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ごめんなさい!

いつの間にか、ユニークアクセスが2万突破してました。


本当にこんなので楽しんで頂けてるんでしょうか……?

お読みいただき、本当にありがとうございます。


少し遅れてしまいましたが、どうぞ!

 俺はこの世界なら最強になれると思ったんだ。


 現実とは違う、背が高くて筋肉ムキムキの、頑丈なカラダ。

 報われない現実とは違って、モンスターを倒してれば間違いなく強くなれる。

 強くなれると——強くなったと思ってたんだ。



「人よりも簡単なものを斬れることが自慢になるの?」

 脅しが通じない。それどころか、返ってきたのは。

 余りにも自然な言葉。呆れと冷たさが混じった目。

 まるで自分の何もかもを見通すような。


 気が付けば、竜人の、誰よりも強い筈の肉体を容赦なく吹き飛ばされ、握り潰され、踏み潰される。

 何も出来ずに、ただ壊される。

 なんだこれ。なんだよ、こいつ強い!? 自分は……ヨワイ?


 降参の言葉に思わず言い返した。それだけは嫌だ! それ位なら——!

 目の前に立つオニがくすりと笑った。

 あ、あああ…… わらって。綺麗だ。怖い。動けな。コワイ。こわい。恐い!

「その意気や良し」


 オニは大きく一歩下がると、棒を地面に落とした。……なんで?

 オニはまた、今度はニタリと笑った。まるで口が三日月みたいに。

 その笑顔で、背中に氷が落ちた。


 こわい、こわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ!


「へあ?」

 目の前にはいつの間にか影が——いや、金属っぽいボールが、落ちて。


 そこで意識は一度途切れた。








 ……オリジナルアーツ?

 なんかまた、変なの来た?


 【掴み】はまだいい。私の骨をも砕く超握力がシステム的にスキル対象として認定されたとか、そんな感じだろう。

 【暗器術】のレベルアップは嬉しい。切り札が強くなるに越した事はな——って、何でこんな雑魚相手に切り札見せてんの私!?

 うわぁ、調子乗ってるのは私もじゃん……

 あー、反省は後回しにしとこう。

 そのまま忘れれば、完璧!


 で、このオリジナルアーツとやらだけど……うん、リボるん達に相談しよう。私だけじゃ分からない事ありそうだし?

 よし、そうしよう。丸投げだ。



 地面に落としていた〈木のロッド〉を拾うと、決闘フィールドが解除されて元の中央広場に戻ってきた。

 馬鹿が大剣で砕いた石畳も、私が馬鹿の足ごと踏み潰した辺りも元通りだ。

 いや、あれは違う空間での事だから、元通りっていうのも違うけど。



 ふと、辺りがあまりにも静かなので周囲を見渡してみる。

 たしか結構な野次馬がいたと思ったんだけど。


 そういえば、なんで皆汗ダクで黙り込んでるんですか?

 というか、なんで顔を向けるとビクッとしてるんですか?

 えっと、なんで目が合ったら、すいっと目を逸らすんですか?

 あの、なんで笑顔を見せてみたら「ひっ!?」って後ずさりするんですか!?

 ……あの、泣いてもいいですか?



 つか、だいたいですね。これでも手加減したんですよ?

 いくら礼儀も弁えない猿みたいな口の悪いクソ餓鬼でも、中学生みたいですから。あまりトラウマになるようなのは避けたんですからね?

 これがマジいい歳こいた大人なら、指から一本ずつ折っていって、両手足の関節砕いてから、自分の愚かさを叫ばせながら頭を少しずつ握り潰すなり踏み砕くなりして、調き……反省させている所です。

 流石に現実ではそこまではしないけど、新しく道場に来た調子乗りすぎてる新人の骨を2、3本折るのは割と恒例行事だし。



 っと、対戦相手が戻ってきましたよっと。


 光の粒子が地面に集まり、固まって、倒れた人の姿に変わっていく。

 おお、前に見た死に戻りする時の逆回しみたいだなー。最後に元に戻ったのは、トドメに叩き潰した頭だし。


「う、うう、お、俺は……」

 あ、起きた。

 頭を振って起き上がろうとしてる所に声を掛けてみる。


「おかえりー」


 お、ビクッとした——って、なんでそんな後ずさってんの!?

 しかも腕だけでシャカシャカと。ステータス半減してる割に速いぞ!?

 なんかぶるぶる震えてるんですが。


 なんとなく、笑ってみせる。


「ひぅっ!? ——ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 ちょっ!

 なんで泣いてんの?

 土下座しないで!?


 ガタイのいい竜人の大男が泣きながら土下座とか、心臓に悪いんですけど!?

 えっと。


 ……まさか、トラウマった?



 5分経過。

 土下座して泣いたまま動かねぇ……


 周りの視線もなんかどんどん痛くなってきてるんですが。

 これどうしたらいいのん?



