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現代風味のお話

高嶺の花に捧げる玉砕の言葉

作者: 宇和マチカ
掲載日:2018/07/24

こんなイロモノをお読み頂き有難うございます。

 切っ掛けは何だったであろうか。忘れた。

 とにかく学校であったことは間違いない。


 アリガトウキミヤサシイネ。


 たった12文字が心臓や脳髄を駆け巡る。

 稲妻に打たれたような気もする。打たれたことは無いが。

 とにかく私は一目惚れというものをした。

 その後、前後不覚に陥ったので、覚えていない。

 正気か狂気か、私は慄いたのである。


 さて、正気に戻った私の薄い胸に宿るはこの質問。


 question 

 貴方は高嶺の花に惚れたらどうしますか?


 チキンな私のanswer

 叶う訳無いので早めに玉砕して諦めます。


 良かろう、心のままに従おうでは無いか。





 でまあ、それから幾星霜……多分。

 今はもう夏だ。

 世の中には人に見られたくない恥の瞬間というものが存在する。

 人によるかも知れないが……。

 例えば、人前でドブにハマると言うのは、誰にとっても恥ずかしくないだろうか。



 今日は日差しの強い夏の平日。セミがミンミンジージー鳴いている普通の日。


 だが、今の光景は普通ではない。

 目の前で憧れの人がドブにハマっているのだ。

 ……彼はドブにハマった瞬間から一部始終を目撃されてしまった。

 そう、私が通りかかってしまった為に。

 私に一部始終を。


「……」

「……」


 計らずも見つめ合う私達。

 彼を一方的に知って二年とちょっと。

 今までに訪れなかった盆暮れ正月クリスマスが、一挙に訪れたようなハッピータイムの筈だが、状況が状況である。


「あの」

「……」


 一応話し掛けてみたが返事はない。

 彼の顔から血の気が失せている。

 当然だ。

 彼は同い年の誰彼構わず優しくてモテモテな人なのだ。

 私のような底辺枯れっ枯れな人生でなく頂点のウルッウルに潤った勝ち組の人なのだ。

 言わば高嶺の花である。

 れっきとした男子高校生だが。


 そんな彼がドブに片足を取られている……。しかも人(私である)に見られた。

 物凄い屈辱で口も利けないんだろう。

 私のようなプライド低い人間でも恥ずかしさで死にそうになり、後でのたうち回る事態だろう。


 ここは、どうするべきだろう。

 それにしても、ドブに片足を突っ込んでも格好いいとは何たることだ。

 最早彼は私と住む世界が違うのではないだろうか。

 同じ学校に舞い降りた御使いとか精霊とかではなかろうか。

 見た目は男子高校生だが。

 益々彼が高嶺の花であることを思い知らされる。


 しかしこれはチャンスなのでは?

 私のグジュグジュと汚く煮詰まるこの想いを、吹っ切るいい機会では?


