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やがて至る悠久の彼方  作者: 空っぽの蜜柑箱
1/1

プロローグ

初投稿。完結目指して頑張ります!

 この地は、境界である。

 夢と現。広大な海を照らし出すこの街は、人に手によって作られた夢であり人の生きる現といえる。それがこの新囲浜という地であった。

太平洋沿岸。

高度経済成長期に埋め立てが進められ、海を干して築かれた地には、夜の闇を晴らすネオンが輝いている。無機質な風景の隙間を埋めるように茂る不釣り合いな緑は、相容れない人工と自然の両者を共存させた。

周囲三方向に海を臨み、海風が吹き抜けるこの街は、人工物と自然物の見事な調和を見せていると評価する声もあるが、自然を淘汰する傲慢な人のエゴが見え隠れし、自然までもが人の手によって管理運営できるという思想が、この街の存在意義を物語っているようにも見える。


夢は夢、現は現。それは紛れもない事実であり、神意によっても覆されぬことだ。しかし、人は神を忘れ、信仰を失い。かつて八百万の神と共に生きた時代は終わりを告げ、黒煙の立ち込める無機質な時代が幕を開けたのだ。

神のいない国と揶揄されるにふさわしいこの地の内陸の丘の上には、また矛盾する存在である「教会」が市街地とは、また違う光を放っている。

夜空に輝く星は暗雲に隠され、代わりに季節外れの雪が街明かりに照らされ輝く。


―――今日は十月だというのに。

 新囲浜の丘は深い緑に染まり、人工物と言えばこの「教会」だけだろう。木扉は固く閉ざされ、すでに一般開放の時間は過ぎている。暗闇に佇むその姿は、ノルマンディーのそれとはまた別の意味で要塞じみていた。

「何か街に変化はあったか雪乃?」

 暗い一室には小さく明かりが灯っていて、そこで若い男が少女に問いかけた。

「いいえ、何もありません」

 小さな頭を振って答える少女に男は眼鏡を曇らせた。少女は祈るように目を閉じ再び集中するが、彼女の感覚を乱すような動きはない。


 ふと、少女の視界の中に季節はずれの雪の中、家路を急ぐ姿がある。彼の行動は、雪乃にとって少しだけ違和感があった。

「葉山さん一人、よくわからないものが」

「引っかかる言い方だな。それは何だ?」

 雪乃の報告では、それが人かどうかがわからない。―――それでは、探しているものなのかどうなのかもわからない。


この町では一つの怪事件が起きていた。

新囲浜市集団行方不明事件。

既に十数名の行方が分からなくなっている。


 しかし、テレビもラジオも新聞もどのメディアもこの事件を取り上げない。ワイドショーや記事の一面を賑わすのは、人気俳優の結婚だったり、某アイドルのスキャンダルだったりとこの事件がまるでないかのように平和だ。


 雪乃はその何かを追うが、探索範囲外に出たのかノイズの中に消えていった。

 集中を解くいた少女は、立ち上がろうとするも足元がおぼつかない様子だ。

「今日はここまでにしよう。部屋に帰って休むといい」

 へたり込んでしまった雪乃を置いて、男は部屋を後にした。


深々と降る雪は積もることはなく溶けて消えていった。

遅くとも月1くらいで更新予定。

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