第3話 簡単な帰還
『脱獄したのか、鬼の仔。ほう、まぁ、あの蜘蛛ごとき、脱出さえされれば簡単に倒せるというもの。仕方あるまい、ここは吸血鬼、お前に任せる。我はもう少し寝る』
「そ、蒼蛇...さ、ま?」
金髪少女は、呆然と、現れてすぐに消えた青い蛇の潜っていった池を眺める。
「どう言うことですか?カナメさん」
佑奈が俺に聞いてくるが、俺にもどう言うことかさっぱりだ。
「さぁ?」
すると突然、金髪少女な吸血鬼は、佑奈の首を掴み、言う。
「早く僕に投獄されなさい!さもなければこの子を殺すよ?」
「どーぞ、お構い無く」
俺はそう答えつつ、刀の柄に手をかける。
「は?え、ちょ、そこはこう、なんか、頑張れよ?」
吸血鬼が予想外の答えにうろたえ、
「え!?か、カナメさん!そんな、蜘蛛の時のあれはなんだったんですか!?」
と、叫んでいる。
「だってそいつ、佑奈一人でも楽勝だろ?そいつはただの幻だ、目を覚ませ佑奈」
言うなり、その吸血鬼は空気にとける如く霧散した。
「あ、あれ?」
「あの時も言ったが、還化の力は、思ったことが実現する。いい加減覚えろ」
抜刀した俺は、池まで歩き、中を覗く。
「おーい、ソーダさーん!吸血鬼倒したんで、いい加減ここから出してくださーい!」
とか言っても、なにも起こらなかった。
そう言えば寝るって言ってたな。
「佑奈、この池はどうやら外の世界と繋がってるらしい。あとから俺も行くから、先に行っといてくれ」
俺は適当にそう言って、佑奈に思わせる。
ここから帰れると。
「本当ですか!?やったー!」
そう言って迷いなく池に落ちる佑奈。
ちょろいな、佑奈。
「還化の能力は、思考の実現。だから、ここから帰れると思えば帰れるようになる。はは、チート過ぎ楽勝じゃん」
俺もそう言いながら、池に身を投げるのであった。