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火の華
ガイドと旅人シリーズ第十一弾
土地のガイドの話だと、この季節には火の華が咲くという。
「高く上がるな」
ひゅるると上がった火の玉が、夜空に光と音の華を咲かす。
「夏の風物詩です」
ガイドが言う。燃え散る種が火雨となって辺りの草原を焼き、周囲の火の華の蕾に次々と引火する。
「これは見事」
華と華の連鎖。
うち上がる火の華が夜空を色鮮やかに埋めていく。
「この種が来年の華となるのです」
火の中に生まれ、火の中に散る。
そんな一生も風情かと私は思った。