ジャイアント・グラスランド
「あ、——のことを説明するのを忘れてたでござる」
「ん? ……まあ、大丈夫だろう。昼夜関係なく混じってはいるが、確率は百に一体いるかどうかだ。それに刺激しなければアレは無害なのだし」
「そういうのを旗が立つ、って言うんじゃないのかのう。それより、そろそろ降ろしてくれんか?」
「駄目です」
「反省するでござる」
さて、気を取り直していこう。
おまるを走らせ、マップでちょいちょい方角を確認しつつ、西の海岸へと向かっている訳ですが。
暫くして、再び地面が赤茶けた色合いから緑溢れる大地——草原へと変わりはじめた。
それに合わせるかのように、視界に入るMOBも変わり、羊や鹿、牛や馬など草食動物が中心となっている。
ただ……
〔マッシヴシープ〕Lv.3
動物 パッシブ
地上 ???
〔ディアパワード〕Lv.2
動物 パッシブ
地上 ???
〔マッスルホース〕Lv.3
動物 パッシブ
地上 ???
〔モートレス〕Lv.???
動物 パッシブ
地上 ???
以前も見かけたゴツい羊に加え、どいつもこいつもやたらデカい上にムッキムキなんですが……特に、最後の牛。
見た目はホルスタインだけど、あれはどう見ても肩の高さが5メートルはあるよね?
マンモス級の大きさの牛とか何の冗談ですか。しかも名前が〔モートレス〕って、牛の鳴き声のモーと要塞のフォートレスを掛けてます?
あれと戦う?
無理無理むりムリ!
いくら何でも大きすぎるし、何より紫色でしかもレベル表示が見えない。明らかな格上だ。
多分、あれがこのフィールドのボスなんだろう。周りに半分くらい小さい?〔モータンク〕なる牛がいっぱい群れているというのも恐ろしい。
というか、フィールドにいるほとんど全てのMOBが群れてるんですけどね。
群れてないのはハグレモノっぽい数頭の馬だけ。
そいつらも、他の群れてる馬たちに比べると大きな体格をしてるように見えるのだから、これまた恐ろしい。
そりゃ、ここにいるのがあんなのばっかりなら平和ですよ。
一番小さい羊ですら小型自動車位あるし。馬は世紀末覇者が乗ってそうな大きさだし、鹿は一般的な牛と同サイズ。牛に至っては成獣の象と変わらないのが、一番小さいという規格外。
こんなの、あのワイルド・スミドロンだって怖がって近付きませんよ!
でもまあ、掲示板の情報やゴブリンの村で聞いていた通り、性質自体はどれも大人しいようだ。
寝ているか、草を食べているかのどちらかで、おまるが横を通りすぎても、ちらりと見るだけで完全にスルー。
うん、お互い平和に行きましょー。
所で、こんな巨獣だらけなのに、この草原がどうして食い尽くされないのか。
その答えは簡単。
〔マキシマグラス〕Lv.1
魔物 パッシブ
地上 地中 ???
これまた規格外に大きな草がそこかしこに生えているからです。
おまるが半分隠れる背丈と言えば、その異様さが分かるだろう。——というか、この草って魔物なの!?
名前からして、何か生物を巨大化させる成分か魔力でもあるんだろうか?
「……おまるの餌にちょっと集めておこうかな」
ウェンディコの露店で買ってきておいた木材採集用の鉈で刈れるかな?
草が生えてる根元の太さは私の二の腕くらいあるけど。
《【掴み】のレベルが上がりました!》
《【解析】のレベルが上がりました!》
《これまでの経験により、【短剣術】、【伐採】を習得しました!》
《 職業レベルが上がりました! ボーナスポイント2pt獲得しました。ステータスに割り振りして下さい。習得可能な【巫術】があります。一つ選択してください 》
《 〈御丸〉の種族レベルが上がりました! ボーナスポイント5ポイントを獲得しました。ステータス画面にて割り振りして下さい 》
《【テイム】のレベルが上がりました!》
ちょっと待って!