「はーい。ちょっと通してねー」



 ん?

「はいはいー、通してねーっと。おー、こりゃまた修羅場ですねー?」


 野次馬の輪の一部が割れて、一人の女性が近付いてくる。

 なんか背中に羽根が生えてるけど、フェアリーのような虫っぽい羽根じゃなくて、鳥の翼みたいな感じだ。それにフェアリーの羽根は光そのものな感じで触れないが、女性のそれはしっかりと実体があるように

見える。しかも虹色に光ってて派手というか、ちょっとケバいというか……頭にもなんか同じ虹色の、光の輪っかが浮かんでるんですが。

 あと、一部がデカい……どことは言わないが。悔しくはないぞ!


 えっと、というか、どちら様?


「私はFRO運営部所属のGM、ゲームマスター『カノープス』と申しますー。今回、管理AIより警告情報があり、仲裁に参らせて頂きましたー」


 ゲームマスター!?


「え、ゲームマスター?」

「初めて見た」

「おお、『御使い』様じゃ……」

「すげー」

「天使キタコレ」

「創造神様の眷属や!」

「あの種族いいなー」

「GM専用じゃね?」


 野次馬もなんか騒ぎ始めてるなー。

 まあ、当然か。

 今まで(βテストですら)姿を見せず、イベントもNPC任せだった運営側の人間が現れたんだから。

 NPCの呟きから察するに、GMは設定的には創造神カウインなんとかの眷属?

  天使だから『御使い』なのかな。


 にしても、この人優しそうではあるけど、なんか偉そうな感じしないなー。

 話し方もなんかのんびりした感じだし。


「た、助けてくださいっ!」


 おい。

 なんでGMのお姉さんに縋り付いてんだよ。

 それじゃ、まるで私が悪者みたいじゃないですか。


「今回のトラブルに関しては、既に会話を含めたログから内容を把握していますー。プレイヤー・ドッガンダーさんがプレイヤー・饕餮さんに対して高圧的なパーティー勧誘を行ない、断られた際に饕餮さんのパーティーメンバーを侮辱。それに怒った饕餮さんが売り言葉に買い言葉で暴言を返した、と。それに対し、ドッガンダーさんが決闘[デスマッチ]を要求し、戦闘の結果、饕餮が勝利。そして、ドッガンダーは決闘の内容で怯えてしまって今の状態、とー 」



 はいー。だいたいーその通りですねー。

 って、やべ。ちょっと感染(うつ)った。


「今回の場合、非は完全にドッガンダーさんにありますー。高圧的なパーティー勧誘は勿論、相手のメンバーを侮辱するなど、規約にあるプレイマナーに関する項目に抵触していますー。これは理解してますかー? また、怒りに任せて決闘を要求したのも良くありません。決闘はトラブルを強引に解決する為の手段ではありませんよー?」


「は、はい……ごめん、なさい」


 うむ。その通りだ。反省しなさい。


「饕餮さんにも問題はありますよー?」


 え?



「いくらコンビを組んでいるパートナーを馬鹿にされたからといって、暴言を返すのは良くありませんー。相手と同じ土俵に立ってどうしますかー」


 いや、それは。


「しかしですね」


「戦闘については[デスマッチ]である事もあり、特に言う事はありませんがー。ドッガンダーさんについては気付いてましたよねー?」


 う、それは……その子が中学生くらいだって事だよ、ね……?


「もうちょーっと配慮すべきだったのではー?」


 うう、確かにやり過ぎた気もしなくもありませんがー。


 だがしかし、私にも言わせていただきたい事はある。


「……申し訳ありませんが。私は若輩ではありますが、武を嗜み、相応の位にある者です。その立場から言わせていただければ、同門である相棒と共々に侮られた挙句、挑戦を受けたのです。ならば問答無用かつ完膚なきまでに叩き潰すのは当然の事」


 正直、ここは譲れない。

「いや。それは——」


「確かに、結果として精神を傷付けかねない程の恐怖を植え付けてしまったのはやり過ぎだったかもしれません。しかし、強さという指標は、私や相棒のような武に囚われた人間にとっては精神の奥深くに根付いている、特に譲れない “ 核 ” です。そこを貶められた以上、全力を以って叩き潰さなければ気が済み——言い方が悪いですね。魚が水で泳げなくなるようなものです。大事なモノを失くしてしまうんです」


 GMさんも、周りの野次馬も、一様に黙り込んだ。

 これは一般人には到底理解できない考え方だろう。いや、理解してはいけない。

 何故ならこの思想の行き着く先は、修羅の道。周りが敵か、それ以外か、という考え方しか出来なくなってしまいかねない。


 勿論、私はそこまで酷い考え方はしていない。

 私の周りには、リボるんや家族、親友、道場の皆。私は、味方でいてくれる人がたくさんいる事を知っている。だから、大丈夫なんだ。



「それに、私はそいつを今はそれなりには認めてるんですよ?」


「え?」

 今では顔に幼さがはっきりと見えるね。背伸びして肩肘張らずに、そのままで居たらいいのに。

 そっちの方が可愛いよ?


