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王の恐怖

隔日投稿であった為、四月からは奇数日の投稿になります。

 彼は今、恐怖していた。



 遥か遠くまで広がる草原。その中で、王たる自らの率いる群れはまさしく王者であった。


 強靭な肉体と、統率された集団。

 己らの牙は獲物の肉を容易に貫き、身体を徐々に弱らせる毒を送り込む。

 狩りは常に問題なく、脅威となる敵はいない。


 草原の先、ギラギラと輝く光の玉の方にある四角い岩が集まった小山の上には王の群れですら叶わぬ大物こそいるが、この草原の地においては彼の群れはまさしく支配者であった。


 今までは——。



 ふらりと現れた二匹の二本足。……あれは『ヒト』だ。

 片方は雄で、片方は幼い雌。

 『ヒト』は弱いモノも強いモノもいる厄介な獲物だ。歳経た癖に脆弱な個体もいれば、大物すら打ち倒す幼い個体もいる。

 時に狩りが面倒な癖に、肉が少ない。

 だが——美味い。

 大きい雄は食いでがあるし、雌——特に幼い個体は肉が柔らかい。毛が少ないのもたべやすくて良い。

 強いヒトの肉であれば、己らの肉体を強くすらする。

 

 故に襲った。

 

 前足に己らの牙に相当する『ブキ』なる物を持った、強いヒトどもではあった。だが、王たる己が率いる群れならば容易に蹂躙し、その美味であろう肉を味わえる筈だったからだ。



 だが、尖兵として先に向かわせた四匹の部下をあっさり殺したヤツらと相対した瞬間、気付いた。気付いてしまった。

 あの顔は知っている。何よりも誰よりも分かる。


 二匹のヒト、どちらもが浮かべるそれは——狩りの愉悦。獲物を前に舌舐めずり

する時の己のそれと同じ顔。



 王は理解してしまった。


 獲物とは、何よりも己自身と群れそのものであった事に。


 けして出遭ってはいけないモノどもに襲い掛かってしまった、その過ちに。




 暫く歩いていると、不意にリボるんが足を停める。

「どうしたの?」


「【索敵】に反応があった。まだ離れてるが群れが一つ、こっちにまっすぐ向かって来てる。『スポットウルフ』だ」


 お、早速ですか。って、【索敵】?


「軽戦士、アタッカーなのに探知系取ってるの?」

 軽戦士は普通のMMOであれば、物理火力と敏捷性に物を言わせた攻撃特化なアタッカー職の筈だ。

 リボるんは普段、βテストからの人たちとパーティーを組んでいるらしいし、探知系を取る必要はない筈なのだが。

 

「ん? ああ、索敵が一人だけだとそいつにトラブルあった時に困るだろ? 回復もそうだが、パーティー組むなら、サブにもう一人。保険も兼ねて最低二人は必要なんだよ」


 なるほど。その人がリアル事情で抜けたり、死に戻りでもしたら、パーティーが機能不全に陥っちゃうかもしれないしね。


「それより、お嬢。こっちに来てる群れなんだが、かなりデカい。ハードな戦闘を覚悟してくれ。——ちっ、斥候か? 四匹ほど抜けて先行してきやがった」


 ありゃ、それはまた。

「かなり頭のいいリーダーに率いられてるっぽい?」


「おそらくな。——こいつは当たりだな」

 当たり、ね。


 リボるんが左前半身になり、青銅の槍を構えるのに合わせ、私も少し離れてから木のロッドを構える。


 『スポットウルフ』、狼かー。

 ……殺り甲斐あるんだろうなぁ!



「来たぞ。風下、10m」

「了解」

 恐怖はない。むしろ昂ぶる興奮で乱れようとする呼吸を、抑えるように整える。

 ……いつもより簡単だ。これは〈ナギノミカガミ〉の効果が出ているんだろうか?