一遍に色々ありすぎですってば。
えっと、まずはスキルの【掴み】がレベルアップと。まあ、草の根元掴んで、鉈をガスガス振り下ろしてたしね。
【解析】もレベルアップ。試しにマキシマグラスを見てみると、属性表示が追加されている。ちなみに土属性。
私は属性魔法持ってないから恩恵は少ない? いやいや、相手が使う可能性がある特殊能力の属性が分かるだけでも十分です。
次は経験によるスキル習得、と。【短剣術】に【伐採】?
【伐採】は分かる。
さっきまでやってたし。流石に50株も刈ってれば、ね。もっとも、一株につきドロップは葉っぱ一枚としょっぱいから微妙だけど。
えーと、【短剣術】か。
包丁が短剣扱いっていうのは聞いたことがあるけど。……もしかして鉈も?
いや、これは小型の鉈だからかな。武器として使えるような大型の鉈は流石に剣なり斧なりにカテゴライズされる、筈?
次は職業レベルが上昇と。ステータスは筋力値と、キリが良いので精神値に割り振り。精神値はついに30に到達。なんかもう、魔法で大ダメージ貰う事がある気がしない。
ついでにスキル欄を種類毎に並べ直しておこう。
しかし、マキシマグラスの刈り取りは生産か戦闘扱いなのか、どっちなんだろ……
ん? 【巫術】を一つ選択?
どうやら、二つある巫術の内一つだけを選択し習得するという、新しいパターンのようだ。
「〈アラミタマ〉と〈ニギミタマ〉?」
〈アラミタマ〉
荒ぶる神の力を降ろし、あらゆる苦痛が強化される結界を張る。
ダメージ増加結界。
〈ニギミタマ〉
和する神の力を降ろし、あらゆる苦痛を和らげる結界を張る。
ダメージ軽減結界。
※どちらか一方のみ習得可能。
うん。両極端ですね。
攻めるか守るか、選べと。
運営的には、巫女というのは戦闘支援がメインの職業なんでしょうね、きっと。
私は我が道を征きますけど。
どっちを取るか? そんなの決まってるじゃないですか。
最後に。
「おまる! どんな危ない成分入ってるか分からないんだから、勝手に食べちゃダメ!」
「キュゥ……」
全く、このいやしん坊さんめ。まだ安全か、調べてないんだからね?
しかし、マキシマグラスを食べて種族レベルが上がったって事は、さっきまでの刈り取りはやはり戦闘扱いだったんだろうか……?
とりあえず、おまるのステータスは長所を伸ばす事にしているので、筋力値に+1、頑強値に+2、敏捷値に+2する。これで敏捷値は二桁に、頑強値は30の大台に。
物理攻撃はおまる、魔法は私。大抵の攻撃はなんとかなるだろう、多分。
というか、何故【テイム】のレベルが上がってるの?
ふむ。掲示板で調べてみると、どうやら【テイム】のスキル経験値はペットの経験値とレベルアップに依存しているらしい。ペットが強くなれば、【テイム】のレベルも上がり、新しいペットをテイムしたり、既存のペットがより強くなったりするんだそうな。
そういえば、確かテイムはあと一枠残ってたような……
うーん、今度は攻撃に優れた子でも探してみようかな?
「さあ、そろそろ行くよ」
暫く休憩を取ってから、おまるの上に跳び乗る。
ん? なんか違和感が……気のせいかな?
「キュ」
更に西へ、目指すは海だ。
「急いで! この草原から離れるよ!」
「キュィー!」
この草原が維持されてる本当の理由が分かったよ!
マキシマグラスって地面の下は球根だったんですね。
ただし、足みたいな根とでっかい口があるけどな!
日が暮れ、夜になって。
巨獣達はいつの間にか居なくなり、ハグレ馬だけが残っている。
ハグレ馬もパッシブ状態なので安心してのんびり移動を続ける。
「ブルルッルゥ——ヒッヒヒィィンッ!?」
突然、夜を切り裂く馬の嘶き、いや悲鳴が響き渡った。
「な、何!?」
声の方向を見ると、筋肉隆々の巨馬と、それに絡み付く無数の根と葉っぱが。
「なんだあれ……」
根と葉っぱを視線で辿ると、巨馬と同じくらいに大きな球根が『立って』いる。
球根は根を足のように束ねて動かして地上を移動し、巨馬に開いた巨大な口でかぶりついている。
〔マジキマグラス〕Lv. 2
魔物 リアクティブ
地上 地中 土属性
……ここ、危険な生物は居ないんじゃなかったんですか?