「……」


 居たたまれないのか涙目になってきている。

 この私が救助も立ち去りもせず無言野次馬しているのが屈辱でならないのだろう。

 何もしなくても私は確実に今嫌われている。

 寧ろ何もしないから嫌われている……。

 ここは決定打を打たなくては。


「あの」

「……何っ!?」


 初めて交わした言葉が裏返った声だとは。本来の彼の声は音楽的に美しいのに。

 ちょっと大型犬っぽい所も好ましい。

 まあ、他の人と会話している彼の声に、聞き耳立ててただけだが。


「……ドブにハマっても素敵ですね?」

「!?」


 ……ああ、彼の顔が絶望に歪んでいる。

 これは確実に玉砕したな。

 私はこんな事言われたら即座に不倶戴天の敵扱いだ。

 うん、これでよかろう。

 私の想いは砕け散った。それでは次の行動へ移らねば。


「手を出して?」

「……は?」

「そのままじゃヘドロから抜け出せないでしょ。引っ張るから」


 何時まで経っても動かないので、少々強引だが勝手にドブじゃない側の片手を引っ張った。

 図々しいかもしれないが、玉砕した身だ。

 最早失うものは何もないのである。


 手に初めて触れてしまった。

 平常心だ。

 芋掘りでもしていると思えばいい。

 多分きっと本来なら、ほのかにいい匂いとかがするのかもしれない。

 が、今はドブの臭いしかしない。

 お陰で彼の手を握ったとしても、余裕で不惑を保てた。


「……」

「……んっと!!」

「ぬ、抜けた……」


 抜いたものの、彼の右足はドブ色に侵食されていた。

 どうしたものか。これでは帰路に着くのも辛かろう。

 私は鞄の中のペットボトルの2リットル水の存在を思い出した。

 暑さ対策で常備しているのだ。

 中身はミネラルウォーターでなく、水道の水に変わっているが。


「……え、あの……」

「ちょっと冷たいかもしれないけど」


 若干飲んだので、これは彼の右足と間接キス扱いになるかもしれない。

 しかしそんなことよりも、ドブに浸かった足で帰宅する方が嫌だろう。

 大事の前の小事と諦めてもらおう。


 私はザブザブと彼のドブに浸かった右足に注いだ。

 ドブの残骸が表面上は流れていく。

 ズボンの色とスニーカーの色が本来の色に変わっていく。

 ちょっとマシになっただろうか。

 中身を全て彼の右足に注いだ。

 私の口に触ったペットボトルの飲み口から、彼の足へ水が注がれていくのが何だか背徳感が有る。

 うん、不埒な思いが心を駆け巡った。すまない。

 彼はされるがままだった。

 不審な私の不審な行動が理解できず、固まっていたのかもしれない。


「……よし」

「あ、あの……その」


 彼が眉毛をハの字にして私を見た。

 私よりもかなり身長の高いイケメンなのに、まるで子犬のような目だ。

 何だその目は。玉砕したと言うのにクラっときそうではないか。

 いかん、さっさと退散しなければ。

 立つ鳥は跡を濁さないのだ。

 後ろ髪を引かれる思いだが、私はペットボトルをへこませて鞄に叩き込んだ。


「……ではさようなら」

「え!? えっ、ちょっと! 待っ……!!」


 私は断腸の思いで彼から視線を引き剥がし、帰路とは反対方向へ駆け出した。

 ああサラバ私の想いよ。

 高嶺の花に恋した私の汚い想いよ、水と一緒にドブに流れてしまえ。



 そして私は盛大に家に帰るのが遅くなり、

 晩御飯のおかずの青椒肉絲を弟にパクられたのだった。

 失恋した姉に死ぬほど優しくない弟を私は許さない。

 明日の朝の卵焼き(卵4個分)を昨日の仕返しに根こそぎ食らってやった。

 姉の怒りを思い知れ、未だ夢の住人である弟よ。


 しかし機嫌が良かったのは通学途中、看板が捲れあがっているコロッケ屋の前を通るまでだった。

