表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/103

決着

どうぞ。

 視界が赤い焔に包まれた。


 全身に、衝撃と共に無数の刺すような小さな痛みが走る。


——熱い!


「くぁ……っ!」


 纏わり付く焔を振り払いながら、大きく後ろへ跳ぶ。


「一体、何が……!?」


 焔が来た頭上に見上げると、女王蜘蛛が宙に浮かんでいた。

頭上を覆っている蜘蛛糸のドームから糸で吊り下がっているらしく、逆さまになった状態でこちらを見ている。


 その両腕の爪の先には真っ赤な二つの焔の塊が浮かんで——


「やっば!?」


「キュあアァっ!」


——ぶん投げてきた!


 慌ててバックステップし、更に横に跳躍する。


 地面に着弾した焔の塊は一気に膨れ上がり、激しく燃え上がった。


「あれを喰らったのか!」


 女王蜘蛛をよく見ると、口元がブツブツを呟くように小刻みに動いている。

 って、おい!


「詠唱!?」


 女王蜘蛛の爪の先に小さな焔が生まれる。

 それはどんどん膨んでいき、拳大の焔の塊に変わった。


 おいおいおいぃぃ……!


「魔法使えるの!?」


 再びぶん投げてきた焔をなんとか回避する。

が、退避方向をミスって、一発避け損ねてしまった。


 着弾による爆発に巻き込まれる。


「熱っ!」


 焔を振り払いながらその場から退避。

 残りLPを確認する。



——あれ?


 思ったより、ダメージは少ないような?


 LPのゲージを見ると、現状5割強といった所。

直撃弾も含めて2発も貰ってる割りに、予想よりダメージが少ない。


「なんで——あ、そっか」


 これ、魔法だっけ。

なら、MNDが高い程ダメージは減衰されるから、そのお陰か。


 私の現在のMNDは26。

どちらかというと物理寄りの種族である鬼人でありながら、魔法寄りの種族であるフェアリーやエルフの同レベルのそれに匹敵する数値を得ている。

恐らく、職業の巫女(メイデン)が持つ特性の一つが、魔法や状態異常に対する高い耐性なのだろう。

 有り難い事に、今それが活かされた訳だ。


 しかし、油断した!

 まさか、魔法を使うなんて。

いや、あの黄金鹿のように上位の魔物なら、魔法や特殊な能力を使えるのは知ってたけど。


 ナッツスピナーの変異種という事で、魔法の有無は完全に度外視してたよ。

まあ、救いは、元々は魔法を使わない——使えない?種だから、魔法の威力もそんなに高くない点か。


「キュい?」


 思ったより、ダメージが無いのが不思議なのだろう。女王蜘蛛は魔法の詠唱を忘れて小首を傾げた。

 その仕草には余裕が見えた。

 普通に空中の敵を攻撃できる者が少ないからだろう。



 ——油断したな?


 ステップで倒木の上を跳び、走りながら周囲を旋回する。


 女王蜘蛛はまた詠唱を始めた。

魔法の焔を生み出し、投げ飛ばしはじめる。

が、着弾する頃には私は既にその場にはいない。

 女王蜘蛛自体の照準速度、魔法の焔自体の移動速度が遅い。

それなりのスピードで走り回っていれば、まず当たらない事に私はようやくだけど気付いたのだ。

 まあ、落ち着いて距離を取れば、見てからでも躱せるけど。


 そして断言しよう! こいつは馬鹿だ!

 さっきから同じペースで回っているのに、進路を予測した偏差射撃をする素振りを全く見せない。いや、見せられたら逆に困るんだけど。


 まあ、狂乱状態なんだから、そんな器用な真似は無理だよね!



 さて、そろそろ反撃と行きますか。


 女王蜘蛛に走って近づき、六尺棒の先端を倒木に突き立てる。

土台の強度は一瞬持てばいい。


 突き立てたままに走り、六尺棒をしならせてジャンプ。


 六尺棒に体重を預け、ぐぐっと身体が持ち上がるのを感じながら、空中へと飛び上がった。


「キ!?」


 棒って奴が、突くばかりが能じゃないってことを教えてやる!


 そのまま飛び上がり、逆さまの顔面に飛び蹴りを叩き込む。


「ギュぁっ!?」


 宙返りをして、体勢を整え。


 女王蜘蛛は空中に跳ね上がりながらも、両腕の爪のない所で器用に顔を抑えている。

その脚を引っ掴み、重力に身を任せる。


「さあ、地上(地獄)へ戻りましょうか?」


 増えた重量と強い勢いで、糸が千切れた。


「ギ、きギ!?」


 空中で上下を入れ替え、右腕の関節を固めながら延髄に肘を当てて地上に落下。倒木を二、三本へし折り、地面まで叩き付けさせる。


「ギひっ!」


 すぐさま背中から飛び降り、距離を取る。


 六尺棒は……見つからないから後回し。

腰の後ろから鉄扇を引き抜く。


 決めるなら、今しかない!


「【怪力乱神】!」


 体力がごっそりと減っていく感覚と共に、全身に別の力が代わりに漲っていくのが分かる。


 これが、鬼人のアビリティ!


「さぁ、決着付けようか!」


 跳躍し、女王蜘蛛に飛び掛かった。





 ピコーン!

