悲劇、再び
お待たせしました。
《霊脈との接続を開始します》
——!?
広大な仮想世界を流れる霊脈。ソレと繋がり、頭の中にナニカが溢れ出す。
これは……——の記、オク。私の に眠——
《接続を完了しました》
「——あれ?」
次の瞬間には頭が綺麗さっぱりクリアになっていた。
今さっき、頭の中で何かに繋がったと思った瞬間。何か、膨大な情報のようなものが溢れ出して頭の中が真っ白のような虹色のような……駄目だ。思い出せない。というか、思考が上手く回らないというか、繋がらない。
確かに、何かを見たというか感じたというか。大事な何かに触れた気がするんだけど。
「あー! もー!」
全然考えが浮かんでこない!
まるでついさっきまで出掛かっていたくしゃみを無理やり止められられたような、なんとも言えない微妙な感覚を覚える。別に身体的にも精神的にも問題は感じないんだけど。妙な気持ち悪さだけがある、気がする。
「うー」
駄目だ。今は狩りを続ける気分じゃない。
一旦セーフティエリアに戻ろう。ログアウトして一服でもしてこないと無理そうだ。
ログインしました。
とりあえずコーヒーを飲んで落ち着いてきましたよ。思い切って、親が御歳暮で貰ったと贈ってくれた高級豆を挽いてみました。リラックス効果はあった、……と思いたい。あれ、1ポンド単位で云千円らしいんですよね。グァバの木が何たら、とか言ってたそうですが。
いやいや、そうじゃない。リアルの事は置いといて、改めて現状確認を。
〈巫女〉職業レベル8スキル、【霊脈接続】。
説明を読む限りでは、MPの回復速度を上げるパッシブスキル。確かに、何かに繋がり、何処からか力が流れ込んできているのを感じます。この繋がっているのが霊脈とやらで、流れ込んできているのがMPなんでしょうか。
「うーん。速い」
とりあえず、無駄に〈ハラエノミソギ〉や〈コンパクカッセイ〉を使ってMPを減らしてから、MPの回復速度を見ていますが。
元々巫女は高いMNDの影響で全職業の中でも特にMPの自然回復速度が速い方らしいのですが、【霊脈接続】が付いてからはそれまでの1.2倍くらいの速さにはなっています。
これでまだ『自然回復速度上昇小』。つまり、中や大、下手すれば特大や極大なんかも控えている可能性がある訳で。
レベル表示がないので、通常のパッシブスキルのような成長の仕方ではなさそうなんですが、先々の事を考えると期待できるような恐ろしいような、なんとも言えない気分が半々です。
「【巫術】の燃費の悪さはこのスキルが前提にあったからなのかなぁ?」
高速で回復するMPで味方を支援していく後衛職。
なるほど。コンセプトとしてはあり得るかもしれません。ついでに、LPを単純に回復する魔法がないのもこれでとりあえず理由が付きますね。
MPの管理はあらゆる魔法職にとっては重要問題です。
自然回復が機能する静止状態である必要があるとはいえ、MPが高速で回復するという事は余裕を持ち、安定した行動が取れるようになります。具体的には弱い回復魔法や攻撃魔法をバンバカ飛ばしたり、ある程度消費を無視して大威力の一発を放ったりと、より多彩な戦術を選択出来るようになります。
しかし、このゲームの運営は底意地がわる——失敬、出来るだけバランスを壊さないようにしているようなので、そのような突き抜けた性能を与えないようにしていると思われます。
つまりどれだけレベルが上がっても、巫女は普通の回復魔法を覚える事はなさそうなんですよね。ええ、分かっていましたとも。
……ちくせう。
さて、気を取り直して蜘蛛狩りを続けますか。一度ログアウトしたせいで結構な時間を消費してしまっていますし。
日は既に落ち、周囲は真っ暗。【暗視】があるとはいえ、夜間の戦闘は足元が怪しくなるし危険も多い。気を引き締めていきますか。
っとと、セーフティエリアを出る前にステータスを割り振りしておかないと。
忘れちゃいけません。まあ、今はVITに全て振るだけなのですぐに終わるんですが。
STR:19
