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水面の顔
帰ってきてみた二百文字ホラー第十三弾
その池で私は水面に浮かぶ顔を見た。
女の顔だ。夜月よりも白く淡い肌をした女の顔。彼女は私を誘うように薄く微笑んでいる。
私はその顔に触れようと、水面へと手を伸ばす。
「ああ、やっとすくわれる」
その声を聞いた次の瞬間、私は揺れる視界に自分を覗く顔を見た。
夜月よりも白く淡い肌をした女の顔。
「では、ごきげんよう」
女が去る。私は水の中に取り残される。
こうして池に囚われた私は、自分をすくってくれる人を待っている。