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ゴブリンの村

遅くなりましたが、どうぞ。

「饕餮殿……」


 おまるに乗って逃げる事、30分。

 ようやく、追跡し続けてくれたワイルド・スミドロンを振り切った。


 途中、猛ダッシュを掛けてきて追い付かれそうになったけど、おまるに【突進】を再使用させる事で再度引き離し。なんとか事なきを得ることが出来た。


 おまる、よく頑張りました。



「鬼でござるよ……」


 え?

 途中見つけた、ランドバッファローの群れとガストコヨーテの群れが戦闘してる横を掠めて、ワイルド・スミドロンを突っ込ませただけじゃないですか。

 あれで三つ巴の乱戦になったお陰で、引き離せたので、問題なしですよ。


「緑鶏冠仙人掌の群れの事でござる!」


 ああ。振り切った後で、グリーン・モヒカクタスの大きな群れを見かけたんですよね。


「あれはひどい、でござるよ」


 おまるに群れのど真ん中に【突進】させて、跳ねたり轢いたり薙ぎ倒させたりして物理的に群れを踏み潰しただけじゃないですか。


「何度も往復して、踏み潰させたでござろう……? さ、最後は数が三割ほどにまで……」


 そんな、涙目に震えた声で呟かなくても……


「お陰でおまるがレベルアップできました。やったね、おまる」


「キュー!」


「やっぱり、鬼でござるよ!」


 むぅ、失敬な。


 実際は50体近くの大きな群れが出来てたから、間引きしただけなんですけどね。

 あまりに群れの数が膨れ上がり過ぎると、強力な変異個体が生まれたり、群れが暴走を始めたりするそうですし。




「このまま、真っ直ぐでいいの?」


 とりあえず、言われた通りのルートで走らせてるけど。

 相変わらずの荒れた大地が続くだけで、それらしい村はおろか建造物すら見えない。こっちで大丈夫?


「大丈夫でござる。あの、丘の上に生えている一際大きな仙人掌(さぼてん)の所まで行って下され」


 指差された方向を見ると、確かにまばらに生えている他のサボテンに比べ、非常に背が高い一株がある。

 ……いや、あれ大きすぎません?



 天を突くように、縦一直線に伸びたサボテン。どう見ても高さ10メートルは超えているんですが。どうすればこんなに大きく……


「あれが現在の村の目印にござる 」


 近くまで近付くとはっきり見えてきたそのサボテンは、全体的にかなり大きく、普通の木と変わらないサイズをしている。

 天辺に一つだけ、黄色い花が咲いているのがなんとなく可愛らしいけど。

 これが動き出したりしたら、こわいなー。まあ、大丈夫かな。この辺りは魔力が低い地域らしいし、——モヒカンもないし。



 巨大サボテンの横を通り過ぎ、丘を越える。

 すると、地面が丘を下った先から途切れていた。


「また、崖?」


 おまるから降りて崖に近付き、下を見下ろしてみる。

 レッド・モヒカクタス・ブロイラーに追われて飛び降りた崖ほど高くないし、そこまで急でもない。

 岩の出っ張りや棚のような部分も多いから、ロッククライミングの要領で下る事も可能だろう。


「あそこでござる」


 芙蓉ちゃんが指差す先を見ると、沢山の木造の家が並ぶ村が見えた。

 古き良き日本の田舎の風景のように、木造建築の家々が数え切れない程に建っている。


「あれが芙蓉ちゃん達ゴブリンの村?」


「然り」


 へー、流石に氏族全員で放浪してるだけに、すごく大きい集落だなー。ちょっとした町と同じ位の大きさはあるかも。


「これだけ大きいと、魔物とか危なくない? 大丈夫なの?」


「ここから先は海岸付近まで大人しい種類しかおらぬし、凶暴な魔物は縄張りから外れてまで崖を下りてこぬ故、大丈夫なのでござる」


 なるほど。

 そういう、魔物の生息域や習性も考えて、村は作られてる訳ですね。


 ちなみに、どの家も木材がパーツ毎に作られており、簡単に分解したり組んだりできるようになっているそうな。

 放浪で何度も拠点を作り直すゴブリンの門?の氏族だからこその技術ですね。



 前の崖ダイブでちょっとトラウマになったのか、崖に近付こうとしないおまるの頭を撫でてから、〈夢見る揺籠〉に戻す。


「では、ここから北へ半時間ほど暫し歩いた所に、下へ降りる階段があるでござる。そちらから降りますので」


 こちらに振り返った芙蓉ちゃんが太陽がある方とは逆の方向を示す。


 え、30分も歩くの?