 私は卵焼きがそんなに好きでもなく、スクランブルエッグ派だと思い出してしまったのだ。

 あの欠食悪魔には、スクランブルエッグの日に天誅を喰らわせるべきだったのだ。

 動揺していると実にろくなことがない。


 そして更に悪い事に、食道にせり上がってくる天誅の味もとい卵焼き……。

 満腹を通り越して吐きそうだ。

 私は二時限目でギブアップを宣言し、保健室への道を辿ることにした。


「……うぉえ……」


 最早歩くのすら気持ち悪い。

 いかん、行き先はトイレの方が平和的解決するのでは。

 このままでは色々ぶちまけた中にぶっ倒れてしまう。

 それは避けたい。今日は体育はない。万が一の着替えが無い。


「……どうしたんだよ、森戸さん」


 誰だ、私の名を呼ぶのは……。

 眩しいばかりに差し込む逆光で見えないではないか。

 せめて名乗って欲しい。


「気分が悪いか?」

「……」

「駿ってばどしたのー?そんなモサ子にまでやっさしー」

「保健委員に任しとけよー」

「そーそー、こんなのに構う必要無いってー」


 どうやら私に声かけしたのは駿なる名前の人で、そのツレ共は学年で私と絡む事はないチャラ集団らしい。


 放置してくれないだろうか。こんな奴らの気紛れは要らない。

 余計具合が悪くなりそうだ。

 私は一人で戦えるのだ。軟弱な群れとは違うのだ。


「……退いて。あんたらの服に吐かれたいの?」


 私の言葉にげっとか汚いとかウザッとか浴びせながらチャラ集団は私の前から立ち去った。

 気分が頗る悪くなった。

 良いことなんて全く無い。


「……うげ」


 その日は保健室で過ごした。

 私を囲むカーテンが地味に汚れているのを見ながらうつらうつらと。


「この季節だからねー。食中毒とかホントに心当たり無いの?」

「単なる食べ過ぎです、すんません」


 保健室の先生に親を呼ばれた。

 朝ごはんの件でしこたま怒られた。

 不本意である。




 そして二日後。

 授業が終わり、私は弁当を開いた。

 ぼっち飯である。

 別に悲しくも寂しくも無い。

 人間誰が横に居ようと常に一人なのであるから。


「ちょー聞いてよ、るんー」


 チャラ軍団が人の席の斜め前でツルんでいる。

 実に騒がしいが、繁華街のど真ん中で食事をせざるを得ない修行だと思っている。

 心頭滅却すればチャラ軍団の騒音如きで食欲は失せない。


「あのさあ、アコさ、駿に告ったの」

「えっ、マジで!? やっだ抜け駆け!?」

「でもさー、その割に元気なくない?フラれちゃった?」

「うっせ!」

「やっばー」


 実に語彙力の少ない集団だ。

 今日の昼餉の白ご飯に掛かった海苔フリカケのように少ない。

 帰ってから母に断固抗議しようと思う。

 そして明日は梅フリカケがいいと申請しなければ。


「でもさー駿変なんだよ。アコに何言ったと思う?」

「うぜーとかキモイ?」

「駿がそんなの言う訳ないじゃんバッカか!!」

「えーフラれた割に優しくね?」

「うっせーし! もう70年のラブも冷めたし」


 30年足りないし、100年の恋だ。

 やはりこのチャラ軍団は情緒まで足りていない。


「なんかさ、ドブにハマった全っ然知らない他人がいたらどうするって聞いて来たの」


 チャラ軍団の言動に噛み忘れた梅紫蘇肉巻きが喉を直撃し、私は蒼白になった。

 耐えろ、耐えるんだ。

 此処で咳込んでは末代までの恥……でもないけど、何かが減る気がするのだ。


「ハア? 何それ? 何でドブ?」

「しんないけどー、でもフツーシカトすんよね」

「するするー」

「でもアコ賢いからー、助けるんじゃね?って言っといたー。

 優しいアコに惚れてくれんじゃね?的な」

「うわアコマジクズーい!」


