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モノクロ

作者: 膝野サラ
掲載日:2018/03/13

いつからだろう。

この世界から色が亡くなったのは。



向日葵が黄色い事や林檎が赤い事を知らない、

色を知らない俺達の世代は、

白黒世代と呼ばれている。



色が死んだ世界と言っても、

黒色と白色とそして灰色の三色は今でも生きている。

むしろ生き生きしているのかもしれない。



色を知らない俺達からすれば色というものは、

昔存在した色という名の何かという認識でしかない。

だから林檎が赤いという事や、

向日葵が黄色いという事を言われても、

正直白黒世代の俺達にはよく分からない。

そもそも赤色と黄色を知らないのだから。



その昔、色があった時代の世界にも、

色の見えない人間は存在したらしく、

その人達が使っていた色が見える眼鏡も、

どうやらこの世界では使えないようだった。



しかしそんな色を知らない俺達にも、

色を知る方法がある。

それは色のついた夢を見る事だ。



この世界の色が死んでも、

夢の世界の色は死んでいないらしいのだ。



本来色を知らない人間には色のついた夢を、

見る事は出来ないとされていたが、

神か何かが色を知る最後のチャンスを与えたかの様に、

色を知らない白黒世代にも色のついた夢は、

見れるようになったのだという。

まあ俺はまだ色のついた夢を見た事はないのだが。



実際白黒世代でも色のついた夢を見た事がある者は、

少なからずいる。

しかし祈ったところで色のついた夢を、

見れるという訳でもない。

だが最近では色のついた夢を見れる機械が、

開発されてきているのだ。

最終的にはそれを利用してどうにかこの世界の色を、

生き返らせようとしているとかなんとか。





そしてその色のついた夢を見れる機械、

それが今俺と彩絵(あやえ)の目の前にあるのだ。





その色のついた夢を見れる機械というのを、

扱うには多額なお金を払い数週間に渡る色の講習と、

難しいテストを受けなければいけない。

多額なお金を払いその講習とテストに合格すれば、

一回限定でその機械を使う権利が与えられる。



色の講習というのは日本人の肌が肌色だとか、

林檎が赤色だとか向日葵が黄色だとか、

宇宙から見た地球は青いだとか。



例えば色のついた向日葵の夢を見たとしても、

その向日葵の花が黄色という色だという事を、

知っておかなければ、

その向日葵の花の色が黄色という色だという把握が、

困難になるのだという。



多額という事や長期間の講習、

そしてテスト内容が難しい事という事もあり、

合格者も少なく使える人は少ないがそれでも、

テストに合格しても使えるのは一年後になるくらいに、

予約は埋まっているのだ。



そして俺と彼女である彩絵は丁度一年前くらいの頃、

その色のついた夢を見れる機械を、

使った事のある友人の話を聞いて、

どうしても色が見てみたくてバイトでお金を貯め、

必死に勉強をしてこのテストに合格した。

そして今その色のついた夢を見れる機械が、

俺達の目の前にあるという訳だ。



研究室の様な場所のある広い一室に置かれた、

頭から目の辺りまでを覆うその機械をつけると、

色のついた夢を見れるという訳だが、

どんな夢を見れるかは決めれないという。

しかし夢の中で自分の意思で動く事などは、

どうやらできるらしい。



その機械を目の前にして彩絵は、

「少し怖いかも」

と困り笑いの様な顔を俺に向けた。



そして俺は「奇遇だな俺もだよ」と、

また困り笑いの様な顔で返した。





正直俺はかなり怖かった。

色のついた物達を知ってどうなるのかが、

想像できなさすぎて怖かった。

逆に何も感じなかったらどうしようという、

不安も俺の中にはあった。

それでも色を知りたいという好奇心が勝っていた。

それは彩絵も同じなのだろう。



そう頭で思いながら俺と彩絵はその機械を装着した。

そして硬く真っ直ぐに伸びたベッドの上に寝転んだ。



どうか俺の夢に彩絵が現れますように。











最初、俺はひたすら綺麗で青い空を眺めていた。



気づけば俺は花畑の中に立っていた。



花は様々な色を俺に教えてくれた。

チューリップの見事な赤色や黄色の花びら。

