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息を吸う

 私は溺れていた。

 悪魔の魅せる夢というものがあるのなら、それはきっと幸せに満ち溢れたものなのだろう。

 だから私は、あの男との時間を退廃とともに過ごしたのだ。

 そして退廃の末路に私と彼は一緒に眠り、私だけが目を覚ました。

 乱れたベッドに薬の空き瓶が転がっている。

 隣に眠る彼の寝息は聴こえない。

 カーテンの隙間から差す明かりをぼんやりと見ながら、私は思い出したかのように呼吸をした。

 息を吸う。

 酸素が私の肺を満たす。

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