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魔術ギルドこわい

「ん? 誰か来たな」


「素体キター!」


「ほほお。鬼人——見た事がない異装だな」


「ふむ。変わった波長の魔力だ」


「異なる波長も混じってるわね?」


「異界人か」



「調べるか」

「バラしてみたいが」

「色々試そう」

「何が分かるか、ワクワクするね」

「さて、捕獲(招待)しますか」

「ぐっすりと休んで行って貰いましょう」

 えーと。


 あれ?


 私の目が確かなら、いま。


 魔術ギルドが。



「ばくはつした……?」



 爆発!?


 ぐにゃりと捻じれた黒い塔の半ば辺り。

 その壁面にある窓が光ったと思ったら、いきなりそこが大爆発。


 もくもくと煙が上がっているけど。


 え? あれ、大丈夫なの?



「あー、また爆発してるよ。今週入って5回目じゃねぇか」


 また?

 ……今週で5回目!?


 背後の声に振り返ると、数人のNPCの方々が私と同じように魔術ギルドを見上げていた。


「なにやって、あんなに爆発してるんだろーねー。まあ、どうせまた気付いたら勝手に直ってるんだろーけど」


 勝手に……?


 ん?



「なにあれ」


 壁からうにょうにょと何よかよく分からないものが湧き出して、爆発で空いた穴を塞いでいっている。


 黒いタールというか、泥というか……?

 うーん、よく分からないや。



 そんな事はどうでもいいんだよ!


 私のお目当てはテイム用収納魔導具。

 それ以外はこの際全部放置です。


 藪蛇はごめんなんですよ!


 心を無にして、魔術ギルドの中へ。





「ようこそ、魔術ギルドへ」


 中に入ると、他のギルドと同様に落ち着いた雰囲気の——いや、あえてはっきり言おう。


 暗い。


 他のギルドのように大きな窓がなく、魔導具だろう照明器具による明かりだけが点いている。


 それに、なにやら甘いような、苦いような、青臭くもあり、磯臭くもある、よく分からない変な匂いが充満している。

 アロマ? お香?


 とりあえず、総合受付だろう正面のカウンターに近付いていく。


 受付にいるのは、ダボッとしたローブを纏った、青黒い肌に側頭部の左右に羊のような角が付いている10代前半らしき女の子だ。

 現実の動物のものによく似た角と青黒い肌は魔人族の特徴だった筈。

 魔人はプレイヤーが選択可能な基本種族の一つで、身体能力に優れた鬼人と対を成すように魔法能力に優れた種族だ。


 まあ、職業補正の影響で精神力だけ飛び抜けてる私のような変わり者もいるので、一概に全部そうとは言い切れないんだけどね?


 とりあえず、魔術ギルドに魔法に優れた魔人がいるのは、そんなにおかしい話ではない。

 ただ、この子……


「本日はどういった御用件でしょうか?」


 すっごく無表情なんですが。


 なんというか、こう、感情の起伏がまるで感じられないのだ。

 いや、初対面でそうそう感情が見えるものじゃないとは思うけどさ。

 普通は声に多少の変化は見えるものでしょ?

 それが本当に全くといっていいほど感じられないんだよね。


 かといって、AI黎明期の簡単な受け答えしかできないNPCのような感じにも見えないし。


 うーん、よく分からないな。


 ——ま、いいや。



「テイムした魔物や動物を収納できる魔導具を購入しに来たんですが、購買部は何処ですか?」


 爆発? そんな事ありました?


「7階の——」


 おい。


「2階以上はギルド所属者以外立ち入り禁止と聞きましたが?」



「——チッ。購買部は右手の、あちらの通路を曲がった先にあります」


 舌打ち!?


 なにこのこ、こわい。


 ナチュラルに客騙して、どっか引っ張りこもうとしましたよ!? この受付嬢!



 礼を告げ、教えられた方へ即座に歩き出す。


 ここは魔窟だ!

 さっさと用を済ませ、早くここから立ち去ろう。

 一秒でも長く、ここにいちゃいけない!



 なんとかテイム用収納魔導具『夢見る揺籠』を購入し、魔術ギルドを出る。

 なんか変な幻視をすること2回、幻聴が聴こえること1回、異臭を2回程感じたけど、多分気のせいだろう。

 すぐ元に戻ったし。

 身体に纏わり付いて、すぐに千切れた光の輪っかも多分、気のせいだ。


 そうに違いない。うん。





 まあ、変な事はあったけど、無事魔導具は購入できた。

 かなり高くて、手持ちのソルが半分になったけど。


 テイムした魔物や動物を収納できる魔導具、『夢見る揺籠』は蔓草模様の装飾が施された、掌サイズの小さな鳥籠だ。

 これに体高がだいたい2メートル、全長が3メートル近いロリポリ(おまる)も入るんだから、魔法すごい。

 


 さて。

 じゃあ、おまるを迎えに行きますか。


 その後は、一旦ログアウトかな。

 そろそろ、ログイン限界時間が来そうだし?


ビー! ビー! ビー!


 あ。

装備アイテム追加

〈夢見る揺籠〉

 品質:C

 収納:0/1

 耐久値:破壊不可

 テイムした魔物、動物を収納する為の鳥籠型魔導具。

 収納する対象の大小は影響しないが、中位以上の存在には心許ない。

 強力な魔法が掛かっており、通常の手段では破壊できない。





「失敗したな」

「ちっ逃げられたか」

「幻惑魔法が効かなかったぞ」

「魔曲が影響しないとは」

「魔法薬も効果無しか」

「〈パワードロック〉すら抵抗しきったわね」


「「「「「「「面白い」」」」」」」

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