足を壊したお客様と浮遊しているウェイトレス
2作品目です。
前回がかなり暗かったので今回は温かいお話です。
「あら、いらっしゃいませ」
「どうも」
「また貴方ですか」
「駄目か?」
「いいえ、私の店に最近は貴方以外来客はありませんよ。嬉しい限りです。」
「...」
ドスン
「あぁ、お客様また床に鉄球を...床が割れてしまいました」
「済まない、これが仕事なんだ。掃除は僕がする。」
「では、よろしくお願い致しますね。」
「そういえば、前回いらっしゃったときから今までどこへ行かれたんですか?」
「...僕も判らない。動く気力がなくてそこらじゅうを漂っていた。」
「そうですか。...もう足は大丈夫なんですか?」
「少し機動力は落ちたけどまぁ、親に最初で最後の手紙を届けることは出来そうだ。」
「そう。それは良かったです。...お仕事は完了しましたか?」
「あぁ。そろそろ失礼する。」
「ご武運を。さようなら、HAYABUSA様。」
「じゃあ。また僕の息子が貴方の近くを通るかもしれない。その時はよろしく言ってくれ、イトカワ。」
HAYABUSAは淡く光る羽をたなびかせながら、地球(親)の元へ最期の任務へ旅立った。
今回は小惑星イトカワへサンプルを取りにいった、人工衛星はやぶさの話です。
はやぶさはイトカワへ2回着地しています。
その2回目を書いてみました。
もしかしたらこんな会話があったかもしれないなと。
あらすじですが、最期、はやぶさは大気圏で燃えてしまいます。
その一部が宇宙ゴミとなって地球の周りを漂っているはずです。
イトカワのサンプルの採取方法は、イトカワの地面に鉄球を落として、その時に出てきた小さなカケラを集めるというものです。それを小説の中で表現してみました。
また、文中、ウェイトレス[イトカワ]が、最近のお客様は~と話していますが、イトカワにはかなり昔の生物の情報があると言われています。
ちなみに、はやぶさの息子とは、はやぶさ2の事です。
はやぶさは、息子の姿を見ることは出来るのでしょうか。