 チャラ軍団の聞き手の方はそう言うが、別にクズくは無いのであろうか。

 物は言い様ってことだ。

 大体その場にいて助けるか助けないかは状況次第であるからして。

 戦略的に有利なら嘘も方便だ。


「でもさー、駿の質問も一個あってー」

「何なにー」

「そしたらそのハマってる奴褒めるか?って聞いて来たの」

「……ハァ?」


 ……何たることだ。

 このチャラ軍団の言っている駿なる人物。先日お助けした高嶺くんではないか。

 この会話で決定では無いか。

 そう言えばあの人当たりの良さでチャラ軍団とも付き合いのある御仁だった。

 すっかり忘れていた。

 しかしそういうファーストネームだったとは……。

 単に憧れてただけなので名前は知らなかった。

 高嶺の花の高嶺くん……冗談の様だが、本当だ。


「そこで何か超シラけちゃってさ…」

「そ、そーだね」

「何かゴメン、やめとくわってなって……」

「あー、なるわ。アタシでもなるわ」

「そしたら向こうも俺もやめとくわってなって…。

 いや、何でアタシがフラれてんの? って言うか何か悔しいっつーか?」


 それからチャラ軍団が何を言っていたかは私の脳内データベースには残されていない。

 取り合えず昼餉は食べ切ったようだ。

 五時限目終わりにさりげなく鞄を探ってみたら、カラだった故に。

 因みに胃は無事であった。


 そして更に月日が流れた。

 大体3日くらいであろうか。

 高嶺駿くんの意味の分からない奇策の告白お断りはまだ続いているらしい。

 チャラ軍団だけではなく、四組の岩見さんまでフラれたそうだ。

 あんなお目目ばっちり美人までフるとは、余程理想が高いに違いない。

 遥か彼方成層圏を超えて目指すは宇宙規模かもしれない。

 早めに玉砕をしておいて良かった。

 フる手段に私との思い出と言うか体験を使われたのは若干不愉快に思わなくも無いが。


 まあ高嶺くんはモテモテ中のモテモテだ。

 奇策くらい弄しないと、数多の告白を捌ききれないのだろう。

 私如きが役に立てたのなら良しとしよう。

 彼の中でちょっとお役立ちの……爪痕くらい残せたであろうか。


「森戸すずなさん」


 私をフルネームで呼ぶのは誰だろうか。

 どうして彼は笑顔なのだろうか。


「話が有るんだけど?」


 ……高嶺くんでは無いか。

 ドブの件の口封じだろうか。

 私の口を封じても喋る当てがないのだが。


「……ハマった件なら言わないけど」

「何で君は告ってこないの?」


 凄い自信だ。

 だが彼は高嶺くんだ。

 この学校の女子生徒は、大体彼に優しくされたらフォーリンラブに陥るらしい高嶺くんだ。

 彼以外の男子生徒が言ったなら身の程を知れ不届き者と断じるだろうが……。

 しかし彼はこんなキャラだっただろうか?

 もっとこう、気遣いの塊のようなキャラでは? 浅く観察していた私には知る余地は無い。

 真実は闇に包まれている。


 だが、何故彼は私の告白が必要なのだろうか?

 何かのゲームだろうか? 一週間のうちに何人告白させたらアイス奢りとかであろうか。

 だったらそれはあまり良くない事だ。

 私ならともかく、繊細で腹黒い女子相手なら、ザクザク腹部とかを刺されて血塗れになったりするではないか。

 夏のアイスは確かに魅力的だが、命には代えられない。

 是非大事にしてほしい。


「告白するも何も、既に貴方にフラれていますが」

「……え」


 高嶺くんが目を見開いている。

 何時も人当たりの良い彼が素で吃驚しているのは、レア中のレアではないだろうか。

 しかし何故私のような者の前で素を晒すのだろう。

 ドブにハマった所を見たから隠すものも無いと言う自棄心だろうか。


「それでは失礼します」

「ままま待って!! 俺君の事フッた覚えないよ!!

