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訓練はハード?

あえて言います。


この回はまずネタありきです!

   

大声が響き渡る。


「よく来たな、冒険者タマゴのお嬢ちゃん! 私が訓練を担当する教官のハート・サマーズだ!」


 ガチムチBBa……いや失礼。隆々とした筋肉を身に纏った大柄な体格の、60代前半と思しき女性が広々とした円形広場の中央に立っていた。

 ばーちゃんリアルアマゾネス、そんな言葉が脳内を駆け巡る。


 というか、その名前は色々と問題ありませんか?

 主にあべし!とか、ひでぶ!的に。


「最初に言っておくが、訓練教官は同性が担当する。異性を対象とする魅了系スキルの存在を含めて、色々と問題が起こりかねんからな。事前の措置というヤツだね」

 なるほど。確かに、男性に対して女性教官だと指導に乗じてセクハラする輩が出かねないし、その逆で男性教官は女性に対する指導はやはりやりにくいだろう。

 てか、さりげなく状態異常スキルの存在を仄めかしてきたな。確か、初期取得可能スキルの一覧には魅了系はなかった筈だ。欲しければ探せ、という開発からの隠れた挑戦と見ていいのか。


「はじめまして。饕餮/トウテツと申します。御指導御鞭撻よろしくお願い致します」

 深々とお辞儀する。こういう事は最初が肝心だ。

「うん、いい挨拶だ! ……トウテツだな? ビシバシ扱くからな」

 ガハハ、と豪快に笑う姿はまさしく女傑。これはしっかり鍛えてくれそうで期待が持てる。


「まず、武器の訓練からしようか。ーーん?棒術と格闘、いや【震脚】か。なかなか面白い組み合わせを考える」

 手にしている私の申請用紙を見ながら、ハート・サマーズ教官……ここは尊敬と親愛を込めて、あえてハート様と呼ぼう。心の中で。

「棒術、それに杖術と長刀もですが。未熟ではありますが覚えがあるので」

「ふむ、棒を持っている姿から見ても、そんな感じだね。ーー鍛え甲斐がありそうだ」

 ハート様がにやりと口元を歪める。舌舐めずりしそうな表情が非常に怖いです。

「よろしくお願いいたします」

 ちなみに棒術と杖術、長刀はご近所にあった道場の老夫婦から指導を受けた物だ。最初は護身術の一つとして通い始めたのだが、気が付けば10年も通っていた。

 私はただ、近所の仲の良いお爺ちゃんお婆ちゃんに遊びながら教わっている感覚だったのだが、武に対する素質は多分にあったようだ。

 「人である事は忘れるな」「修羅に堕ちる事だけは無いように」。それが師匠たちが天に召される前、それぞれに受けた最期の御指導でありました。

まあ、いわゆるバトルジャンキーというヤツだったので(照れ


「ふむ! あんたにはチマチマした初心者向けの訓練なんかは不要そうだね。むしろ実戦で色々ヤッた方が良さそうだ」

 ハート様は獰猛な笑みを浮かべると、私が持つのと同じ、初期棒術装備、〈木のロッド〉を手にして、構えた。

「徹底的に扱いてやるよ。【震脚】も【舞踊】も好きにしな。あんたなら使ってる内に活かせるようになるさ。ーー多分」

 ……えっと、


「スキルの使うコツなどはーー」

「気合で身に付けな!」

 マジですか。

「分かりました」

「じゃ、始めようかい!」



 嗚呼、地獄の一時間でした……


 ありゃ、アマゾネスなんかじゃない。

 

 バーバリアンだ!


 こっちの攻撃はまるで効かない。

 攻撃が疾すぎて躱すのに必死。

 咄嗟に受けたら10mは吹っ飛ばされる。

 あの、本当に純血の人間族ですか?

