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龍を待つ

 龍を待つ男がいた。

 波打つ岩の上で瞑目する男の髪が強い風に乱れている。

 やがて咆哮が届いた。遠海からこちらへと走る影。

 龍だ。

 半目を開いた男が側置いた刀を掴む。

 巨木の如き胴の龍が碧緑の鱗を散らして顎を開き男に迫る。男は刀を腰構えこれを迎えた。

 龍の眼。男の眼。

 錯綜する。

 抜刀。

 飛び散る鱗の中に白刃の欠片が見えた。

 半ば折れた刀を持つ男に向かい龍が笑う。

「また逢おう」

 男は刀を海に捨て、雲海へと去る龍を見送った。

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