 まあ、戦闘に問題なさそうだからいっか。

 


「ガァウッ!」


 長く伸びた草の陰から飛び掛かってきたのは、青みがかった灰色に黒や緑の斑模様の毛皮をした狼。『スポットウルフ』だ!


〔スポットウルフ〕Lv.1

 魔物


「フッ!」

 左前半身の構えから一歩踏み込み、迫ってくる狼の額に狙い澄ました直突きを叩き込む。


「ギャウンッ!?」


「グガッ!」


 吹っ飛ぶそいつは放置して、背後から来た別の狼をロッドの逆側で叩き落とす。

 風下から来るのは頭良いね!——狩りの基本だけど。

 でもね、背後襲うなら足下も気を付けよう?

 そっちの方向には太陽があるから、地面に出来た影が伸びてて、奇襲丸わかりなんだよねぇ!

「【震脚】」

 右足を振り上げ、地面に這いつくばった狼を踏み潰す。

 まあ、教訓は活かさせないけど。


 その足を軸にすぐさまターン。

 さっき吹っ飛ばした狼の方向にダッシュする。


 いた。立ってるけど、なんかフラついてる。

 脳震盪? ——チャンス!


 MMOのMOBが脳震盪って言うのもおかしい気がするけど、戦闘の相手が前後不覚の状態であるならば、それは生かさねば。

 ロッドを大上段に振り上げる。


「〈スウィングブロー〉」


 【棒術】アーツの上段振り下ろし。


「ガフんッ」


 脳天にロッドの先端を振り下ろし、地面と強引にキスさせる。

 土のお味は如何?ってありゃ、今ので死んじゃったよ。つまんない。


 手が空いたのでリボるんの方を見ると、もう終わってました。

 一匹の胴体串刺して、更にもう一匹も頭貫通ですか。

「えげつなー」


「お嬢の遣り口も人の事言えな——

 っと、本隊到着か」

 ん? おー、なんかいっぱい来ましたよ?


「お、なんかデカブツが」

 うん。20匹くらいの群れの先頭に頭一つ抜けてデカいのいるねー。なんか鬣まで靡かせてるし。

 群れのリーダーって言うより、ボス?キング?

「あれ、初めて見るわ」

「じゃ、【解析】ぃー」


〔クラウンド・スポットウルフ〕Lv.2

 魔物


crowned?

王冠を戴いた、って意味かな。


「リボるん、あれ王様らしいよ?『クラウンド・スポットウルフ』だって」

 あの鬣が王冠をイメージさせてるのかな?


「マジか。——未発見の大物だ!」

 お、リボるんが完全に殺る気になってる。


 後で教えてもらったのだが、どうやらあの狼の王様は『魔獣の森』の『シルバーアーム』や『マドリースピナー』と同じ、フィールドボス扱いの大物らしい。

 しかもβを通して今まで未発見。

 初心者フィールドに生息しているとはいえ魔物であり、しかもその上位種。更に新発見となれば、その素材は勿論、情報すら価値を生む。

 MMOゲーマーであれば、狙わない筈がない宝の山なのだとか。


 あれ、向こうなんか怯えてる?

 王様含めて、群れ全体が若干引いてるような。まあ、いいや。潰すし。


 よし、狩るぞ。殺るぞ。ぶっ倒すぞ!

 リボるんと二人。狼の群れに襲いかかる。



 そこから先はまさに蹂躙でした。


 私はロッドで叩き潰し、突き込み、張り倒して、踏み潰し。


 リボるんは突き刺し、叩き斬り、殴り倒して、蹴り飛ばす。


 慈悲はなく、容赦もせず。

 群れは王様を除き、10分ほどで殲滅完了。

 流石に無傷とは行かなかったけれど、だいたい軽傷ですんだ。

 毒に関しても、掛けておいた〈ナギノミカガミ〉の力か、リボるんともども罹らなかった。


 さて——。


「殺ろうか、王様」

 リボるんを手で制し、一歩前へ。


 この獲物は譲りませんよ?

現在戦闘継続中の為、表記は持ち越し。

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