魔術師シャリス
よければ見てってね
この世界には、魔術師とゆう職業が存在する。
ある所に、ハーバール王国とゆう国があった。
その国には軽く薄い服装で歩く人々が、町道でにぎわっている。
城は、そんな城下町を見下ろすように地形に合わせた高い山の上に建っている。
その城の中枢部に存在する場所には、とあるギルドが存在した。
その名も「ギルド魔術団」。
そのギルドには、魔術師しか入団を許されず
170以上もの、多種多様な掟により縛られている。
まぁそんな堅苦しい話は、後の話に置いておくとして。
今ギルドでは、一人のS級の魔術師が、酒を飲んで暴れている大男にからまれていた。
「あのぉ、一応勉強してるのですがね……」
「うるせぇなぁ!俺は今幸せの絶頂うぅなんだよぉ!ちぃとは付き合えぇ!」
大男は背中から皺くちゃになった赤いマントをべらべらと揺らしながら思うままに
叫びまくっている。
対してその少年の魔術師は背中から紫色のマントを羽織っており
それを軽くゆらしながら大男を制止している。
見た所、現在この少年は次の期末試験のための勉強中のようだ。
「貴方も仕事があるんですから、飲み過ぎちゃまずいんじゃない?」
少年はそれでもからんでくる男に注意を促す。
しかし大男は話に聞く耳を持たず、からむのを続けてくる。
周りの人達も、その状況と事情に気がつきだして、周りの魔術師らしき人達は
その大男を何度も少年から引き離そうとした。
しかし、力の差で引き剥がすことが出来ない。
「何すんだてめぇらぁ!!」
大男は怒り、大きな怒声を上げる。
その声の迫力で周りは少したじろいだ。
「あの、コロウドさん……そろそろ離れた方が……」
引き離そうとしている魔術師の一人が、それでも恐る恐る喋るような声で大男に
注意を促した。
「うるせぇ、俺は俺の良いように生きてんだ、これからもそれは続くのサァ!」
少年はしかたなく嫌そうな顔をしながら、黙って勉強を続けている。
一体どんな良い事があったのか知らないが、その大男は分けのわからない事を言いながら
再び酒を飲んでそれを勢いよく机の上に押し付けた。
ベシャ。
変な音がする、大男はそれに気がつき音のした方を向いた。
そこには、酒を飲んでしぼんだ目蓋を通しても分かる。
先ほどとは違う異様な紫色のオーラとも邪気ともいえるものが
その少年の体から溢れていた。
「え……ひ、ひぃ!」
しぼんでいた目蓋を見開いた大男は慌てて後ろに下がったが。
「酒を……ノートの上にこぼしたね?」
少年は立ち上がり、押し殺しながらも冷静な口調で、質問するように喋る。
だんだんとマントが、今度は動かしてもいないのにゆらゆらと揺れだしたと思うと
瞬間、紫色のオーラは勢いよく大爆発を起こした。
それら全てはその目に色濃く見えるほどに。
周りの魔術師達は慌てながらも詠唱を行い、全員がバリアを展開した。
「え……ちょ!何でお前らバリアを!俺それ使えないんだぞっ!!何がおこっ……」
この大男を除いては、そして大男が全ての言葉を言いきる直前にそれは起こった。
全身から紫色の爆炎オーラを放つ少年は、長くカールした髪の中から先ほどの呆れ顔とは
違う恐ろしいほどに瞳孔の広がった瞳を大男に向けた。
そして。
「酒はぁ……!!」
大男の怒鳴り声よりも強く、威圧をぶつけるような声で叫ぶ。
「飲んでも飲まれないで下さいねぇっ!!」
そう叫ぶと同時に紫色のオーラに包まれた腕で男の裾を掴んで
その腕を勢いよく振り上げる、なんと80kg以上はあるだろう巨体を軽々と
中に浮かせてしまい。
大男はそのまま8m以上ある天井の上に大きな唸りを上げて突っ込んだ。
大男の突っ込んだ天井の一部にひびが入り、大きな穴が開いた。
その後、天井は軽い瓦礫を落とした程度で、直ぐに終わった。
少年は天井に上半身が刺さった上体の大男を無視して、手をはたいている。
その少年が体にまとっていた紫色のオーラは少しずつ消えていった。
それを魔術師達は見とどけると、少年の様子を見ながらバリアを解いていく。
「まったく困ったものですねぇ、絡むどころか酒をノートにこぼすなんて……
これはさすがに切れますねぇ」
少年は文句を言うと、丁度一番近くにいた魔術師に声をかけた。