コスモスの鮮やかなピンク色の花びら。

マーガレットのいつのも数百倍鮮やかで、

あまりに綺麗な白色の花びら。



しばらくの間俺はずっと花を眺めていた。

初めて見る色達にずっと見惚れていた。

感動という言葉がここまで似合う状況はなのだろう。





一度夢の中で目を瞑りゆっくりと目を開けると、

次は一面に向日葵畑が広がっていた。



向日葵の花びらは本当に素晴らしく、

綺麗な黄色をしていた。

数えきれる訳がない程の向日葵達は、

どれだけ見続けていても飽きる訳がないのを確信できた。





少し目線を上にやった時、

向日葵畑の中に麦わら帽子を被り、

白色のワンピースを着た彩絵が立っていた。



色が生きていた世界では当たり前であったはずの、

肌の肌色はあまりに美しかった。

肌色の肌というのはここまでに美しいのか。



肌色という色がついた肌や、

そして彩絵の着るいつもとは違う、

鮮やか過ぎる程の白色のワンピースや、

薄いピンク色の唇は、

彩絵の綺麗さを更に際立てていた。



その彩絵の姿は綺麗すぎた。

言葉を失った。

この綺麗さをどう表現すればいいのかが、

全く分からないくらいに、

とにかく綺麗で綺麗でとにかく綺麗だった。





俺の目の前で彩絵は持っていた黄色の向日葵を、

俺に手渡し満面の笑みでこう言った。


「どう?綺麗でしょ」


涙で前が見えなくなり彩絵の姿がぼやけながらも、

俺は彩絵にこう返した。


「ああ、すごく綺麗だよ」





涙で完全に彩絵の姿を捉えられなくなった時、

目が覚めた。





横で同時に目を覚ました白色と黒色と灰色の彩絵は、

涙を流し笑いながらこう言った。


「何泣いてるの」


「お前もだろ」


涙をお互いに拭い笑いながらひと段落して彩絵が言う。



「どんな夢見てたの?」


「分かるだろ」



彩絵はまた笑いながら言う。



「もしかして私の夢?」


「ああ、その通りさ」



手で口を押さえながら「ふふふ」と笑った。



「お前はどんな夢見てたんだ?」


「分かるでしょ?」



少し恥じらいながら俺が言う。



「もしかして俺の夢か?」


「その通り!」



そして二人で大きく笑った。



「綺麗だったでしょ私」


「夢の中でも同じような質問をされたよ」


「ふふふ、で綺麗だったでしょ?」


「ああ、すごく綺麗だったよ」


「かっこよかっただろ俺」


「夢の中でも同じような質問された」


「お前もかよ、でかっこよかっただろ?」


「うん、すごくかっこよかった」



そしてまた二人で大きく笑った。









綺麗な顔で笑う白色と黒色と灰色の彩絵の笑顔は、

色のついた夢の中の彩絵の笑顔と同じくらい綺麗だった。









これからも白色と黒色と灰色の彩絵を愛し続け、

白色と黒色と灰色の俺を愛し続けてもらおうと、

心から思った。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今回は初めて空想世界の物語を、

書かせて頂きました。

この作品を書こうと思ったきっかけは、

僕の好きな映画で『イヴの時間』という、

映画がありまして、

その映画を作ってる吉浦康裕さんの作品が、

どれも大好きでありまして、

こんな風な現実とは少し違う物語を、

書いてみたいなと思い書かせて頂きました。

もしかしたら近い将来この世界に、

なる可能性もあるかもしれませんね。


評価や感想よろしくお願いします。

レビューやお気に入りの方もどうか。


Twitter→【@hizanosara_2525】

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― 新着の感想 ―
[良い点] モノクロの世界から、初めて色を感じられたらきっと感動するのでしょうね。当たり前のことが当たり前じゃない発想が楽しかったです。短編らしい広がりのあるエンディングも素敵ですね。
[良い点] 設定が面白いですね。私たちの目の前にある色という当たり前の概念がもし消えてしまったら……食事も味気なくなるでしょうし、絵画を見て感動すると言うことも少なくなってしまうでしょうね。 [気にな…
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