 めんどくさいよ。


「そんな遠くまで行く必要はないでしょ?」


「え?」


 芙蓉ちゃんの不意をついて足を払い、体勢を崩す。

 さっと身体を支え、再び抱き上げた。いわゆるお姫様だっこだ。


「え?」


 そのままで崖に近付き、眼下の風景を見下ろす。


「何するでござる? 何する気でござる! 何をす——ま、まさか!?」


 いえーす。

 うぃー、きゃーん、ふらーい!


「いっ——ゃああぁぁぁぁっ!」


 はっはー! 流れる風が気持ちいいぜー!



「大丈夫?」


「……」


 返事がない。目の光が死んでいる。


「……はっ!」


 あ、復活したみたい。よかったよかった。


「酷いでござる。怖かったでござる。チビりそうになったでござる! 昇天しかけたでござる!」


 えー。ちょっと崖から山羊みたいにぴょんぴょん駆け降りてっただけじゃないですかー。


「なんでくるくる回ったでござる? なんで宙返りしたでござる? なんで拙者を放して一瞬浮かせたでござるかー!?」


 わーわー叫ぶ芙蓉ちゃんが面白くて、ちょっとアクロバティックな降り方しちゃいました。てへぺろ。


「こんなの絶対おかしいでござるよ!」


 芙蓉ちゃん、それ以上はいけないよ。



 泣き怒る芙蓉ちゃんはさておき。


 とりあえず、まずはこの周りを取り囲んでいるゴブリンさんたちの警戒を解くのが先かな。





「はっはっはっはっ! まさか、あの崖を飛び降りて村に直行してくる者がいるとは!」


 芙蓉ちゃんに事情を話して貰い、なんとか警戒は解いていただけました。

 ただ、芙蓉ちゃんの説明はどこもちょっと表現がオーバーでしたね。



「それで、村に入りたいとな?」


 目の前に立つ、白髪に左目に眼帯を付けた老齢のゴブリンは村を取り仕切る長老の主水(もんど)さん。

 素手による古い格闘術を得意としており、人間の約二倍の寿命があるというゴブリンとしては齢180歳という超高齢ながら最強の(つわもの)——戦士の称号、侍みたいなもの——なんだとか。


「はい。芙蓉ちゃんの説明にあった通り、ゴブリンという種族への興味と交易が目的です」


 ふむ、と暫し考え込んでから主水さんは鷹揚に頷いてみせた。


「良かろう。別に他の種族や氏族との交流を絶っている訳でもなし。何より同胞の恩人となれば、氏族を挙げてもてなすのが道義というものよ」


 あれ、なんか嫌な予感が……


「いえ、私は普通に交流が出来れば、別に構いませんので……」


「安心せい。けして無下に扱いはせぬよ」


 いえ、そうではなくてですね。


「皆の者、宴の用意じゃ!」


 主水さんのその言葉に、一斉に「祭りじゃ!」「宴じゃ!」「酒が呑めるぞー!」と村の中へと走っていくゴブリンさん達。


 ああ、なんかとんでもない事に……


「饕餮殿、申し訳ないでござる。悟武臨族は大の宴好き故、事ある毎に騒ぐのでござる」


 行商人や旅人が訪れる度に、宴だ祭りだと騒ぐのはゴブリンも含めた亜人全体が持つ風習なんだそうな。


 ……お祭りが終わってからまた来るので、出直してきていいですか?


「諦めて下され」


 芙蓉ちゃん、そんな遠い目をして言わないで。


「3日ぶりのお客人ぞ。迎賓の館へ案内(あない)せよ!」


 やめて下さい。放して下さい。担ぎ上げないで——

饕餮はステータスに変化無し。


 名前:御丸/OMARU

 種族:ロリポリ Lv. 2 → 3

 属性:土

 従属契約:饕餮


 STR:12 → 13

 VIT:25 →28

 AGI:7 →8

 DEX:3

 INT:2

 MND:3


スキル:

 【突進】Lv. 3 → 5

 【防御体勢】Lv.5

 【身体異常耐性・中】

 【重心安定】

 【何でも捕食(たべる)

 【環境適応】

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