不幸な出会いでした
活動報告の感想、ありがとうございます。
いつもグダグダな作品ですが、完結するまで頑張ります。
どうぞよろしくお願いします。
日中と夜では、出現するMOBとその傾向が変わる。
南門から南へ進み、青緑の草原から少し西へ。疎らに草や低木が生えた荒れ地でも、それは同様だ。
日中に出るのは常に群れで行動し毒を持つ『スポットウルフ』と、キックの鬼と呼ばれている黒ウサギの『デンジャーラビ』の2種。
どちらも攻撃力が高めな上に、アクティブかつ放浪型のMOBなので、その点も厄介だ。
そして、荒れ地の夜に現れるのは『ブラックウルフ』と『ロリポリ』。
『ロリポリ』は名前はさておき、実際はただの巨大なダンゴムシだ。変な想像した奴は今すぐもげろ。
まあ、ダンゴムシとはいえ、牛並みにデカい上に殻が非常に硬いという難敵なんですが。
性質はパッシブで、リンク無しの単体行動。攻撃力はさほど高くなく、動きも遅い為、落ち着いて相手をすれば初心者でも倒せるらしい。ただ、非常にタフなので時間は掛かるけど。
しかも危なくなってくると丸まってしまい、そうなると倒すのにすごく時間が掛かるらしい。
逆に『ブラックウルフ』は攻撃力と敏捷性に優れた黒い毛皮の狼だ。毒や変な能力を持たない分、純粋に強いとの事。こっちはスポットウルフと同じ、放浪型のアクティブで、群れで行動するタイプだ。
群れの数は、多くてもせいぜい10匹程度。だいたいは4匹から6匹の群れらしい。
だが、群れは各個体が連携しながら襲ってくるので、パーティーでの相手を推奨されている。
私のお目当て?
もちろん、『ブラックウルフ』の方です。
『ロリポリ』も相手にするの面白そうだけどね。
今回は数を相手にしたいのですよ。
先程の遠吠えが聞こえた方向へと進む事暫し。
見 ツ ケ タ 。
100メートルほど先に何匹かの、狼らしき生き物の影が見える。
数は……5匹かな?
既に私の接近に気付いているのか、こちらを向いて警戒しているように見える。
どうする?
ええい、いっちゃえ!
地面を踏み締め、一気に駆け出す。
うん、マルキューさんに作ってもらった革足袋、やっぱりすごくいい!
革なのに、すごく柔らかくて足に掛かる衝撃をしっかり吸収して、負担を軽減してくれる。
それに爪先が二又に分かれているから、細かい動きもしやすいし、現実の靴と変わらない。うん、下手な靴よりよっぽど良いよ!
デコボコと荒れた地面もなんのその。普段と変わらないスピードで走っていく。
ピコーン!
なんか、来たけど後回し!
今はこっちに集中するよ!
さー、ワンちゃんあっそびっましょー?
では、まずは【解析】をば。
〔ブラックウルフ〕Lv.3
動物 警戒
〔ブラックウルフ〕Lv.1
動物 警戒
〔ブラックウルフ〕Lv.1
動物 警戒
〔ブラックウルフ〕Lv.1
動物 警戒
〔ブラックウルフ〕Lv.1
動物 萎縮
なんで、一匹だけ縮こまってるの?
まあ、いいや。
それよりも。
ありゃ、魔物じゃなくて動物かー。
となると、素材は装備用としてはあまり期待できないかな?
素材に魔力?が含まれているかどうか、で性能がかなり違うらしいし。
例外もなくはないけど、装備素材になりそうなのはそれこそ幻と呼ばれるような生き物じゃないと採れないそうな。
このブラックウルフは毛並みは、【暗視】越しだけど、パッと見は綺麗そうなのでアバターアイテムとしてのコートとか敷物とかには良さそう?