VIT: 17 → 19
AGI:15
DEX:14
INT:24
MND:30
うーん……MNDに追い付くにはまだまだ遠そうだなぁ。
まあ、レベルを上げる目的があるのはモチベーション維持の為にも良い事だし。よし、頑張ろー。
《【格闘】のレベルが上がりました!》
《【暗視】のレベルが上がりました!》
《〈ハラエノミソギ〉のレベルが上がりました!》
《〈ミノカミ〉のレベルが上がりました!》
《〈シンキジュンカン〉のレベルが上がりました!》
ふむ。〈低級アルケニーシルク〉の糸玉ですが、目標数の9つをなんとか達成しました。
休憩を挟みつつも森の中層をひたすら走り回って、ゲーム内時間で6時間。80匹くらい、お休み中の蜘蛛さんを更に深い眠りに葬らせて頂きました。
スキルのレベルも色々上がりましたし、とても満足です。
今回は森の深部にはなるべく近付かないようにしました。
熊と蜘蛛、双方のボスが既に現れている筈ですが、今回の目的はボス討伐ではありませんし、ボス達の縄張りがどれ位広いかも分かりません。深部の方が蜘蛛が多いのですが、安全策を採る事に。
中層は蜘蛛の分布が疎らな為に時間が掛かりましたが、深部でボスやいるかもしれない未知の魔物に遭遇し、それ以上の時間を食っていた可能性もあります。それを考えれば、多少時間が掛かるのもやむを得ません。
まあ、中層は中層で〈シババット〉の数がとても多く、それなりに時間を掛けさせられたのですが。
なんにせよ目的は達したので、街に戻りましょう。流石に夜も明けてしまいましたし。あー、疲れたー。
まあ、その前に。
今立っている枝の真下を歩いている猪親子を——
「ピ、ギィッ!?」
——狩ってから、なんですが。
「フゴッ!? 」
名前 : 饕餮 / TOUTETU
種族 : 鬼人Lv. 4
職業 : メイデンLv. 8
称号:
『虎狩り』[特殊]
『危難を凌ぎし者』[特殊]
『戦神の承認者』[特殊]
『悟武臨の友』[特殊]
『戦鬼』[種族]
ステータス
ATK:+2
DEF:+16
MBS:±0
RES:+10
STR:19
VIT: 19[+5]
AGI:15
DEX:14[+2]
INT:24
MND:30
ボーナスポイント:0
使役契約:御丸(種族:ロリポリ)
装備アイテム
・[武器装備解除中]
・〈網蚕糸の袖無し服(巫女装束風)〉
・〈網蚕糸の袴ズボン(巫女装束風)〉
・〈重金の髪留め〉
・〈跳ね兎の革足袋〉
・〈異界の道具袋〉
イベントアイテム
・〈宝冠の欠片〉×2
種族アビリティ
・【怪力乱神】
・【鬼出電入】
職業専用スキル
・【霊脈接続】
習得魔法
【巫術】Lv. 7
〈ハラエノミソギ〉Lv. 2 → 3
〈ナギノミカガミ〉Lv. 3
〈ミノカミ〉Lv. 1 → 2
〈ツクモツキ〉Lv. 4
〈コンパクカッセイ〉Lv. 4
〈トラノカミ〉Lv. 1
〈セイキテンペン〉Lv. 3
〈シンキジュンカン〉Lv. 2 → 3
〈イノカミ〉Lv. 2
〈アラミタマ〉Lv. 2 → 3
オリジナルアーツ
〈雀撃ち〉Lv. 1
〈竜尾の一振り〉Lv. 2
所持スキル
【棒術】Lv. 13
【震脚】Lv. 13
【暗器術】 Lv. 7 → 9
【掴み】Lv. 9
【鉄扇術】Lv. 8
【格闘】Lv. 11 → 13
【短剣術】Lv. 1
【呪術】《ロック》
【付与魔法】 《ロック》
【憑依魔法】《ロック》
【細工】Lv. 3
【料理】Lv.1
【テイム】Lv. 2
【鑑定】Lv. 3
【解析】Lv. 6
【伐採】Lv. 1
【舞踊】Lv. 8
【二刀流】Lv. 2
【パリイ】Lv. 3
【恐怖と魅惑の微笑】 Lv. 2
【ダッシュ】Lv. 8
【アクロバット】Lv. 10
【食材への眼力】Lv.1
【暗視】Lv. 2 → 5
【言語理解】Lv. 1
【鬼人語】Lv. 1
【神幻語】Lv. 1
【古代魔法言語】Lv. 1
【精霊語】Lv. 1
【魔導言語】Lv. 1
スキルポイント:32 → 43