 大体殆ど喋ってないよな!?」

「意見の相違ですね」


 喋った事は確かに無い。

 先日のドブに落ちた彼との会話がもしかしたら初めてかもしれない。

 だがそれが何だと言うのだろう。


「怒ってんの!?廊下で助けなかったから」

「廊下……? 何のこと?」

「ええ!? 一昨日会ったよね!?」


 一昨日……というと、卵焼きを食べ過ぎて色々大変だった時の話か。

 ……ああ、そう言えば誰かに話しかけられた気もする。逆光の人に。

 そうか、アレが高嶺くんか。

 流石に輪郭だけでは判別できなかった上に、あの時は非常事態だったのでろくに聞いてなかった。

 別に彼が私を助ける義理は無いのに。

 私のように下心があったわけでは無く、本当の単なる通りすがりなのだから。

 悪いのは卵焼きを食べ過ぎた私だ。


「私を助けても何の得もないんだから、怒る理由は有りませんけど」

「……滅茶苦茶怒ってんじゃん、すずなちゃん……」


 何故彼は私のファーストネームを呼ぶのだろう。

 そして何故近寄って顔を覗き込んでくるのであろう。

 ドッキドッキである。

 流石チャラ軍団とお付き合いが有るだけある。

 私を喜ばせたいのだろうか、機嫌取りであろうか。

 そんなにドブにハマった事を隠したいのだろうか……。

 言わないと言っているのに……。

 証書に血判でも捺して提出すればいいのだろうか。


「……近いんですが」

「えっ、何で駄目!?」

「無関係の人間が寄り添っては、在らぬ事態や誤解を引き起こします」

「え……。こんなに脈の無い断り方されたの初めてなんだけど」


 成程、彼は分かっていて私に接近戦を挑んだのだな。

 うむ、致命傷だ。フラれていなければ首が飛んでいたレベルだ。

 流石学校内一のモテモテだ。

 私のようなぼっちとは経験が違うのだな。


「ちょ、すずなちゃん!!」

「さようなら」


 敗残兵は思い出を胸に去るのみなのだ。

 出来るだけ速やかに撤退だ。




 そして更に月日が3日位流れた。

 私は帰宅しようと下足箱へ向かった。

 そうしたら待ち伏せに遭ってしまった。

 うむ、何だ?果し合いか?だったら困るな。私は普通の女子生徒だ。

 戦いの知識は脳内だけで、実際に動けないタイプだ。


「分かった!! 俺が悪かった!!」


 何故私は高嶺くんに謝られているのだろう。

 私は彼に何かした覚えはない。

 何日か前にドブで救助した以外は。


「どうしましたか」

「すずなちゃん、俺と付き合って」

「どうかしたんですか」


 いかんな、高嶺くん、真っ赤では無いか。

 この暑さでどうかしてしまったのだな。

 どうしたものか。

 介抱するにも私では彼の体格を引き摺っていけない。


「俺、結構考えたんだよ」

「はあ」

「君みたいに面倒見のいい子好きみたいだ」

「……面倒見?」


 何処がであろうか。

 私はクラス委員ではあるが、くじ引きでの惨敗の結果だ。

 自ら申し出たわけでは無い。


「俺結構モテるのね」

「知ってますが」

「……知ってるんだ」


 寧ろ知らない人が居るのだろうか。

 廊下を歩けば告白に当たるみたいなカルタが出来るんではないだろうか。

 そう言えば高嶺くんは大型犬のようだ。

 もしそうなら羽の生えた大型犬……とてもファンタジーだ。

 モフモフな羽付きイケメン。何か素晴らしい気がする。妄想は自由だ。


「すずなちゃんは俺が嫌い?」

「全然」

「……全然……」


 耳が垂れているような気がする。私の妄想の中で。

 しょんぼりと。

 答えはお気に召さなかったようだ。何と答えればよかったのだろう……。


「……ええとね、すずなちゃん」

「はい」

「俺、君に告白をうんって言ってもらうように頑張るからね!!」


 モクモク雲が覆っている。

 積乱雲と言う奴だ。きっと夕方には雨が降るであろう。

 ……暑さのせいだろうか。

 うん、白昼夢であるな。

 きっと今現在の私は教室でヨダレを垂れて、マジ夢の中であろう。

 でなければ私のファーストキッスが高嶺くんに奪っていただけると言う、某パレードが学校に来てジャンジャカギラギラブンブカやりそうな事態は起こらないのだ。

 ……夢だな。

 寝よう。





「……と言う訳で、おとーさんはおかーさんをゲットしたのでしたあ!

 イエイ! ハッピーエンドへまっしぐら!」

「マジでー? おとうさんダセー」

「だせえ?」


 起こらなかったはずなのだが。

 私の膝は大型犬の子犬が二匹纏わりついており、これ以上は乗車拒否だ。

 とても重いのである。

 いや、普通の人間の子供であるのだが。

 但し、どっかの誰かにとても似ているが。

 私の子供でもある筈の二人は、私の遺伝子が全く見当たらないのである。


「……」

「すずなー」

「解せぬ……」

「何が?」


 メンデルの法則は何処へ行ったのであろう。

 いや、それよりもどうして高嶺くんの家で私は子守を……まあ実の子なので子守は当然である。

 いや、何か違う気がするのであるが…。


「解せぬ…」

「おかーさん、げせぬってなあに?」

「げせぬー」

「あ、おかあさんはおとうさんとイチャイチャ足りて無いんだな?」

「いやだー! おかあさんぼくのー」

「のー」


 一体どれなのだろう。

 白昼夢が覚めるのは何時なのか……。と思って幾星霜。

 私は三人との同居がとても幸せである。

 ……何か、思っていたのとは違うが……。


「な、逃がさないからな、すずな!」


 ドブの話を子供に聞かせていても、高嶺くんはモテ男だ。

 今も現在進行形モテモテだ。

 私とは生きる世界が違う感じなのだ。

 でも何故か私と一緒に居て、夫婦になっているのだ……。

 ……私って、フラれた筈ではなかったのだろうか?

 よく分からないが…取り合えず夢よ醒めるなと毎日思いながら。

 高嶺くんと夫婦をし、子育てをし、家族をしている。


美少年はドブにハマってもモテるんじゃないかと言う作者の戯言を短編にしました。

短編出来そうだなとツッコミ入れて…いや、仰ってくれた友人に有難うを込めて。

テーマが微妙で申し訳ない。

あ、ヒーローはタカミネくんじゃなくてタカネくんです。

ルビの使い方分からなーい…分からないもの使う勇気が出なーい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] すずなさんの冷静にみえてテンパってる内面と、 大型犬氏のポジティブさの明暗が面白かったです。 二人の会話の噛み合わなさもフフッと笑えました。 [一言] ほんわかとした読後感で読めて嬉しく…
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