行きはよいよい帰りはこわい
『倫理コード設定』
VR機器に標準装備が義務付けられている、心身に支障をきたす可能性がある五感情報に一定の制限を加える機能。
制限内容は、流血などの過激な表現や性的な感覚情報及び一定強度以上の痛覚など。
スキャンデータ及びVR総合管理サーバーに保存されているアカウント情報により確定、あるいは想定された18歳未満は自動的にロックされる。
なお、性行為及びそれに準ずる行為、又は連想される内容は、現在法的に認められていない。
これらは国内法により定められており、違反した企業・団体は強く罰せられるものとされている。
いやー、あははは。適当に設定してたら、解除されてたよ。倫理コード設定。
「あははは、じゃねぇだろ」
ごめんなさい。
倫理コード設定は、心身の健全さに影響を及ぼすと思われる情報に一定の制限を加える、現在国内で流通している全てのVR機器に搭載されているシステムだ。
私は今年の三月に18歳を迎えている為、倫理コード設定が自動ロックされる事はない。
いや、身体データ的には恐らく、腹が立つ事に、想定18歳未満対象となる筈。なのだが、アカウント取得時から現在までの身体スキャンデータの蓄積がVR総合管理サーバーにある為、間違われなかったようだ。
そして、『FRO』の初期設定時に適当に設定していた為、通常ロックされたままの倫理コード設定を誤って解除してしまったようなのだ。
どうりで、流血描写や痛覚反応がやや過剰な訳である。てへぺろ。
……コホン。とりあえず、システムメニューから倫理コード設定を呼び出し、流血描写など過激な視覚情報はロック。これにより、流血はダメージに応じた色をした光の粒子が零れる表現になる。
痛覚は、余りに鈍すぎると却ってやりづらいので、現在の軽減率30%から65%に操作 (通常ロック設定時は90%で、これは軽い衝撃が来る程度) する。
まあ、正直言って流血表現やら痛みやらは私は平気なのだが、リボるんが五月蝿いので設定しておく。
こんなので実家に連絡されるのも嫌だし。あ、別に家族が嫌いな訳でも嫌われている訳でもないよ。単に家族みんなが私にだだ甘なので、その影響で少し過干渉気味なだけです。
「うわぁ、閉まっちゃってるよ……」
急ぎ足で街の南門まで戻ってきたのだが、既に南門は完全に閉ざされていた。
周囲が暗くなり始めると共に、MOBが一斉にポップし出し、それに巻き込まれたのだ。
厄介な事に、夜間になるとフィールドにいるMOBの性質がガラリと変わる。
南平原においてはノンアクティブの『ホーンラット』や『ウェブクロウラ』は姿を消し、同じノンアクティブだが一匹に攻撃すると周囲の同種が群がってくるというリンク特性を持った、ネズミの『ディグラット』や蟻の『ナイトアーミー』。数こそ少ないが敏捷性と攻撃力が高い放浪型アクティブMOBであるイタチの『シャドウウィーゼル』など、面倒な性質を持つMOBが数多く現れて、難易度が一気に上昇する。
消耗が激しい私たちはノンアクティブのリンクMOBは無視して突っ切り、アクティブは事前に察知して迂回するか速攻で落として、ドロップは放置してまでいそいで戻ってきたのだ。近くにプレイヤーがいた場合、なすり付ける事になりかねないし、街の近くに引っ張る訳にもいかない。運悪く戦闘になったら確実に倒していった。
途中、何かアナウンスは入っていたが、それも今は無視である。
そして出来るだけ急ぎはしたのだが、やはり時間の浪費は如何ともし難く。
閉門に間に合わなかった訳だ。
うー、これは夜営するしかないかー。
「まあ、ここまで来ればアクティブもノンアクも寄ってこないし、一晩位なら大丈夫だろ」
