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花火

 線香花火の火が墜ちる。

 妻が花火をしようと誘ったのは、病院からの帰り道でのことだった。

「あと一本」

 大きい花火はもうなくなり、後は線香花火だけだった。

 妻が下げた線香花火は赤い火花をぱちぱちと、小さいながらも元気に跳ねて、夜に明々と輝いている。

「綺麗だね」

 けれど火花はやがて弱く、花火は丸く膨らんで、ゆっくりと垂れていった。

 一瞬の光。

 線香花火の火が墜ちる。

 妻が私の目を見て言う。

「また来年」

 私はうなずいた。


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