 亜人種であるオーガ族や巨人種の血縁って言われた方がまだ納得できるんですが。


 実はこの時受けた訓練について、細かな記憶があまり無い。

 ただ、訓練ではせいぜい一つ二つのスキルが1レベル上がる程度。だが、【棒術】と【震脚】がLv.3、【舞踊】がLv.2に上がっている事実がハート様式訓練の恐ろしさを表している、と言えよう。


 ハート様マジこわい。



 扉を開き、冒険者ギルドのホールに戻ってくる。

 …………つかれた。


「あ、トウテツさん。お疲れ様でした。訓練は大丈夫でした?」

 受付の猫耳お姉さんの方を向き、ひとこと呟く。


「ハート様まじハード」


 ーーあ、ヒイた。

「……訓練は恙無く。戦闘について ” 実戦形式 ” で鍛えていただき、お墨付きを戴きました」

「さ、サマーズ教官の実戦形式ですか……!?」

 ん?何か様子が……


 猫耳お姉さんはこちらに身を乗り出すと口元に手を寄せて、小声で話し掛けてきた。

「ハート・サマーズ様は現役のB級冒険者です。この支部に所属している多くの冒険者の方々も一目置かれている御人でして。 ” 実戦形式の訓練でお墨付きを戴いた ” となりますと、色々と注目を集める事になると考えられますので、秘密にしておいた方が宜しいかと」


 おぉぅ、マジですか。

 なんでそんな御仁が訓練教官なんてやっているのか訊いてみると、どうやらハート様は数年に一回、 ” 趣味 ” で教官仕事を請け負うらしい。

 今年は異世界からの来訪者が一斉に現れる、との事で嬉々として名乗りを上げられたとか。


 ……いや、趣味て。

 動機はさておき、訓練はしっかりしていただいたし、注目なんてものは集める時は集めるものだ。

 特に巫女さんな私なんて、さっきからまた視線がバシバシと。あれ、目に水が。


「そ、それで、これからどうなさるご予定ですか?依頼でしたら…」

「いえ、次は教えていただいた神殿へ行ってみます。その後は商業ギルドへ。外に出るのはそれからにしようかと。自分にできる事をしっかり把握してから、行動を開始するつもりです」

 お姉さんの言葉を失礼ながら遮り、予定を告げる。

 やはり、【巫術】が気になる。どんな魔法か分からない内はいざという時に頼る気になれないし。


 私は石橋は殴り付けてみて大丈夫そうか確かめてから駆け抜ける主義だ。


「ご立派な信条です。最近はロクな訓練もしないで街の外に出て、這々の体で逃げ帰ってくる者も少なからずいますので」

 当然ながらそのような者は評価が下がります、と続いた言葉に私は「当然ですね」と深く頷いた。

 それに、中には ” 戻ってこない ” 者もいるだろう。それは〈死に戻り〉がないNPCにとっては消滅であり、現実の死と変わらない。


「では、トウテツ様のご活躍をお待ちしています」

 深々とお辞儀をしている猫耳お姉さんに礼を返し、出口に向かう


…………前に。


「失礼ながら、貴女のお名前をお聞きするのを失念しておりました。宜しければ、お教えいただいても?」

「ーーあら。私は訓練場担当受付、ケセラでございます。これからよろしくね!」



 その後、ギルドの外に出る途中、総合受付に寄って、最初に出会った美人お姉さんにも名前を伺った。


「私は総合受付担当、アミハ・サマーズです。応援してます。頑張って下さいね」


 ん?……サマーズ?


 言い知れぬ恐怖を感じる。それは決して触れてはいけない禁断の扉。

 丁寧に別れの挨拶だけをして、私はギルドを後にした。


 名前 : 饕餮 / TOUTETU

 種族 : 鬼人Lv.1

 職業 : メイデンLv.1


ステータス

 ATK(攻撃力):+1

 DEF(防御力):+2

 MBS(魔力増幅):+1

 RES(魔力抵抗) +2


 STR(筋力):6

 VIT(体力):5

 AGI(敏捷):7 → 8

 DEX(器用):7 → 8

 INT(魔力):10

 MND(精神):18


装備アイテム

 ・木のロッド

 ・白の襲

 ・緋袴

 ・異界の道具袋


 習得魔法

 巫術Lv.1


所持スキル

 棒術Lv.1 → 3

 震脚Lv.1 → 3

 舞踊Lv.1 → 2

 細工Lv.1

 鑑定Lv.1


スキルポイント:0 → 5


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