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死合と誇りと

勢いで書き上げてしまいましたが……あ、あれ、思ったより……



とりあえず、どうぞ!

 強さ、というものは相対的なものだ。

 Aが、Bに強いからといって、Cにも強いとは限らない。Dに圧勝しても、Eには惨敗するかもしれない。Fとは千日手に入るような全くの互角かもしれない。

 得意不得意、相性だってある。

 機動戦に弱い。不意打ちが得意。(パワー)で押し切るが、搦め手に弱い。何でもこなせるが、決め手に欠ける。

 彼我のそれを見極めるのもまた、強さの一つだろう。


 そして、絶対的なものでもない。

 ほんのちょっとした油断で負ける事もあれば、僅かな隙を突いて勝つ事もある。

 相性を覆す程の熟練も、越えられない筈の壁を打ち壊す気合いも、敵の全てを封殺する知略も、戦闘においては全て想定すべき事柄。


 ならば、強さとは何か——



 いや、私は哲学者でも究道者でもないから、正直そんな細かい事はどうでもいい。

 ただ二つ。二つだけ言える事と分かっている事がある。


 日々の修練は、必ず自分に応えてくれる、という事実と。


 調子に乗ってる馬鹿は完膚無きまでに徹底的に叩き潰さないといけない、という経験則だ。

 




《 PC:ドッガンダー/dogunderからPvP決闘[デスマッチ]が申し込まれました! 受けますか? Y/N 》


 [デスマッチ]とはまた……

 決闘には一定ダメージ量を削った者が勝つルールや有効打撃のカウント数で決まるルールなど、幾つかの種類がある。

 ドッガンダーとか言う小僧が申し込んできたのは『相手のLPを削り切った方が勝つ』という、[デスマッチ]ルールだ。



 うん、阿呆だな。


 ドッガンダーは物理戦闘力に秀でた大柄な竜人。

 手には青銅の大剣。布鎧に鉱石の小板を貼り付けたストーン・スプリントアーマーという装備からして、職業は重戦士。


 対する私は、身体能力が高い鬼人ではあるものの体格は小柄。

 武器は初期装備の〈木のロッド〉で、着ているのは布製の服装備。

 どう見ても、後衛職業だ。


 実態はさておき、両者を比較すれば結果は一目瞭然。

 思い浮かべてみよう。大型の武器を持った兵士らしき大男が、箒を持った背の小さな巫女さんに、死合を申し込む光景を。

 これ、どう考えても頭おかしいですね!


 周りにいて一部始終を見ていた人達は「やめろ!」とか「何考えてるんだ!?」とか止めてくれてますが。

 ここはYesを選択。


 こういう類いは徹底的に潰さないとね!



「馬鹿が。本当に受けるとはな」

 自分が申し込んどいて何言ってるんだコイツ?

 ……ああ、私がビビって退くとか思ってたんだな。

 舐められたものですこと。


《 戦神エルガートゥスに決闘が承認されました。PvP決闘[デスマッチ]を開始します。対戦相手のLPをゼロにした方が勝利です 》


《 決闘フィールドを形成。——では、誇りある戦いを! 》



 あれ、決闘なら開始前カウントがある筈だけど。[デスマッチ]ルールに開始前のカウントはないのか。

 まあ、試合ではなく死合というなら当然か。



「フンッ!」


 馬鹿がいきなり大剣を地面の石畳に叩き付けた。

 凄まじい轟音と共に石畳が砕けたけど、何がしたいんだコイツ?

 ここはもう、空間軸をずらされた決闘フィールドだから元の地面には問題ないけど、決闘フィールドじゃなかったら、懲罰&弁償ものだぞ。


「どうだ! 俺の大剣は石だろうが鉄だろうが、叩っ斬るぜ!」


 ……はぁ?