そだねー。はぁ、柔らかいお布団は我慢かー……
「すまんな。時間が来たら日の出まで開門できん規則なんでな」
あ、門番さん。お気になさらず。
「時間に間に合わなかったのは私たちの落ち度ですから」
「ですよ。まあ、俺たちは野宿とかは向こうの世界で馴れてますから」
そうだね。師匠とか、師範とか、凄い合宿好きだったしねー。山とか海とか無人島とか。一週間どころか、一月もザラだったなー。
「うら若い娘をむさ苦しい男衆と一緒に野宿させるとは何事か!」って、先生や姉がよくぶちのめしてたけど。
あ、師匠は道場の先代師範で、先生は師匠の奥さん。師範は師匠と先生の息子さんで、私の姉の旦那さんでもある。師匠と先生は既に故人で、私は最後の直弟子なのだ。
あー、私が流血見ても平気だったり、何でも食べられたりするのも、合宿が原因なんだよね。食料はほぼ全て現地調達で、蛇とか兎とか蛙とか当たり前だったし。ただし、虫だけは断固拒否する。
「お、おい。なんか死んだ魚みたいな目をしてるが大丈夫か?」
「あ、大丈夫大丈夫。多分、当時の事思い出してるだけだから」
「いや、思い出すだけであんな目をするとか、一体どんな合宿だったんだ……?」
「——地獄?」
「…………」
「新人冒険者の癖に東側に行った!?」
「な、無鉄砲すぎるだろ?」
「何考えてるんだ。東側にいる連中はどいつもこいつも攻撃性が強い奴らばかりなんだぞ? いくら異世界人だと言っても無茶で、無謀に過ぎるぞ!」
もうやめて! 私のライフはゼロになりそうよ!
うう、さっきからひたすら私の失敗やら無鉄砲さ(リボるん曰く)を話のネタにされてます。
周りにいる、同じように閉門に間に合わず夜営しているプレイヤーやNPCの方々には笑われてるしー……
いや、私も自分の行動が無茶なのは分かってるんですよ?
でも、どうせゲームするなら自分のやりたいようにやって、楽しみたいじゃないですか。
ダメですかね。そういうのって。
「お嬢は考えなさ過ぎなのが問題なの」
はい。すみません。
「っ!?」
ん? リボるん、どうしたの?
急に立ち上がっt——っ!
気付き、すぐに立ち上がる。
「お、おい。どうした」
地面から、微かに震動が伝わってきている。徐々に大きくなってきてるけど、これは……!?
周りを見回すと、何人かの人たちも異変に気付いたのか立ち上がりだしている。
リボるんが大きく息を吸い込んだ。ヘイト管理系スキルである『挑発』による、大声で周囲に注意を喚起する!
「この場にいる全員、戦闘態勢だ! どっかの馬鹿野郎どもが大群引き連れてこっちに向かってきてやがるぞ!」
うわぁ、まさかのトレインですか!?
名前 : 饕餮 / TOUTETU
種族 : 鬼人Lv.1
職業 : メイデンLv. 3
称号
虎狩り
戦鬼
ステータス
ATK(攻撃力):+3
DEF(防御力):+3
MBS(魔力増幅):+1
RES(魔力抵抗) :+2
STR(筋力):7 → 8
VIT(体力):5 → 6
AGI(敏捷):9
DEX(器用):10
INT(魔力): 12
MND(精神):22
ボーナスポイント:2 → 0
装備アイテム
・木のロッド
・白の襲
・緋袴
・重金の髪留め
・異界の道具袋
イベントアイテム:〈宝冠の欠片〉
習得魔法
巫術Lv. 3
ハラエノミソギLv.1
ナギノミカガミLv.1
ミノカミLv.0
ツクモツキLv.1
コンパクカッセイLv.1
所持スキル
棒術Lv. 7 → 8
震脚Lv. 7
舞踊Lv. 4
細工Lv.1
鑑定Lv.1 → 2
解析Lv. 2
暗器術Lv.1
スキルポイント:11 → 13
(後書き、巫術のレベル記載漏れを修正)




