皿がいくつも浮遊している。
皿にはサラダやスクランブルエッグ、トーストなどの朝食が盛られている。
「ん」
小鈴が指を軽く振ると、朝食たちはテーブルの上に飛んでいき、きれいに並べられる。
「わぁ、おしいそう! 小鈴さん、いつもありがとうございます!」
「……ん」
かえでに感謝された小鈴は、「どうぞ召し上げれ」とでも言いたげに手を広げた。
僕に視線を向けると、自信ありげにひとつ頷く。
「えっと……」
反応に困った。まず、状況がよくわからない。
「小鈴ちゃんはね~、うちの家事担当なのよ~」
「いや、そこじゃないです! なんで皿が浮いてるんですか!?」
「あ~、それはね、小鈴ちゃんは百年生きた付喪神だから、神通力が使えるのよ。すごいでしょ~」
「んっ」
自慢げに小さい胸を張る小鈴。
「戦っても、かなり強いのよ~」
「……んん」
今度は、謙遜するように両手を振ってみせる。
「そうよね~、あんまり戦いたくはないみたいだから、お料理とか掃除とかを手伝ってもらってるの。私はそっちは全然だから~」
恥じらうように微笑む秋穂さんが、この場にいる全員を指し示すように両手を広げた。
「これが、藤堂霊能事務所のメンバーよ」
「霊能事務所……?」
「そうよ~。ヤツカちゃんにも働いてもらうつもりだから、よろしくね。もちろんお給金は弾むわ」
「いただけるなら、どんな仕事でもっ! 僕は何をすればいいんですか?」
「うふふ、やる気があっていいわね~。でも、詳しい話は後にしましょ」
秋穂さんは今日一番の笑顔で宣言した。
「まずはみんなで朝ご飯にしましょうか」