「——人よりも簡単なものを斬れることが自慢になるの?」



 まず一歩。

 【震脚】を踏み込み、前へ。

 魔物を踏み潰す程のパワーを前進する勢いに換える。更に足首から膝、太腿を経由し腰へ。腰から胸の捻りで力を引き上げ、肩を伝い、振り上げた腕の肘、——そして手首へ。

 高速で振り抜かれたロッドが右手の中を滑り、衝突の寸前で握り込まれる。加速の勢いと共に更に全身の体重を上乗せされ、目標へ。

 撃ち込まれるは、強烈な踏み込みと全身で増幅されたパワーを秘めた高速の片手直突き。


 『雀撃ち』


 それが、竜人の剥き出しになっている喉を撃ち抜く。


「——カハァッ!?」


 お、上手く入った。

 ほとんど棒立ちの所に撃ち込んだせいか、ドッガンダーは軽く浮くようにして、10mほど先まで吹っ飛んでいた。


 私の全力の『雀撃ち』は、現実でも防げる人は私の知る限り、故人を含めても12人ほど。躱せる人は4人しかいない。

 リボるんは躱すのは無理だが、防ぐ事は余裕でこなす。これを防げない時点で、彼を雑魚呼ばわりとは片腹痛いぜ。


 しかし、まるで攻撃してください!と言わんばかりに、隙だらけだったなー。

 スキル後硬直でもなさそうだったけど。……マゾ?


「ガッ、げほげほっ! グフッ、てめえ……ゴホ、いきなりとか、卑怯だぞ!」


 え?


「死合で何言ってるの?」


 死合だろうが、試合だろうが、無駄な隙を晒した方が悪い。

 ましてや、開始前の不意打ちならともかく、既に始まっているのだ。どんなタイミングで攻撃しようが——


「喰らう方が悪い」


 あ、絶句した。

 周りもなんか静かになってるな。まあ、集中しやすいからいいけど。


 さて、ドッガンダーのLPは今ので減ったのは2割ほど。

 やっぱりSTRが低いせいか、攻撃弱いなー。まあ、何度も攻撃すればいいだけなんだけど。


 再び、【震脚】。

 今度は目前に移動だけして、ドッガンダーの右手を左手で掴む。


「ギャアッー!」


 相手の手首を全力で握り潰す。

 握力100kg。強靭な肉体を誇る竜人でも流石にへし折れるか。


「あ、ガッ、ぁ゛……」


 左手で右手首を押さえ、震える竜人の背後に回り、左の足首に【震脚】を撃ち下ろす。


「ヒギィぁっ!?」


 状態異常【クラッシュ】——VITに依存する肉体防御を上回る一定強度の打撃・圧力性質の攻撃を受けた場合に発生する特殊状態異常の一つだ。

 ハンマーの打撃攻撃や大蛇の締め付けなどの他、土属性や水属性の魔法でも発生する可能性がある。

 腕に受ければ武器を落とし、足に受ければ移動が困難に。胴に受ければ状態異常の【気絶】を併発し、頭ならクリティカルで即死もあり得る、割と危険な状態異常だったりする。

 まあ、それだけに滅多に発動しないし、狙って出すのも難しいらしいんだけど、[デスマッチ]ルールの決闘フィールドだけは別だ。耐性の影響こそ受けるが、あらゆる状態異常が発生しやすくなっているのだ。


 あ、私がこんなに詳しいのは決闘システムは公式サイトにある数少ない説明やウィキペディア、個人ブログに至るまで、微に入り細に入り徹底的に調べたからだ。

 やっぱり、武術を嗜む以上は気になるし、折角の天与の能力は活かさないとね。



 にしても、弱いなコイツ。

 あまりにも自慢げだから、『適性者』か、多少の心得はあるかと思ってたんだけど。反応すらしてなかったし。

 一人用のアクションVRか、βテスト経験者かなんかで、調子乗っただけか。


「——降参したら?」


 [デスマッチ]ルールの決闘は死んで負ける以外にも、降参する事も可能だ。


 ただ、本来の敗北である死を回避するだけに代償は重い。

 通常、決闘で負けてもメニューのリザルトに敗北数がカウントされるだけだ。だが、[デスマッチ]で降参した場合、フィールドでの死亡と同様のゲーム内時間5時間の全ステータス半減のデスペナルティを課される。

