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薄暮  作者: 私茶(S.Odiums)
1/5

File:001   迎

『ぼむん!』


向こうの方で

ひとつ、都市が消えた。


日が沈む頃、曇り空が映る海を

一筋の光が切り裂いた。


今はいつだったっけ。

それも思い出せない。


彼からの返事はまだ来ない。

彼からの既読もまだつかない。

あの日から。


ずっと待っていた。

ずっと信じてた。

返ってくると。


彼の家は確か向こうの方だっけ。

思考を巡らせる。


自分の中で合点がいった。

自分の中で整理がついた。


そうだ。向こうで待ってるかな。

早く行かなきゃ。


足元に波がおしよせる。

心がゆらゆらと波立つ。


波立つ心へ、海へと。

彼女は沈んでいった。

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