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納得いかない初日終了

ユニークユーザーが1000人突破しましたよ、やっほぉい!

こんな拙作を読んで下さってる皆様、本当にありがとうございます!

「ん? 随分早いお帰りだな」


 まあ、行ってから五分くらいしか経ってないしねー。


「ヤバげな気配感じたんで引き返してきました」


「……なんだそりゃ」

 あれ、なんか怪訝な表情。

「いや、森の手前まで近付いてみたら、背筋がゾクゾクするような威圧感を感じたんですが」

 あれが『魔獣の森』のデフォじゃないの?


「あそこには近付くだけで威圧するような強烈な気配を放つヤツなんぞ、深部の『シルバーアーム』か『マドリースピナー』しかおらんぞ。それが森の手前で感じただと?」


 へ? いや、でも……

「……本当に感じたんだな!?」


 コクン、と頷く。それだけは間違えない。


 ——あの時、私の中の ” アレ ” が僅かに揺さぶられていたのだから。


「くそ!どっちかわからんが森の表層部まで繰り出してきやがったのか!」

 どうやら緊急事態のようだ。

 まあ、森の深部にいるはずのボスクラスが街に近い場所まで出てくれば、そりゃヤバいか。


 門番さんは首に提げていた小さな金属片を咥えると一気に噛み折った。

 後で聞いてみたら、街の各門と主要施設に緊急事態発生を一斉伝達する専用の使い捨て魔導具なんだそうだ。防犯ベルというか、非常ベル?


「悪いが嬢ちゃんは暫くここにいてくれ」

「事情説明ですね。わかります」

 気配を感じたのも、報告したのも私だ。当然と言えば当然。

 さて、どうなる事やら。




 ヤバいです。ええ、ヤバいです。


 なんであの方が来てらっしゃるんでしょうかねぇ……?


「なんだい。報告にあった新人ってのはあんたかい!」


 ちょ、ま、ハート様!……背中痛いからバシバシ叩かないで!?

「はい、……で、すっ」

 げほっ、咽せた。


 『魔獣の森』に異変——深部にいるはずのボスクラスが表層部に移動?——という事で、自衛騎士団と冒険者ギルドからの緊急依頼が出た、らしい。

 受注可能ランクはC+ランク以上。ちなみに新人一日目の私はEランクだ。

 ハート様はたまたま冒険者ギルドにいた高ランク冒険者として依頼を受け、他の高ランク冒険者や騎士達と共に駆け付けたのだそうだ。


「それで、『魔獣の森』の手前で強い威圧を感じたんだって?」

 普段の飄々とした雰囲気とは異なり、その表情は険しい。どうやら、あまり看過できる事態ではないようだ。

「……はい。冷や汗が止まらなくなる位の強烈な気配を感じました」


 私の中の病気が呼び起こされそうになるほどに。


 ちょっと厨2チックに言ってみたが、要はアレだ。

 オラわくわくしてきたぞ!とか、強いヤツに会いに行く、とかのアレ。いわゆるバトルジャンキーの気があるのだ、私は。

 いやぁ、ヤバかった。

 あの場でもし、もう少し残ってたり、気配の主に出遭っていたら、間違いなく私は戦いを挑んでただろう。で、多分笑いながら死に戻りしてたに違いない。

 流石に始めたばかりでそれなりの強さであろうボスクラスに勝てるとは思えません。善戦位はしたかもしれないけど。


 そしてその分、門番さんへの報告と、街の対策は遅れていただろう。もしかしたら、その間に犠牲者は出ていたかもしれないのだ。


 なかったかもしれない可能性と、ありえたかもしれない可能性。それは秤に掛けられない ” もしも ”の未来だ。

 ——とりあえず、私は最善と思える行動をしていればよい、と結論付ける。

 だって、かんがえるのめんどくさいし。


 それはさておき、ハート様はその言葉を聞くと、不意に妙なことを訊いてきた。


「トウテツ。あんた、その気配の主に『怖い』と感じたかい。それとも、『ヤバい』と感じたかい?」


 はて、……『怖い』と『ヤバい』?


 ふむ。『怖い』とは思わなかったな。というか、私は現実でさえ猛獣をガチで殺——り合える類いの人間である。怖いと感じるのは、黒光りするGのクソ野郎だけだ!……失礼、取り乱しました。

 とにかく、『恐怖』も『畏怖』も感じなかったな。あれは——


「『ヤバい』ですね。出遭ってたら危なかったと思います」

 いろんな意味で。


「ふん。——なら、まだ安心かねぇ」


「おい、ハートの姐御。新人に変な事訊いて何言ってんだ?」

 後ろのドワーフの青年? 髭もじゃで年齢がよく分からないや——がハート様に怪訝な表情で問いかけた。周りにいる冒険者や騎士も同じ様子だ。

 確かに新人に訊いて、判断する内容じゃないよね。


「ああ、この娘は私が訓練した新人なんだがね。中々優秀でさ。


 何より ” 生粋の『鬼人』 ” みたいなんだよコイツ。こう見えて」


 こう見えて、ってなんすか。こう見えてって。

 そりゃ、年齢の割に発育は悪いし、今の見た目は身体弱そうな青白お肌ですけども!

 というか、『生粋の鬼人』? え、確かに設定上は純血の『鬼人』ですけど。


「おい。……そいつぁ、」

「だから、コイツの勘は当てにできるよ。私が保証する」


 その言葉に他の冒険者や騎士達も黙り込む。

 この様子、私なんか変な事しました?


「あんたが気にする事じゃないよ。単に珍しいだけだからね」

 ふーん?何言ってるか、ちょっとよく分かりませんが。

 「気にしても仕方ないなら、気にしない事にします」


 そこ、なんで物凄い物を見たような顔をしてるんですか。



「とりあえず、三班に分かれて『魔獣の森』を探索しよう」

「森は主だけじゃない。厄介なヤツらも多いから警戒は怠るなよ」

「解毒剤は、ポーションは足りてるか」

「よし、行くぞ!」

 皆さん、森へ出陣です。

 ……しかし、こういうのって普通、プレイヤー主体のイベントじゃないのかな。全員NPCって、このゲームは何を目指してるんだか……


「嬢ちゃんは街の中に戻りな」

 え?

 いや、

「あの、今から兎狩りに——」

「森がヤバいから今はもう警戒令が出てるから駄目だな。それに、何よりもうすぐ日没だぜ?」

 西の空は——赤い。


 あ。

「流石に今の状況で門前で野営とかさせられんしなぁ」

 あ、あ、あああぁぁぁぁ……



 こうして、私のプレイ初日は中途半端に終了した。



「この、消化不良はどうしたら……!?」

「……諦めな」

 ええい、肩ポンしないで下さい!(涙目)

ステータスに変化が無い為、表記無し。

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