 更に挑戦者の場合は5時間上乗せされて、10時間のペナルティ。その上に一定期間、戦神により不名誉の刻印を施される。これはNPCの友好度が下がってしまうらしい。


 ……正直、死んで負けた方がマシなような気がする。



「っざけんな! 降参する位なら、自分で死んでやるよっ!」


 ふぅん?


「その意気や良し」

 なるほど。馬鹿ではあるが、誇りがないという訳じゃないらしい。


 くすくす、と笑みが零れる。

 ならば。

 

「全力で叩き潰してあげよう」



 バックステップで一歩後ろに。

 ロッドを手放し、地面に落とす。


 ドッガンダーは怪訝な表情を浮かべたが、今から放つのは現在の私が出せる全力全開最強の一撃。


 【震脚】で踏み込み、再び全身のパワーを引き上げながら竜人の前へ。

 引き上げたパワーを、回転しながら首から頭へと更に引き上げる。

 三つ編みにした髪を、先に付いた髪飾り、〈重金の髪留め〉を振り回し。


「へぁ——?」


 【震脚】、全身捻転による加速、遠心力をも加算された金属の塊を、呆然とした竜人に叩き込む。


 元々の重量に加えて遠心力により増加した攻撃力に、【暗器術】スキルにより補正を受け、その一撃はそれこそ岩をも砕く威力。


 私の最強の一撃。【暗器術】の師匠であるリュネックさんをして『竜尾の一振り』と言わしめた攻撃は、クリティカルポイントである頭を上から下へ、無慈悲に叩き潰した。



 シャキーン!

《You Win!! PvP決闘[デスマッチ]に勝利しました!》



 ピコーン!

《只今の戦闘の結果、【掴み】スキルを習得しました!》


 ピコーン!

《【暗器術】のレベルが上がりました!》

 

 ピコーン!

《戦神により、オリジナルアーツ2種が認められました! 過去のログを解析。それぞれ【棒術】【掴み】併用アーツ〈雀撃ち〉、【震脚】【舞踊】【暗器術】併用アーツ〈竜尾の一振り〉と命名されました!》



 ……ほぇ?

 名前 : 饕餮 / TOUTETU

 種族 : 鬼人Lv.1

 職業 : メイデンLv. 3


称号

 虎狩り

 危難を凌ぎし者

 戦鬼


ステータス

 ATK(攻撃力):+3

 DEF(防御力):+3

 MBS(魔力増幅):+1

 RES(魔力抵抗) :+2


 STR(筋力):8

 VIT(体力):6

 AGI(敏捷):9

 DEX(器用):10

 INT(魔力):12

 MND(精神):22


ボーナスポイント:0


装備アイテム

 ・木のロッド

 ・白の襲

 ・緋袴

 ・重金の髪留め

 ・異界の道具袋


イベントアイテム:〈宝冠の欠片〉


 習得魔法

 巫術Lv. 3


 ハラエノミソギLv. 2

 ナギノミカガミLv. 1

 ミノカミLv. 0

 ツクモツキLv. 1

 コンパクカッセイLv. 1


オリジナルアーツ 《承認》

 雀撃ちLv.1 New!

 必要スキル:【棒術】、【掴み】

 

 竜尾の一振りLv.1 New!

 必要スキル:【震脚】、【舞踊】、【暗器術】


所持スキル

 棒術Lv. 8

 震脚Lv. 7

 舞踊Lv. 4

 細工Lv. 3

 鑑定Lv. 2

 解析Lv. 2

 暗器術Lv. 1 → 2

 掴みLv.1  New!


スキルポイント:15 → 17

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