個人民事再生
個人民事再生
夫の工場の整理も目途がついたので、弁護士の住友先生に相談に伺う事にした。
落札価額は思ったより高かったのだが、私たちの債務も増えていて、残債務は当初の考えよりも大分多かった。競売費用・利息などで増えてしまったらしい。
住友先生の話では、債務を300万円に圧縮して残りを5年返済、自宅マンションと住宅ローンはそのままでやってみようという事だった。5分の1じゃなかったかなと思ったが判断基準がどうとか言っていた。いずれにしても債務が減るのはありがたいことなので、それでお願いすることにした。
しばらくして先生から電話があった。自宅マンションの査定書をもらって欲しいとの事だった。自宅を売って返済ができるなら、売ってその分を返済にあてるべきだという話だった。なので、売っても住宅ローンを返済して終わりなので自宅を売るのは勘弁して欲しい、というための査定書だった。*つまり高い金額の査定書は駄目という事。
思い当たる人もいないので、三峰さんのところにお願いに行った。三峰さんは嫌だと言った。査定金額について自分の予想が外れたなら責任を負うが、初めから決められた査定書を出すのは嫌だという事だった。自分の仕事ではないし、裁判所に嘘の書類を出すのも嫌だと言った。
おっしゃるとおりです。でもお願いするしかないので、しつこくお願いをした。結局は辛めの査定での査定書を出してもらう事になった。
査定書をつくってもらい、住友先生に渡して手続きをすすめてもらう事になった。
しばらくしてからまた先生から電話があった。もう1社査定書を出して欲しいとの事だった。そしてまた三峰さんにお願いに行く事になった。三峰さんに友人を紹介してもらってその人に査定書をもらいたいとお願いをした。
さすがに今度は断られたが、話の中で工場の上の賃貸を扱っていた不動産会社に書いてもらえばいいんじゃないかという案が出た。この会社は工場の建築のときにもかかわっている会社で、確かに協力してもらうべき先なのだと思った。
その足でその会社に行き、査定書を出してもらう事になり、後日先生に査定書を渡してこの件は解決した。
長かったが、もう少しで終わる。裁判所の手続きは先生がしてくれるので後は結果待ちだ。300万円を5年で返すので、毎月5万円の返済になる。これを何とか返せれば本当の終わりだ。息子には迷惑をかけたくないので、夫と私の2人で返していきたいと思う。
夫は72歳になり、私も67歳になった。夫など5年後は平均余命だなと思う。
実は私のお店も先日閉店をした。特に赤字経営でもなかったのだが、大きな利益がある訳でもないお店だった。駅の近くの立地の良い場所だった。建物は古くなっていて建て替えの話など出ていたので、もう少し営業していれば大家さんから何かしらのお金がもらえたかも知れない。でも良いのだ。私も年をとったし、今回の事で色々と疲れた。お店も赤字ではないが、やはり商売なので売り上げの波がある。厳しいときに乗り越えるだけの気力がないのだ。
夫の事もずいぶん恨んだが、なんとなく許せるような気になってきた。許すことは絶対にないのだが、恨む気持ちが少なくなったような感じだ。
若い頃は工場も上手くいっていて妻の私も良い思いもさせてもらったと思う。今は300万円の返済が大変だが、500万円位の車に乗っていたりもした。あの頃は時代も良く、業績が悪くなっても少しの間我慢していればまたチャンスがあったり立ち直れたりしたものだった。これはうちの夫だけでなく全体がそうだったと思う。そう考えると息子たちの世代は大変だと思う。
今回の事では金融機関を始めいろんな方にご迷惑をかけた。
金融機関の事は随分恨んだが迷惑をかけたのは間違いのない事だ。
弁護士さんや法テラスにはお世話になりました。
不動産会社の三峰さんには本当に色々として頂き、沢山ご迷惑もかけました。結局仕事としては1円にもならなかったので申し訳なかったと思っています。
5年間の返済がありますが、生きる理由だと思って頑張りたいと思います。
おわり
人生には、苦しい事も悲しい事も沢山あります。面白くない事などいくらでもあります。かと思えば、一生の間お金に困らない人も沢山いると思います。そんな人は資本主義社会が楽しい事でしょう。私も若い時に公務員を目指した方が良かったかな。でもあの時はそうは思わなかったし、民間でまんざらでもないときもあったし。。なかなか難しいものですね。 三峰