競売
競売
裁判所の競売が始まった。三峰さんの話によると、10月の初めから3週間位「閲覧」があり、その後の1週間で「入札」、その1週間後に「開札」となるのだそうだ。
閲覧では、裁判所に行けば夫の工場が競売物件として展示されていて、面積などのプロフィールが見られるのだそうだ。またインターネットでも公開をしていて日本中から入札の参加があったりするらしい。
「売却基準価額」は2,143万円だった。「これより高い金額での入札があれば、その金額になるので安く売却される事が確定した訳ではない。」と三峰さんは話してくれたが、そんな風になるのだろうか。また「売却基準価額」は「最低落札価額」ではないそうだ。売却基準価額の2割引きが最低落札価額になるのだそうだ。つまり夫の工場の最低落札価額は1,714万円と言う事になる。例えば一人しか入札がなくて、その入札価額が1,714万円であれば、その価額で売られてしまう事になる。
いずれにしても10月末には競売が成立する事になるのだろう。
私は色々と三峰さんに聞いた。お金についても当事者なのだから、自分でも調べられる訳だが(通知もきているし)、そんなに冷静でいられなかったし考えたくもなかった。
一番正直なところとしては、愚痴を聞いてもらいたかったのかも知れない。三峰さんは45歳位の男性で自営業なのだが、優しい人だった。昔は大手不動産会社に勤務していたそうだ。任意売却はあまりやらないが、競売になった物件の仕事はよくやっている、との事だった。落札された競売物件にまだ住んでいる人の立ち退きの仕事もしているそうだ。
少しずれた立場で三峰さんと出会っていたら。例えば立ち退きでドアなど叩きにこられたのが出会いであれば、当然良い人とは思わない訳だから、人との出会いや人の評価というのは不思議なものだ。
とにかく私はこの人が気に入っていて、頼りにしていた。只、三峰さんとしては既に競売になっている物件で自分の仕事にはならない訳だから、きっと迷惑だったと思う。
競売が始まってみて思った事は、特に普段と変わらないと言う事だった。私たちはそこに住んでいないからと言う事が大きいのかもしれないが。変わった事と言えばダイレクトメールの内容位だろうか。以前は「任意売却」のダイレクトメールがきていたが、今度は「抗告」のダイレクトメールが届くようになった。競売で落札されてしまった場合に不服申立をしてどうこうと言うようなものだった。世の中いろんな仕事があるもんだ。私としてはそこまでしても仕方ないように思えたし、気力もないので、落札されたらそれに従おうと思っていた。後は少しでも高い落札価額になるように祈るばかりだ。
そして「開札」を迎えた。結果は「不売」。なんと入札が1件もなかったのだ。
これは喜ぶべき事なのだろうか? 競売にならなかった訳だから、希望通りと考えられなくもないが、安いと思った価額でも売れなかったともとれる。最低落札価額が1,714万円だった訳だから、普通に売れてもそれより安くなってしまうのだろうか。
何とも拍子抜けのような結果だったが、取りあえず競売にはならなかった。正確に言うと競売にはなったが成立しなかった、と言うのが正しいのだろうか。
とにかく思ってもいなかった結果になったので、早速三峰さんに電話をして相談に伺う事になった。
夫と二人で三峰さんのお店に相談に伺った。三峰さんのお店は駅前の良い所にあり、不動産会社としては綺麗なお店だ。飛び込みのお客様が来店しやすいつくりになっているのだが、もう夜なのでそこら辺は大丈夫だろう。
競売について今後どうなるのか、三峰さんに聞いてみた。三峰さんの話では多分3ヶ月後位に再度競売になるだろうという事だった。その際には同じ価額ではなく3割引きになるのだそうだ。つまり売却基準価額は1,500万円という事になる。
そんなにまで安くなってしまっては非常に困るので何とかならないか三峰さんに問いただしてみた。3割引きで出るのは制度なので仕方ないのだそうだ。残る手立てとしては、もう一度任意売却で頑張ってみるしかないという事だった。只、以前に相談したときにも債権者は冷たい対応だったので上手くできるかは分からないとの事だった。
どうなるかは分からないが三峰さんに頼んで2度目の任意売却をしてみる事になった。