はっ!
「おまる、とりあえず逃げるよ!」
この場——ううん、この草原から。
全速力で!
「キュ、キュー!」
……ふぅ。なんとか、周辺にマキシマグラスが生えていない場所まで離脱できたようだ。
しかし、どういう事だろう?
芙蓉ちゃんやゴブリン達が嘘を言うとは思えないし。マップ攻略情報スレでも、マキシマグラスが動き出して他のMOBを襲うなんて話は書いてなかった。
夜だけの限定?
ゴブリンは危険な魔物が多い夜のフィールドには出ないだろうし、先行者達はたまたま夜のマキシマグラスと戦闘にならなかった?
うーん……分からないなぁ。
とりあえず、夜はマキシマグラスに近寄るのは避けた方が良さそうだ。
「行こっか」
今日は休まないで、海まで抜けてしまおう。
このフィールドには長居しない方が良さそうだ。
名前 : 饕餮 / TOUTETU
種族 : 鬼人Lv. 3
職業 : メイデンLv. 6 → 7
称号:
『虎狩り』[特殊]
『危難を凌ぎし者』[特殊]
『戦神の承認者』[特殊]
『悟武臨の友』[特殊]
『戦鬼』[種族]
ステータス
ATK:+7
DEF:+16
MBS:+3
RES:+10
STR:16 → 17
VIT:12[+5]
AGI:13
DEX:13 [+2]
INT:23 → 24
MND:27 →30
ボーナスポイント:0 →2 →0
使役契約:御丸(種族:ロリポリ)
装備アイテム
・〈紅鋼樹の六尺棒〉
・〈古鉄扇〉×2(二刀流)[装備解除中]
・〈網蚕糸の袖無し服(巫女装束風)〉
・〈網蚕糸の袴ズボン(巫女装束風)〉
・〈ファーコートドレス『ルプス・コローナ』〉
・〈重金の髪留め〉
・〈跳ね兎の革足袋〉
・〈異界の道具袋〉
イベントアイテム
・〈宝冠の欠片〉×2
種族アビリティ
・【怪力乱神】
習得魔法
【巫術】Lv. 6 → 7
〈ハラエノミソギ〉Lv. 2
〈ナギノミカガミ〉Lv. 2
〈ミノカミ〉Lv. 1
〈ツクモツキ〉Lv. 3
〈コンパクカッセイ〉Lv. 3
〈トラノカミ〉Lv. 1
〈セイキテンペン〉Lv.1
〈シンキジュンカン〉Lv. 1
〈イノカミ〉
〈アラミタマ〉 New!
オリジナルアーツ
〈雀撃ち〉Lv. 1
〈竜尾の一振り〉Lv. 1
所持スキル
【棒術】Lv. 12
【震脚】Lv. 11
【暗器術】 Lv. 5
【掴み】Lv. 6 → 7
【鉄扇術】Lv. 8
【格闘】Lv. 6
【短剣術】Lv. 1 New!
【細工】Lv. 3
【料理】Lv.1
【テイム】Lv. 1 → 2
【鑑定】Lv. 3
【解析】Lv. 4 → 5
【伐採】Lv. 1 New!
【舞踊】Lv. 7
【二刀流】Lv. 2
【パリイ】Lv. 3
【恐怖と魅惑の微笑】 Lv. 2
【ダッシュ】Lv. 3
【アクロバット】Lv. 4
【食材への眼力】Lv.1
【暗視】Lv. 2
【言語理解】Lv. 1
【鬼人語】Lv. 1
【神幻語】Lv. 1
【古代魔法言語】Lv. 1
【精霊語】Lv. 1
【魔導言語】Lv. 1
スキルポイント: 13 → 16
名前:御丸/OMARU
種族:ロリポリ Lv. 3 → 4
属性:土
従属契約:饕餮
STR:13 → 14
VIT:28 → 30
AGI:8 → 10
DEX:3
INT:2
MND:3
スキル:
【突進】Lv. 5
【防御体勢】Lv.5
【身体異常耐性・中】
【重心安定】
【何でも捕食】
【環境適応】