あと、【解析】がレベルアップしたからか、MOBの精神状態?とLPのゲージが視えるようになった。
これは便利。
今までは傷口から噴き出したり纏ってたりしてる光の粒子のエフェクトや細かい動きなんかで、だいたいの予想してるだけだったからね。
「ゥウウゥゥ……アオォォン!」
リーダーであろう最前列の、レベル3の『ブラックウルフ』の号令?により、群れが一斉に動き出した。
一塊りになり、こちらに向かってくる。
おそらく、数の暴力で押し潰すつもりなのだろう。
ロッドという長柄武器を持っている私でも、流石に一斉に襲ってくる野生の獣には対処しづらい。
スポットウルフの時は、背後をカバーし合える形にリボるんが立っていたから多数でも相手にできたのだ。
今は一人。相手も数は少ないとはいえ、それでも手に余る数。
——なんだけど、今の私にはそれはマズい選択肢かな。
「っすぅー……」
息を吸い込み、口から喉、気道を通り、肺へ。
横隔膜に力を込め、肺から空気を絞り出し、気道を伝わせ、喉から口へ——
『ガァアアァァァッ!!』
巫術〈トラノカミ〉で使用可能になるアーツ〈咆哮〉。
衝撃波を伴った大音量が私の前方を圧し、吹き飛ばした。
衝撃波による、ノックバック効果を持つ範囲攻撃。
それが大気を圧迫し、黒い狼の群れに襲いかかる。
ブラックウルフ達は全身をズタズタにされながら『吹っ飛んだ』。
「は?」
……いや、ノックバックどころじゃないんですが!?
なにこれ!? ドラゴンとか特大質量の生物をノックバックさせる前提なんですか?
「——っと」
急に身体から力が抜けて、フラついてしまう。
どういう、いや、さっきの〈咆哮〉のせいか。
どうやら、あのアーツは大量のスタミナを消費してしまうようだ。
あと、こんな凄い大音量なのに私の耳は無事だ。耳鳴りもしない。流石、最先端技術のVR!
——という、逃避はこれ位にして。
ブラックウルフ達を見ると、レベル3だったリーダー以外全滅している。
リーダーもズタボロのほぼ瀕死のようで。立ち上がる力もないらしく、横倒しの状態でハッハッハッと荒い呼吸を繰り返している。
お前ら、もっと根性みせろよ!
無茶振りもそこそこに。かわいそうなので、リーダーに止めを刺した。
若干遠くを見つめるような心境で、ドロップを回収し、次を求めて歩き出す。
ボスか強敵以外に〈トラノカミ〉を使うのは控えよう。
そう、心に決めながら。
そう言えば、さっき全力疾走中に来てたのはなんだろう?
メニューからログを呼び出し、確認する。
《先程の行動により、スキル【ダッシュ】を習得しました!》
どうやら、全力疾走した際に補正を得られるスキルのようだ。
うん、私にはどうでもいいな。
それより戦闘ですよ!
もっと骨のある相手はいないんですか?
ブラックウルフちゃん。今度は一撃全滅はさせないからおいでー。
掛かっていたバフが切れて来たので、再度掛け直す。
今度は〈トラノカミ〉は無し。MPと持続時間の関係から、〈ミノカミ〉も使用は控える事に。
……来ない。
あいつら、放浪型アクティブでしょうが。なんで一時間近く歩き回って、全く遭遇しないのさ。
もう、なんでもいいから、誰か相手してよぅ……
と、前方に巨大な影が見えた。
あれは……ロリポリかな。
あれでもいいか。
おーい、相手してー。
〔ロリポリ〕Lv.1
動物 パッシブ
デカい。
そして、キモい。
うん、ナイトアーミーでも思ったけど、大きい虫って素直にキモいですわ。
商業ギルドの受付にいた蟲人のお姉さんは綺麗だったけどね。
でも、まあ、愛嬌がなくもない、かな?
顔を見なければ。
のっそりもっそり歩く様はどこか、亀や象のような安定した余裕のようなものを、安心感を覚える。
「これだけおっきいと上に乗れそうだなぁ……」
牛サイズだし、上の甲殻も腰掛けるには良い感じの丸みになってるし。寝転がれそうな位。
丸まらなければ、乗り物にも……
あ、いい事思い付いた。
【ダッシュ】Lv.1 New!
《走れ! 死ぬ気で走れ!》
全力疾走時に瞬発力強化と体力消費軽減に補正を得る。
主人公は基本的に走り回るような戦闘スタイルじゃない(狭い範囲でステップしたり、攻撃を受け流すなど)上に、【震脚】の踏み込みによる一足飛びがあるので、【ダッシュ】にはほとんど必要性を感じていません。
その他の前衛プレイヤーにとっては、恩恵のあるスキルです。