「あの人、確かコロウドさんって言うんだよね?助けてあげてくれる?」
そう言って天井に刺さったままの大男を指差す。
まぁこれくらいならこの場にいる全員が手伝えば、大男を浮遊魔術で抜くことくらいなら
できるだろう。
しかしそれを少年は、この一人の魔術師に頼んだ。
「え……私一人でですか?そんなの……」
「出来ないなら無理はしなくて良い、でもそうなるとコロウドを助けるのに
2時間はかかりそうだね」
少年は上を見あげて魔術師に言った。
それを聞いた魔術師は少し沈んだ表情をして、しかたなく天井につまった大男を
助ける事にしたのだった。
周りの魔術師は心配そうに見ている。
それをまかされた魔術師は、ゆっくりと浮遊魔法で男を引き抜いていく。
魔術師の顔に汗が浮かび、目つきが細くなる。
ゆっくりながらも天井から男を引き抜くと、今度はさらにゆっくりと大男を8m先の
地面へと下ろしていった。
そしてかれこれ10分後、魔術師は完全に集中していた。
全神経を手に集中させ、最初の時とは明らかに目つきが変わっている。
それから、机の上に大男をゆっくりと乗せた。
運良く間違って落としたりせずに今回は地面に下ろすことができたのだった。
周りがおぉ、と軽く感心したような声を上げる。
「うそ……初めて出来た……」
感心する魔術師の中で、一番感動しているのだろうこの魔術師はいきをきらせ
嬉しそうなしかし驚いた表情で、汗だらけの自分の手を見つめている。
「初の浮遊魔術成功おめでとう、そしてありがとうねレオスさん」
そう言って、少年は魔術師の前に出て笑顔を向ける。
「え……いえ名前を知ってたのですか……?でも何故お礼を……?」
少年に突っかかってきたコロウドを助けただけなのに、と続けようとしたのだろうが
それを少年は魔術師の口に手をあてて静止した。
「貴方の行為は、とても人助けの規則に貢献する行いです、よって
S級魔術師シャリス・モルノリアから努力賞として、100点を授与します」
その言葉を聞いた魔術師全体が驚きの声を上げる、一番驚いているのは
当然言われた魔術師だった。
「僕が……E級魔術師に……」
驚きすぎているために、少し焦った表情もしているのだった。
しかし、そんな事など気にも留めないように少年シャリスは立ち去ろうとした。
それを静止したのは、先ほどE級魔術師に昇格した魔術師だった。
「何?今からノートをとってこようと思ってるんだけどね」
シャリスは振り向きざまに言う。
「ごめんなさい、でもどうして……」
自分にこんなによくしてくれるのか、と聞こうとしたのだろう。
しかしまたその言葉はシャリスによってふさがれた。
「人を守ろうとしてくれたからね、それだけだよ。
良い?からむような奴を助けたくらいで、点数なんて普通は手に入らないからね」
そう言って笑顔で笑い、再び外に向かって歩きだしたのだった。
魔術師は、最初にシャリスからコロウドを助けようとして声をかけたあの魔術師だった。
「もしかして……周りが不満に思わないように……」
何故自分にあんな事をさせたのか理解した魔術師は言うが、その言葉を聞かずに
シャリスはノートをとりに、学院宮に向かって歩いていった。
残された魔術師は、少し嬉しそうな表情で背中の赤色のマントをとった。
それを自分の両手に乗せて見つめる。
「今日でこのマントともお別れか、何だか名残惜しいな……」
そう言ってマントを握り締めると、前を向いた。
とても良い笑顔で。
「もう諦めてたつもりだったけど……私もS級魔術師になれるようにがんばろう!」
新たな希望を胸に、その魔術師は赤いマントを持ち
変更所に向かって走っていった。
S級魔術師、シャリス・モルノリア 27歳
この日から1年後、彼は命を落とすことになる。
今は、その経緯を知るものは誰もいない。
彼が伝説に名を刻んだ、あの日まで。
「ノートくださいね」
学院宮にて、シャリスは本を受け取るためにチケットを渡す。
「あのぉ、シャリス様……」
「何でしょう?」
「これ……酒のチケットです」
「あ……」
その1時間後、大男がまた天井に穴を開けたという。
見てくださりどうもありがとうございました。
続きがありそうな話を書いていますが
長編小説にするかは話しあって決めます。