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夢の合間に見る現(うつつ)
夢の合間に見る現。
私の横に行きずりの男。
名も知らぬ男の肩に、頭をもたれて寝る私。
揺れる電車の行き先は知らない。
夜雨に車窓は冷たく濡れて、街の灯りは夢見のようにぼやけている。
明るい色彩の夢を見た。
いつか見た海につながる夏空の青。
駆ける自転車。
海風の匂い。
それは高校生の私。
――どこへ走る?
その問いは夢中に溶けた。
答えが欲しくて目を閉じた時、男が私の髪を撫でた。
私の横には行きずりの男。
夢の合間に見た現。