《【棒術】のレベルが上がりました!》


《【鉄扇術】のレベルが上がりました!》


《【格闘】のレベルが上がりました!》


《【ダッシュ】のレベルが上がりました!》


《【恐怖と魅惑の微笑】 のレベルが上がりました!〉


《【アクロバット】のレベルが上がりました!》


《職業レベルが上がりました! ボーナスポイント2pt獲得しました。ステータスに割り振りして下さい。【巫術】〈イノカミ〉を習得しました!》


《イベントアイテム『宝冠の欠片』を手に入れました!》



 くふっ……ぉっ……

 まさか、あんなに時間が掛かるとは……


 女王蜘蛛からドロップを剥ぎ取り、放り出した六尺棒を探して回収する。


 そして、ばたりと倒木の上に倒れ伏した。


 後半、基本的な戦い方はナッツスピナーと似たような展開だった。

攻撃、移動手段を奪う——腕や脚をへし折り、それで殴ったり突き刺したりしながら、ダメージを蓄積させていく。人形じみているというか、異形というか、なんにせよ人間の見た目をした顔が苦痛に歪むのは、なかなか良い気分じゃないな。

 トドメは人間部分である頭の首を掴み、首を握り潰しながら捻じ折った。


 ……うん、あんまり良い感覚じゃない。でも、これはゲームだし、仕方ないか。


 しっかし、危なかった。

あと少しで【怪力乱神】が切れそうだったし。他のバフは切れてて、掛け直す暇はなかった。もし【怪力乱神】が切れていたら、押し切れずに負けていたかもしれない。

 


《運命は定まった》


《選択は成された》


《答えは示された》


《鍵は心の内にこそ——》



 インフォメーションは終わった、かな?

 空間の歪みが消え、世界が元に戻った。


 しかし結局なんだったんだろ、これ。

 イベント?

『宝冠の欠片』を持ってて、『宝冠の欠片』持ちのボスとかに遭遇すると起きるとか?


 ま、検証はだれかにのんびりして貰って、と。

 しばらくして、体力が回復したらセーフティエリアに戻ろうかな。


「ん?」


 倒木に寝そべっている顔に、影が差した。


 首だけ動かし、上を見上げてみる。


「……やぁ」


「グルゥ」


 こんにちは。

 ご機嫌いかが?


「ガァ」


 相手が右腕を振り上げた。



 あ、ちょっと待っ——!

名前 : 饕餮 / TOUTETU

種族 : 鬼人Lv. 3

職業 : メイデンLv. 5 → 6


称号:

『虎狩り』[特殊]

『危難を凌ぎし者』[特殊]

『ウェンディコの問題児 』[特殊]

『戦神の承認者』[特殊]

『戦鬼』[種族]


デスペナルティ【05:00:00】

ステータス

 ATK:+5

 DEF:+16

 MBS:+0

 RES:+10


 STR:15【-8】

 VIT:11[+5]【-6】

 AGI:13【-7】

 DEX:13 [+2]【-7】

 INT:21 → 23【-12】

 MND:26 →27【-14】


ボーナスポイント:2


使役契約:御丸(種族:ロリポリ)


装備アイテム

・〈紅鋼樹の六尺棒〉[装備解除中]

・〈古鉄扇〉

・〈網蚕糸の袖無し服(巫女装束風)〉

・〈網蚕糸の袴ズボン(巫女装束風)〉

・〈ファーコートドレス『ルプス・コローナ』〉

・〈重金の髪留め〉

・〈跳ね兎の革足袋〉

・〈異界の道具袋〉


イベントアイテム

・〈宝冠の欠片〉×2


種族アビリティ

・【怪力乱神】


習得魔法

【巫術】Lv. 5 → 6


〈ハラエノミソギ〉Lv. 2

〈ナギノミカガミ〉Lv. 2

〈ミノカミ〉Lv. 1

〈ツクモツキ〉Lv. 3

〈コンパクカッセイ〉Lv. 2

〈トラノカミ〉Lv. 1

〈セイキテンペン〉Lv.1

〈シンキジュンカン〉Lv. 1

〈イノカミ〉New!


オリジナルアーツ

〈雀撃ち〉Lv. 1

〈竜尾の一振り〉Lv. 1


所持スキル

【棒術】Lv. 11 → 12

【震脚】Lv. 11

【舞踊】Lv. 7

【暗器術】 Lv. 5

【掴み】Lv. 5

【恐怖と魅惑の微笑】 Lv. 1 → 2

【細工】Lv. 3

【鑑定】Lv. 2

【解析】Lv. 4

【暗視】Lv. 2

【言語理解】Lv. 1

【鬼人語】Lv. 1

【神幻語】Lv. 1

【古代魔法言語】Lv. 1

【精霊語】Lv. 1

【魔導言語】Lv. 1

【ダッシュ】Lv. 2 → 3

【テイム】Lv. 1

【鉄扇術】Lv. 5 → 6

【パリイ】Lv. 2

【二刀流】Lv. 1

【アクロバット】Lv. 2 → 3

【格闘】Lv. 2 → 3


スキルポイント: 15



※後書き、デスペナルティによるステータスマイナス効果の記載漏れを修正orz


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