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思いがけない再会

今回はちょっと手間取りました。


少し主人公のリアルな話題が出てきます。

「なんじゃこら」


 思わず唖然としてしまった。

 目の前にあるのはルーミスさんから送られたマップデータを元に、着いた先。ルーミスさん達の新しい工房だ。

 見た目は普通の石造りの建物なんだけど……建物は。


 扉に掛けている看板が、ちょっとおかしい。

 鉈を持った笑顔の女の子が描かれている。それはいいんだけど、鉈が赤く濡れていて女の子の目にハイライトがない。これどう見てもヤンデレさんなんですが。

 工房の名前は『紅蓮堂』か。紅蓮の語源と看板を繋げて考えると、すっごい怖いです。


 とりあえず中に入るか。……すっごく回れ右したいけど。

 扉を開け、中に入る。チリンチリン、とドアベルの音が建物に響き渡る。


「はーい、いらっしゃい 」

 現れたのはダークエルフの、なかなかイケメンさんの男性。

 見た目は中性的で、顔だけ見ると女性にも見える。が、こちらに歩いてきた時の動きをよく見ると男性の歩き方をしていたから、間違いなく男性だろう。歩く時、男性は上体が揺れやすく、女性は腰が揺れやすい。これは骨盤などの身体的な構造から由来するもので、武道や演劇などで特殊な訓練を受けていない限り変化する事はない。また完全に変える事も難しい。歩き方を見ればどんな見た目でも性別は分かるのだ。


 それはさておき、ここはマルキューさんとルーミスさんとあともう一人の、三人で経営する工房だった筈。

 なら、この人が三人目か。よく見ると、何処と無くマルキューさんに似てる気がするような。現実の兄弟、お兄さんとかかな?


「はじめまして。饕餮(トウテツ)と申します。ルーミスさんに呼ばれたのですが、ルーミスさんとマルキューさんはおられますか?」

 お辞儀をして顔を上げると、お兄さん?は優しそうな笑顔を浮かべてみせた。


「ああ、君がトウテツちゃんか。マルキューたちから話は聞いてるよ。ーー僕の名前は『フルフル』だよ、よろしくね」

 はぁ……ふ、フルフル?


 ふとあのゴム質肌の白い飛竜が思い浮かんだが、多分違うだろう。こんなイケメンが、あんな見た目のヤツの名前を使う筈がない。多分、リアルの神話からだろう。どんなのか知らないけど。……知りませんよ?


「だぁから、無理だって言ってるだろ!」

「えー、リボっちならイケるってー」

「でも、素材が無ければ何も作れないのよね」


 マルキューさんとルーミスさんの二人がなんか揉めた様子で二階から降りてきた。一人多いけど、あれは誰だろ。四人目か、お客さんかな?


 その男性と目があった瞬間、踵を返す。

 【震脚】を踏み、ダッシュで工房の外へーー


「ーーお嬢!? フル! その子逃がすな!」


 うえぇっ!? 開いてた扉が閉まっーーーむぎゃっ!



 鼻が、痛いとです。

 お兄さんがメニュー画面への高速タップで閉めた扉に顔面から強打しました。

 

 なお、私は今、正座中です。

「さーて、お嬢。なんで逃げた?」

 黙秘権を行使します。ぷいっ。

「ほほー、そんな態度取るか。……なら、お嬢の実家に連ら」


「申し訳ありません」

 全力で土下座です。

「陥落はやっ!?」


 なんとでも言ってください。実家への連絡を防げるならだいたいの事はしますよ?

 なんでも、はしませんが。


「で、確かお嬢は進学で実家から離れてたよな?」

 目の前に立っている人間の男性は、『リボルゲイン』。どこぞの王の石で進化した超ライダーの最強武器みたいな名前だが、実は私のリアル知り合いである。

「えぇ。今は一人暮らしです」

 私の6つ年上の兄の同級生であり、私が通っている棒術・杖術の道場の門下生でもある。私はその幼げな容貌から道場のマスコット的扱いであると同時に、他の追随を許さぬ強さを備えた師範代の一人なので、門下生の人達からは『お嬢』と呼ばれていた。今もそう呼ばれるのは、とてもこそばゆいんですが。

「このゲームのハード、結構な値段だよな?」

 周辺機器揃えて5万はしましたよね。

「確かお嬢ん所の小母さん、金銭の扱いはかなり厳しい人だったよなぁ」

 ただケチなだけですよ? あの人は。

「購入資金どうしたんだ?」

 ん?とか笑顔で凄まないで下さい。こわいです。


 これだからこの人には会いたくなかったんだ。

 今は警官をしている筈のこの人は、兄の友人であると同時に、道場で一緒だったせいか。家ぐるみの、家族同然の付き合いをしているのだが、かなりの世話焼きなのだ。

 この人は私と同じゲーマー(ただし重度)だから、手を出してる可能性が高かったのだが……


 せめて、自分の容姿をもう少し知り合いでも分からないよう弄っておくべきだった。後の祭りだが。


「兄に買ってもらいました。誕生日プレゼントに」

 兄は私にダダ甘である。4歳上の姉も、2歳下の妹もだが。基本的に私の家族は私に甘い。

 無論、流石に5万は誕生日プレゼントとしては破格すぎるので、2万は自分で払った。半年間、お昼は粗食になりました。

 その事も合わせて、説明したらようやく納得してくれた。……めんどくせぇ。


「つか、受験勉強は?」


「推薦貰ってますが何か?」

 これでも中学高校と学年10位以内をキープしてきた実績ありますので御心配なく。



「結局……どういう状況かしら?」


「この二人、僕たちみたいにリアル知り合いだったみたいだね」


「んー……? リボっちがトウテツちゃんに犯罪? 通報? 逮捕?」


 マルキューさん。私はこれでも(見た目は13歳でも)18歳の女子高生です。

 あ、リボルゲインはいま24歳だから、……

いや、そもそもこの人と付き合うとかありえませんから。



 だいたい、なんでこの人がいるんです?

ステータスに変化がないので、表記無し。

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