 呆然と、不思議そうにこちらを見上げている子供の顔を見下ろす。


「恐怖を感じているのは分かってました。だから、逃げ道として降参を促したんですが」


 この子は撥ねつけた。


「恐怖を抑え付け、降伏より死んで敗北する事を選んだ。……それは本来、間違いです」


 人は死ねば終わりだ。次はない。何も残らない。ならば、例え屈辱を得ても生きるべきだ。

 時々勘違いして、負ける位なら死ぬとか、死ねとか、吐かす阿呆がいるけど。

 生きる事こそが生物にとっての勝利である事を、忘れてはいけない。


「だけど、ここは死ねば終わりの現実じゃない。死んでもやり直せる、もう一度戦える、『ゲーム』なんです」


 お、目に光が戻り始めたよ?


「『ゲーム』ならいくらでも負ければいい。いくらでも死ねばいい。もう一度立ち上がって、戦えばいいんです」


 この子はそれを選んだ。恐らくは無意識に。

 それはたぶん、一つの強さだ。


 だいたい、恐怖なんて大したもんじゃない。

「恐いのは克服できる。恐がってる自分と戦えばいいだけなんだから」


 もう一押しかな。

「君は恐怖に折れた。でも、負け犬でいたい?」


 ——本当にそのままでいいの?



 いつしか俯いていたドッガンダーはこちらを見上げ、叫んだ。

「っざけんな! 俺は強くなる! 最強になってやるんだっ!」


 よろしい。


「なら、いつまで地べたに座って、その人に縋り付いてるの?」


 さっさと立てよ、ガキ。


「っ!」


 立ち上がった彼に、祝福を。満面の笑みを。


「認めるよ。君は強い」


 あれ、なんか惚けた顔になったぞ。

 おーい、大丈夫かー?


「えっと、という訳で。一件落着になりませんかねー? GMの」


 えーと。


「『カノープス』ですー。はぁ……まあ、今回は戦神エルガートゥスが好奇心で、 “ 承認してはいけない場所なのに ” 決闘を承認しちゃった事もありますしー。ドッガンダーさんが落ち着かれて、和解もなされたのならば、こちらとしても特に問題には致しませんよー」

 ん? 今なんか変なこと言わなかった?


 こてん、と可愛らしく小首を傾げてみせる。

「ただしー、中央広場は『ウェンディコ』行政府が決闘を禁止している事は冒険者ギルドの登録の際に説明されていますよねー? その辺の罰はー、お二人とも受ける事になりますよー」


 え?


 後ろから左肩をポンと叩かれ、振り向く。

 丸に十字、自由交易都市『ウェンディコ』の紋章が彫られた全身鎧を纏った男性が笑顔で私の肩に手を置いている。

 あ、自衛騎士団の騎士さんだ。

 いつも巡回ご苦労様です。

 

 肩に置いた左手とは反対の右手の親指を突き出し、後ろを示す。

「おう、ちょーっと詰め所まで来てくれや」


「君も詰め所まで来てね」

 思わず振り返ると、ドッガンダーの後ろにも騎士が立っている。


「決闘は冒険者ギルドかー、自衛騎士団の訓練場でしか認められてませんからねー。お二人とも、騎士さん達にしっかり怒られてきてくださいねー」


 ……あ。

 わ す れ て た !


 急に身体から一瞬、重力が消える。

「のわぉっ!?」

 肩に担がれた!?


 え、ちょ、ええぇ?

 いたっ! 鎧の出っ張りが当たっ、いたいっ! ですよ!?


「我慢しろ。これも罰だ」


 嘘ん。あーれー。




 こっぴどくお叱りをうけ、反省文も書かされて、解放されたのはゲーム内時間5時間後。

 うわぁーい。もう外は真っ暗ですよー。


 ぐすん。

 ピコーン!

《 特殊称号『ウェンディコの問題児』『戦神の承認者』を獲得しました! 》


 ピコーン!

《 【恐怖と魅惑の微笑】スキルを習得しました! 》




えーと、なんか主人公に喋らせてたらSEKKYOくさくなりました。なんでこうなった……

あ、この空気は(多分)今回だけですので。

次回からは元のグダグダしたコメディ?に戻る(予定な)ので。



(※多くの御指摘御批判を受け、私としても説明不足や表現の仕方の誤りなと多くの問題点が見えた為、後半部を書き直させていただきました。大筋の流れは変わりませんが、違和感や矛盾点を多少解消できたと思います)

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