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File:001 迎
『ぼむん!』
向こうの方で
ひとつ、都市が消えた。
日が沈む頃、曇り空が映る海を
一筋の光が切り裂いた。
今はいつだったっけ。
それも思い出せない。
彼からの返事はまだ来ない。
彼からの既読もまだつかない。
あの日から。
ずっと待っていた。
ずっと信じてた。
返ってくると。
彼の家は確か向こうの方だっけ。
思考を巡らせる。
自分の中で合点がいった。
自分の中で整理がついた。
そうだ。向こうで待ってるかな。
早く行かなきゃ。
足元に波がおしよせる。
心がゆらゆらと波立つ。
波立つ心へ、海へと。
彼女は沈んでいった。