はじめてのおつかい、の依頼
また遅れてしまいました……
すみません。
よし!
時間は朝8時!
天気は快晴!
It’s a hunting day!
フレンドリストを見ると、リボるんや『紅蓮堂』のメンバーは全員ログアウト中のようだ。
まあ、現実では只今午前3時。ログインしている私がおかしいんだろうけど。
さて、ログアウト中にまた幾つかメールが来てたようだ。
まずはリボるん。
『すまん。リアルの事情で丸一日ログインできなくなった。しばらく一人か、誰かと臨時組んで頑張ってくれ。あ、無茶はし過ぎんなよ?』
ありゃま。うーん、警察かな?
あと、余計なお世話です。
次は、ルーミスさん。
『ご依頼されていた武器が出来ました。現実で明日お渡ししますが、とりあえずデータを添付しておきますのでご確認を』
お、出来たんだ。
添付データ……これか。チェックチェック。
〈鉄紅樹の六尺棒〉
作成者:ルーミス
品質:C
ATK:+5
MBS:+3
耐久値:4500
鉄のように堅い深紅の樹・鉄紅樹の幹を加工した、長さ六尺の棒。
一般的な木材の棒よりも重量がある為、取り回しにはコツがいる。
魔力の通りはそれなりに良く、増幅効果は僅かながら高い。
ふむ。性能はなかなか優秀ぽい。
初期装備の〈木のロッド〉と持ち替えれば、若干の不満だった攻撃力不足も解決するかな。
「『ありがとうございます。楽しみにしています』っと」
最後は、マルキューさんか。
『トウちゃんへ。欲しい素材があるから明日の狩り手伝ってー』
うーん、手伝いはしてもいいんだけど……
マルキューさんからの依頼ってなんか嫌な予感がするんだよねぇ。
さて、とりあえずメールの確認は終わったし。
狩りに、行こう。場所は——東の丘へ。
自重?
やだよ、めんどくさい。
無茶?
なにそれおいしいの?
南の平原は、物足りないんだよね。
スポットウルフがいる草原まではそこそこ歩かないといけないし。
夜はこわいし。
スキルレベルや職業のレベルを上げたいから、ある程度の強さを持っている方が良い、というのもある。
丘陵地帯で比較的多い兎や蛙は戦い慣れちゃってるのもあるし。
そうと決めたら、準備に行きますか。
実験用に、“あれ”も用意しとかないと。
時間は経過して、私はとあるNPC薬剤店の中にいます。
お店の名前は『月光蝶』。ファンタジーっぽいネーミングだけど、このゲームだと由来は某おヒゲって可能性も……いや、まさかね?
「狩りに行くのに、また妙なの持っていくんですね? いや、それなりに使い道はある物ですけど」
美しい銀髪に可憐な容姿。見るからに美少女ダークエルフな、店主の『ローラン・セローラ』“君”が小首を傾げつつ、私が注文した品をまとめてくれている。
うーん、店名と言い、容姿と言い、名前と言い、『金魚の君』?
「あはは、ちょっと実験——というか、魔法の触媒にしてみる予定なの」
「魔法の触媒ですか。まあ、割とありふれた材料ですけど」
ひとまとめにしてくれたアイテムを受け取り、道具袋の中に放り込む。
「へぇー、そうなんだ」
可能性に希望が持て——なくもない情報だ。
「あ、饕餮さん。東の丘の方に行くんですよね?」
「ん? そのつもりだけど」
「実は急遽調合必要になった素材があるんですけど、市場で見つからないんですよね。東の丘の魔物素材なんですけど、良かったら仕入れてきてくれませんか?」
調達依頼かー。
「仕入れてきてくれたら、報酬と何かサービスしますから」
むむ、好待遇。
ピコーン!
《NPC『ローラン』より直接依頼による調達クエストが提示されました! 受諾しますか? Y/N 》
……あれ? ギルドを通さないNPCからの直接クエストって実は初めてかも。
「何を仕入れたらいいんですか?」
「はい。“イエローディアー”という黄色い毛皮をした鹿の角なんですが」
ん? 黄色い鹿?
なんか聞き覚えがあるような……?
ま、いっか。
「分かりました。黄色い鹿の角ですね」
いくら魔物でも、草食動物の鹿なら大した事はない筈。
うん、現実で昔殺ったみたいに角と後ろ肢の蹴りに気を付けつつ、首の骨をへし折ればいいよね。
「お願いします」
《 クエストを受諾しました!》
よし、それじゃ街の外に出ますかね。
ステータスに変化がない為、表記なし。




