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異世界神地録  作者: 記角ルン
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第1話 鬼と少女と蜘蛛と。

 目が覚めた。


何度目の今日だろうか。


 相変わらず、目の前に鳥居があった。四方八方、俺を閉じ込めるように。


 鬼のとり憑いた体は、死ぬこともなく、ただ腹を空かせていた。


「きみ...誰?」


 静かだった空間に、いきなり自分以外の声を聞いて、俺は回りを見回す。


「腹が減った...誰でもいい、なにか食わせてくれ...」


 死んだような声で、その声に言う。


 ぽつん、ぽつん、ぽつん。


 目の前の鳥居の向こうから、水溜まりを歩く足音が聞こえた。


「こんなものでよければ」


 そう言って現れたのは、銀髪赤眼の少女だった。


「何でもいい、早くそれを寄越せ」


 俺は乱暴に言う。


 持ってこられたのは弁当だった。


 俺は貪るように、残さず食べた。


そんな俺を、彼女は笑顔で見つめる。


「?俺が怖くないのか?」


 俺は檻の中から少女に問う。


「怖いよ。角はえてるし、鱗もあるし。でも...」


 彼女は一瞬言い止まり、続きを話す。


「とても、あなたが悪い人には見えない」


 彼女の手が檻に触れると、不思議なことに、それは腐って消えた。


「俺にそんなことを言うやつは、お前が初めてだ」


 そう言って俺は立ち上がる。


「俺の名前はカナメ。よろしくな」


「神代佑奈です。こちらこそ、よろしくお願いします、カナメさん」


 遅い、いや、今が適切だったのかもしれないタイミングで自己紹介を終わらせる。


「ここで話すのもなんだし、一度ここを離れようか。守り主にも気づかれただろうし」


「守り主?」


 不思議そうな顔で佑奈が問うのに対し、俺は真剣な声で答える。


「簡単に言うと、元々俺は生きていてはいけない存在なんだ」


 そう言いながら、佑奈の手を引き、彼女が入ってきた鳥居に向かう。


 俺は、薄く水の張った石畳を滑るように走る。


「カナメさん、待って、速いです!」


 俺は、そんな佑奈を、面倒くさそうに無理矢理に背負う。


「何年も閉じ込められていた俺より遅いとは。我慢しろ、すぐに終わる」


 いくら走っただろうか。体力に限りがないとでも言うかのように走り続けていると、後ろからドタドタという足音が聞こえてきた。


「な、なんなんですか、これ!?」


「守り主だ」


 俺はそう簡潔に答える。


「このまま逃げ続けても意味がないか。佑奈、守り主を殺す、だから邪魔になら無いよう、そこで待ってろ」


 そう言うと、俺は佑奈を降ろし、振り返る。


 ドタドタドタドタ。


 俺は、迫り来る敵との戦闘に備え、構える。


 守り主。俺の中にいる鬼を監視する、監視者。故に、自然と鬼より強い相手が選ばれる。つまりは、ボスへと昇格した虫や獣、人、さらには神や悪魔までもがその対象になる。


 闇の向こうからヤツは姿を現した。


 その姿を形容するならば、それは蜘蛛が適切か。ただ、普通の蜘蛛と違うのは、その大きさである。蜘蛛の特性として、俺が挙げられるのは四つだと推測される。


動体視力、筋力、そして糸。蜘蛛の糸は、その体内では液体として存在し、空気に触れることで固まる性質をもつ。つまり、勢いをなくして吐き出せば、糸以外の形で出現させられるということ。そして、さらにはそれを食べることで体内に戻し、再利用する。まさにエコ。


蜘蛛の糸には二種類あり、横糸と縦糸に分けられる。横糸には粘着球があり、縦糸にはそれがない。このサイズでそれに捕まると、まず抜け出せないと考えていいだろう。


そして、この糸は自然界で最高の固さをもつと言われている。


 どちらにしろ、あれに捕まれば厄介極まりないのは確かだ。


『そこの娘を渡してもらおうか』


 守り主(以後蜘蛛とする)が俺に言う。


「嫌だね、こいつは命の恩人なんだ、渡すわけにはいかない。それより、ここから出たい。どうすればいい?」


『教えるわけがないだろう?』


 知らない間に張り巡らされていた蜘蛛の糸が、意思を持たせる能力により、佑奈に襲いかかるのを、俺は視認した。


「佑奈っ!!」


間一髪で佑奈を蜘蛛の糸から救いだす。


『ほう、今のを読んでいたのか?さすがだな。だが、その程度のことで、私に敵うとでも?』


「カナメさん、何?あのクモ」


 佑奈が俺に問いかける。


「悪いが、話は後だ」


 俺はそう言うと、縮地法を使って一瞬で間合いを詰め、同時に手刀を繰り出す。


放たれたそれは、鈍い音をたてて、黒くて固い外殻にめり込む。


しかし、その隙にあの糸が佑奈へと殺到する。


 だがしかし、それを知っても俺はあえて助けにいかない。代わりに、俺は糸の射出口を潰す。


 上に空気の揺らぎを感知した俺は、再び縮地を使って蜘蛛の下顎に迫る。


だが、蜘蛛の動体視力はそれをとらえた。


蜘蛛の前足が俺を襲い、遠くに投げ出される。


 蜘蛛の特性その四、ずる賢い。


 投げ出されたそこでは、佑奈が白い蜘蛛の糸にからめられていた。


「佑奈、それは幻覚だ、目を覚ませ」


「え?...あれ?!どうして?!」


 俺が彼女にそう告げると、その糸は空気にとけるようにして無くなった。


「いいか?お前の場合、そう思えばそれは実現する。恐らく、環化という特性魔法をお前は所持している。だから、安心しろ、お前は捕まったりしない。絶対だ」


 俺は振り返らずに言うと、どこからともなく刀を出現させた。


『な...あり得ない、そんな馬鹿なことが...!』


 蜘蛛がそう言って地団駄を踏む。


(突進の前兆だろうか)


 俺はそう考えて、佑奈を抱き上げる。


 直後、蜘蛛は突進を開始した。


俺はそれを空中に跳んで避した。


「そろそろ終わらせる!」


 そして俺は、右手に握った刀で、蜘蛛を斬った。


 次の瞬間、この世界が発光し、音もなく消え去っていった。

























なんか色々突っ込みたいところもあるのはわかる。


けれど、そういう仕様だと割りきってほしい。


.........無理な方は、続きを読まない方がいいと思う。


いや、読んでほしいのは読んでほしいんだが......。


ま、そういうことですからよろしくお願いします。


記角キスミ

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